一人の生き物として
―――夕方
「…え?神聖王国領で巨大な火柱?珍しい事もあるもんだな」
「どうやら魔族殲滅を目的とした多くの兵が居た様なのですがそれらも全て町諸共消し飛んだ模様です」
「何?魔族殲滅?…具体的にはどの場所だ」
ヴェルロイド王国領に最も近い街だったようですが…」
「……そうか。フッ…良い酒を瓶で持ってこい」
「え?」
「ほら早く。あぁ忙しいなら他の者に頼んでも良い。取り敢えず報告御苦労だった」
「は、ハッ!」
報告をしてくれたのはハーピー族の子。物凄く俺をビビっていたので若干ショックである。
「…なぁワールス、俺って顔怖い?」
「え?可愛い」
「…そ、そうか」
それはそれでなんか違う。可愛い王って…う~ん、何かが違うんだよなぁ。とか思ってるとちゃんと高級な酒瓶を以ってあの子が戻ってきてくれた。
「こ、こちらになります!」
「おう。…なぁ、俺そんなに怖い?」
「へ!?め、滅相もありません!」
「だってめっちゃビビってるじゃん…」
「そ、それはその…力で圧政と噂を…」
「あぁそう言う事か。ふむ、お前は騎士にどのような理想を抱く?」
「きょ、矜持と武力と知力を兼ね備えた精鋭…でしょうか」
「うむ、その通りだ。そのような輩は配下を粗末に扱うか?」
「決してそのような事は……あっ!」
「そう言う事だ。俺が目指すのは武力、知力を兼ね備えた上で矜持を持つそんな存在だ」
「さ、流石はシード様です!…宜しければ今のお話、周りの同僚にお伝えしてもよろしいでしょうか」
「好きにするが良い」
「あ、ありがとうございます!」
うむ、恐れと言うよりは…うん、今は畏れというべきだろうな。こう言うのはなんか嬉しい。
「…ワールス、剣の修行を……ん?」
「むぅ…」
「何だよ…。そんなに仕事を見るのが嫌だったのか?でもお前が態々今日は言ったんだよな…?」
「そこじゃない!あの女の子見てニマニマしてたでしょ!」
「そ、そこ?だって畏れられてるんだぜ?それってなんか嬉しい事じゃん」
「じゃあ僕も畏れる!」
「お前は仲間だろうが。畏れるより頼れ」
「でもそれじゃシー君は私にさっきの表情を向けないもん…」
「嫉妬か」
「そうだよ!私だって…女の子だもん!」
「その理屈は分からんが、うぅむ…一つ言っておこう」
「何さ…」
「…俺は多くの配下を持ったが、親衛隊は未だお前等二人から増やす気は無いぞ。…親衛隊は……お気に入りの兵を置くのにちょうどいい」
「それって…!やっぱ私はシードのお気に入りなんだね!」
…鈍感娘ってあだ名をつけたい。えっ、好意を抱いてるって分かってくれると思ったんだけど?いや、俺がおかしいんだな。
そもそも今の言葉でワールスが分かる訳無い。エトワールなら分かってくれるだろうけどさぁ。
え?じゃあエトワールには抱いてるのかって?そりゃ勿論。…二人とはほぼ一緒に生活してるからこそ、好意が湧いてくる。
大事にしてくれるから。気兼ねなく話せるから。理由は沢山あるけどね。
でも一番は…今日の会議の後の三人での会話が決め手だった。俺の善悪に対する価値観、そして俺の道は正義であって悪であるという話をした時の二人の反応が。
『どんな道であっても私は付いて行く!悪だろうと正義だろうと関係ないよ!シー君の道が私達の歩く道!茨の道だったらシー君がなるべく傷付かない様に私とエトワールが後ろじゃなくて並んで歩く!そうすれば側面は多少マシでしょ!』
『シードを守り、支えるのが私の役目。正義や悪はどうでも良い。人によってその価値観は異なりますから。大事なのはシードの進む道が盤石であるかどうか。悪人の道だろうと、善人の道だろう、それは関係ないです』
