悪魔王vs悪魔帝
――――深夜
「いやぁ、温泉でお湯の掛け合いをし過ぎたね!迂闊な事に恋バナも盛り上がってしまった」
「まさかシードさんの事をそんなに好いてるとは思わなかった!」
「好いてる、と言うより彼しか私には居ないだけなんだよ。…でも私が彼に向けるのは好意じゃない。勝っても負けてもそこは永遠に変わらない」
「何を向けるの…?」
「殺意!とは言え常時向ける事はないけどね!戦う時に向け、それ以外は普通に過ごす。今ラオと過ごしてる感じでね!」
「お~!…勝ちましょう!」
「フフッ、そうだね!さて…寝ようか!」
「うん!」
と言う事で寝室に移動し、彼女が寝るのを待ち、寝息が聞こえてきたらこっそりと城の外へと移動。
そして軽く移動をし、彼が王国軍の残党を討伐したとされる丘に降り立った。
「何の用かなサタン君」
「先に言っておくがシードに言われたわけでも何でもない。これはあくまでも私個人の要件だ」
「ふぅん?内容は?悪魔王たる君が頼むんだからそれはもう素晴らしい事なんだろうね!」
「あぁそうだ。死んでくれ」
「フフッ、断る!」
「なら…殺すまでだ」
彼はそう言って踏み込み、私の虚像を殴ってからこちらに向かって光線を放ってくる。それを軽く払って寝間着から装束に魔法で着替え、欠伸をした。
「悪魔の王如きが私に勝てると思った?」
「………何だと?」
「悪魔の帝王、デーモンロードたる私に勝てるとでも思いましたか?って聞いてるの」
「何時の間に…」
「アハハッ…!絶望かな?君はきっと私に対して有効と思わしき何かを持ってきたか何かしたんだろうね、でも残念、君如きじゃ何をしても私には敵わない!」
「黙れ!」
飛んでくる無数の魔弾。それを回避しながら翼を広げて羽搏かせ、それだけで魔弾を弾き飛ばした。
「悪魔には合わない翼とよく言われたけど、私は龍っぽくても良いと思うの。まぁ…君には理解できないだろうけど」
目の前まで迫っていた彼の剣先。それを体をずらして回避し、腕を掴んで軽く一回転して投げ飛ばす!
そして魔力で剣を無数に生み出して一気に放ち、どうせ死なないと思ったからこそ魔弾も複数同時に放った。
着弾と同時に激しい揺れが起こり、彼の魔力が解き放たれて土埃が霧散!
「おぉ怖い怖い。でも君、もう左腕が無いよ?」
「だから何だ?」
刹那、彼は私の目の前に現れ、そして思いっきり私の顔を殴り飛ばしてから馬鹿みたいに巨大な魔力光線を放ってくる!
「なっ…!」
左腕で何とか受け止めたものの、今ので完全に焼け焦げて左手首より先が灰になって消滅。
「一気に片を付ける!」
「…その力、時間が来れば君は動けなくなる。死ぬわけじゃないにせよかなりの間は子供よりも弱い。…それを分かった上で―――ッ…!」
覚悟を決めた人ってのは結構厄介。何を言おうともそれを聞かず、ただひたむきに進み続けるから。
麻痺、毒、そんな感じの状態異常に陥ろうと、その体を無理やりにでも動かして進み続けるのだ。
腕が取れても、足を失っても、例えその後に体が動かせなくなると分かっていても、それでも…動き続ける。
「貴様の救済など…ただの殺人に過ぎぬのだ!!!」
咄嗟に後退して彼の斬撃を回避するも、その剣から斬撃が飛ばされて私の左腕が宙を舞った。
驚きながらもすぐさま再生させ、黒い大太刀を取り出してから右手で握って思いっきり踏み込む。
…私は今まで一度も彼に負けたことは無かった。剣の勝負も、魔法の勝負も、格闘術での勝負も、全てにおいて勝利を収めてきた。
覚悟の面でも、負けたことは無いと思い続けてきた。だけど今、彼は…彼の覚悟は私に並ぶ。そして彼が払った代価により、今の剣技、魔法、と言うか全てにおいて…私を超えるかもしれない。
「燃え尽きろ!」
左手で獄炎球を放つも、彼の放った水魔法の激流は光線の如く進んでそれを破壊し、こっちに迫って来た。
なので大太刀で軽く裂くも、裂けた激流の先に居たのは剣に魔力を目一杯込めてこちらを睨むサタン。
「終いだ!」
「舐めないで」
素早く振るって突きを受け流し、離れた場所に剣や槍を生み出してから思いっきり放った。
彼は大半のを防ぎ、躱したが…数本は彼の体に深く突き刺さり、口から血反吐を吐いて片膝を地面に。
「……まだ動くの?もう辞めときなよ」
「黙れ」
完全に魔力を解放したのだろう。こちらに吹き付ける風に籠った彼の魔力が凄く痛い。
頭上を見れば雲は渦巻き、雷が発生している。そして彼自身が限界なのか、彼の肉体に眩い線が。
「…そんなに私が憎い?」
「憎い。同族を殺し尽くし、無関係な人や魔族をも消し飛ばしたお前を憎まないわけない。…悪魔の名を穢したようなものだ」
「君もそう言うんだね。…でも良いよ、私は所詮悪だから。恨まれようと、憎まれようと構わない」
「何故他の道を探さない!もっとやり方が―――」
「…この道が、私の定めた道だから。例えどんなに苦しかろうと私は進む。だから止めないで」
「残念だ」
刹那、彼は一気にこちらに走り始めた。覚悟を決めた最後の一撃のつもりなのだろう。走ってくるだけなのに、私は冷や汗をかいて後退しているのだから。
「………日食」
ボソッと呟いてから大太刀を地面に突き刺した瞬間、周囲の地面と突き破って次々と黒い魔力柱が出現。
彼は次々出現する柱を回避しながらどんどん迫ってきたが、もう勝敗は決まっている。
「この技は…うん、君じゃ攻略できない。一人じゃ攻略不可能な技なんだ」
同情の目を向け、そして彼には決して見える事のない不可視の斬撃を無数に生成してその肉体を斬り刻んだ。
それから大太刀を引き抜き、遥か上空に生成された黒い球体を切り裂いて爆発させた。本来はあれを当てて終了するが、流石に可哀想だからね。
「私本体に集中し過ぎたのが君の敗因かな?全く別の場所から飛んでくる物に完全に対応できてたわけじゃないもんね」
「……貴様は…どうして…」
「あの時も言ったでしょ。悪魔の救済の為に私は動く。それ以上でもそれ以下でもない」
「―――あっ、やっぱサタンの魔力………ってパルパータ!?」
「あっ、シード。どうしたの?」
「いや、こんな派手に魔力を放ってたら嫌でも見に来るでしょ。……えっ、俺じゃないからね?」
「分かってるとも!…悪魔界でゆっくり過ごす事だね。君の親衛隊なら守ってくれるでしょ」
転移魔法を発動させて悪魔界にある彼の城に飛ばし、シードの方を見る。
「お酒美味しかったよ!」
「ホント?良かった~」
「それじゃシード、また会おう!」
「うん!おやすみ~」
「うぃ、おやすみ~」