2人はそう言った。言葉からしてエトワールは善悪を理解し、ワールスは理解は出来ないけど、とにかく俺の為に頑張ろうとしてくれた。
人から向けられる事になるであろうゴミを見るような目線、畏れでは無く恐れに視線を向けられる事になる、そう分かっていて…二人は付いて来てくれてるのだ。
「…ワールス」
「な~に?」
「アホなお前はちゃんと言わないと分からないらしいから特別に言ってやる」
「アホとは失礼な!」
「好きだぞ」
「?????」
「―――シード、それは私に言うべき言葉」
「エトワール…居るなら最初から言えよ」
突然俺の机の前に現れ、グイっと顔を寄せてくる。彼女の匂いが鼻をくすぐり、驚きながらも椅子事ゆっくりと体を後ろにずらした。
「勿論お前の事も好きさ。…今日の一件で本当に好意が湧いた」
「「……そんなに?」」
「あぁ。…こんなに俺の事を考えてくれる奴が居るんだ、って驚いたよ。それはもう配下や仲間の領域に居ちゃだめだ。…というか好きになる。お前等と居れば楽しいし、嬉しい事も多いからな」
「「フフッ…!好き!」」
「あぁ、俺もだ!」
と言う事で抱き合った後、二人には先に屋敷に戻ってもらい、持ってきてもらった酒瓶を持って俺は山頂へ。
「あれが彼奴の建てた城だよな?…うん、でっけぇ城だ…。まっ、俺等を助けた祝いにこれを上げるとしよう」
酒瓶に複数の結界を張った後、魔力で瓶の強度を一応上げた。そして…思いっきり城の方へと投げ飛ばす!
―――同刻、パルパータ城の玉座の間にて
「……あの、失礼ながら何時まで此処で待つのでしょうか…」
「一年かなぁ。やっぱ不安?まぁそうだよね、玉座の間の外はやべぇ化け物しか居ないもんね。でも大丈夫、彼等は欲望の結晶体だけど君を襲えない」
「そ、そうなんですか?」
「理由は簡単。君の半径一メートル以内に近付けば爆発するように設定したから!私の大事な親衛隊隊長のラオ君に何かあっては困るからね!さっ、今日から早速剣の指導を―――あっぶな!」
天井を破壊し、私の足の真横に刺さった酒瓶。それに込められている魔力は何とびっくりシードの。
「…御礼って事かな?ふぅん、意外と気が利くんだね。今日の練習は後、もう夕飯にしようか!」
「りょ、料理とかってどうするんですか?」
「私が作るよ!化け物をあんまり見たくないから厨房はそこの扉から行けるようにしててね~。序でに厨房に行ける扉はそれだけ」
「ワオ」
「この城はダンジョンだからね!城を作ったのは魔法だけど、内部を作り替ええるのはダンジョンマスターの権限!」
「す、すごい…」
「序でにそっちの扉は寝室。面倒だから私と同じベッドね!」
「分かりました!…それでその…机とかは如何するんでしょうか」
「そんなものは…うん、これで良し!」
ソファーと机を生み出し、食器が入った食器棚も次々と生成。
「…ラオ、敬語は辞めてほしいかな~」
「え?…わ、分かった」
「フフッ…じゃ、一緒に料理を作ろう!」
「うん!」
「それで食べ終わったら稽古。場所はそうだね、あっちに適当に作ろうかな」
「?」
「ダンジョン入った事あるでしょ?第二階層に入ったら突然森林地帯!とか無かった?」
「あった!」
「それと同じことが出来るのだ!あの扉を潜れば訓練場に移動できる!勿論行き方はあの扉を通るか、転移を使わないと無理!」
「お~!」
「温泉も作っておこう!」
「素晴らしい!」
「でしょ~!」
「それじゃ料理料理♪」




