作戦会議
―――翌朝
朝練を終えた俺は、まだ眠ってるワールスとエトワールを起こした。幾ら頬を突いても起きる気配が無かったが、脇腹や足をくすぐったらすぐ起きてくれてビビってる。
「お前等、屋敷でしっかり警戒しとけって言ったのに俺が帰ったときにはもう爆睡してたよな」
「それはワールスが寝ようって言うから」
「何だと」
「だ、だってメンツ見て!?最早守られる側なのよ!!」
「…確かにそうだけど寝るなよ」
「「ごめんちゃい」」
「赦す」
可愛いからね。謝り方もだけど、顔が主に可愛いから。
「それで…どうしたの?」
「何時もはお風呂入った後に起こしてくれるのに珍しく早い」
「あぁそれなんだが…二日に一回はお前等も朝練に参加しろ。というか今日は俺がレイちゃんに習う日、明日はお前達が俺に習う日にする」
「「!!」」
「シー君が教えてくれるんだね!?」
「最高!」
「だから明日は俺と同じ時間に起きて貰うぞ」
これはレイちゃんの案でもある。俺としてはレイちゃんとの時間を過ごしたいが、でも皆を強くするのには必要な事。
一緒にやれば良いんじゃ?とも思ったが、確かにレイちゃんの天才的な思考を理解するのは同等の天才じゃ無いと無理なので俺が教えるべき。
「「ん!」」
「そういえば昨日は大丈夫だった…?なんか最後の方にヤバい圧が全域に掛かってたけど」
「問題無いさ。それより朝食の後は早速動き出すぞ。一年しか時間が無いからな」
「わ、分かった!」
「…了解」
一番の問題は死界にあるタルタロスの館の使用許可を得られるかどうかだな。死王と話しをしないといけないが、その為には死界に行かないといけない。
死なないといけないんだよなぁ、あの世界。もしくは死王の許可を得た場合。一回行けるようになれば転移で何時でも行けるんだけど、その一回が中々ね。
死んだらあっちで転移魔法を使っても現世には戻って来れないし。生きてあっちに行ければ最高過ぎる。アンデッドの宝物庫だし。
過去に死んだ伝説級の魔物とかも居るんだよ?あっ、でもデミちゃんとかそのレベルの存在になると屋敷が貰えたらしい。
死王は人間の価値観や魔族の価値観では無く、平等な視点で見てくれるから、人が魔族を悪としても、魔族として頑張ってればそれは悪とされない。
パルパータが言ってたでしょ。悪魔という種として行動して人を殺したりしてただけだからこそ、死んだ後は普通に生活で来ていた、って。
「んじゃまた後で」
「私もお風呂行く!」
「…私も」
「おぉ、良いんじゃないか?待ってやるから着替えとか持ってこいよ」
「「ん!」」
――――時間はゆっくりと流れて行き、朝食後、大会議室にて
「…敵は恐らく奴が生み出した怪物だ。人の欲望を結晶化させ、それをコアとして動かすゴーレムみたいなもんさ」
「な、何で分かるの?」
「俺も作った事があるからだな。彼奴は欲望を悪とみなしてるからこそ、その欲望を使って戦ってくるはずだ」
「…どうやって戦う?もしシードの予想が合ってるなら敵は大軍確定よ」
「案ずるなシャナリア。お前は何時も焦り過ぎだ」
「ば、バルバストに言われると言い返せない…」
「まぁシャナリアらしいじゃん!…で、相手は確実に大軍だがこちらも兵力が負けてるわけじゃない。各地から次々と兵が集まってる今だからこそやれる。プレアデス、報告を」
「はい。邪神教が持つ兵は凡そ12万、そして魔法を主とする神父や信徒は10万、紅ノ影から暗殺者が1万、騎士団は5万5千、宮廷魔導士団は2万8千、兵士は一か月後に全て集まって22万となります。合計で53万3千の兵がシード様の手駒となります」
「「!?」」
「わ、我々が名簿を見たときは3万も居なかった筈ですが…」
「ラスハント率いる強靭な兵士達、ムヴォン率いるオーガの軍勢だけでも10万を超える。そして最近私が雇った多くの新兵は皆揃って元兵士や有名な傭兵、異能力のせいで蔑まれた孤児。…彼等を直ぐ名簿には載せられない、何でだと思う?」
「貴族が居たから…?」
「そう、その通り。彼等は新兵を虐めるのが好きだからね。でも今はそんなゴミは存在しない。だからあとで名簿を見ると良いよ、増えてるから」
そう言いながら机上に広がる地図の上に、魔力で作った黒いキングの駒をこの城のある場所に、それから悪魔っぽく作った駒をヴェルロイド王国の王都に。
「まず俺達がするべき事は国を作る事。そして砦を幾つか作る事。この二つだ」
「砦?」
「あぁ。此処からヴェルロイド王国まで馬で一か月。…攻めるとしても砦を作って近付く必要があるわけだ。物資の問題があるしな」
「転移じゃダメなの?」
「あのな、転移だって五十万近い兵を運ぶのには結構大きな魔法陣を作る必要があるんだぞ?自分一人なら魔法陣もクソも無いけどさぁ」
「それに…連合軍とかを指揮することになった場合、転移魔法を使っていれば此方の位置をばらすだけだ。魔力で逆探知をされれば一瞬で場所がバレる」
「た、確かに…」
「だから普通に行軍したほうが良い。兵の訓練にもなるからな。…どうせ彼奴は王都で待機してるだけだから、ただの魔物に警戒してればいい」
「…そうだね」
「ワールス、意見するのは良い事だ。シャナリアだって昔はよく変な事を言ってたんだ。今はあんなに威張ってるがな。…だからお前も間違えて学べばいいんだよ」
「シャナリアが…。分かった!」
「良い子だ」
「ちょっと、何でそんなの知ってるのよ」
「そりゃ聞けば分かるだろ、皆に」
「……馬鹿!」
「へっ、何とでも言え!…ってわけで先ず此処に居る幹部諸君は兵士と共に砦を作ってもらう。場所は適当、好きな位置で良い」
「「御意」」
「シャナリア、バルバストは部下の指導をしっかりと」
「おけ」
「承知しました」
「ラスハント、ムヴァン。お前等は城に残って動く奴等の教育等々を頼む」
「任せておくと良い!」
「やってみせましょう」
「ファームは俺が居ない間の指揮等々を頼むぞ。何かあれば俺に念話で」
「おっけ」
「ワールス、エトワール、アトラス、プレイオネは俺と共に死界に行く」
「…どうやって?」
「死人は嫌でも死界に魂が向かってしまう。勿論途中でレイスの様な魔物化しなければ、だが」
「デミとかに頼るってこと?」
「いや、死界の入り口まで連れてってもらうだけだ。それに…復活した後だと転移を使っても行けないらしいしな」
「な、なるほど。…場所は?」
「此処だ」
俺が黒い駒を置いた場所、そこは南にある海。その海の先には第二魔界と呼ばれる誰も手を付けてない未開の地。
と言うのは嘘で、0年以降誰も手を付けてないだけ。それに海だって元々は大地が広がってた。第二魔界だってくっ付いてたんだよなぁ。
魔界と呼ばれるのは前はずっと魔族のものだったから。まぁ今もだけど。ただ今あそこがどうなってるかは知らない。
「半月ほど南に行けば付ける筈だよ」
「おぉ、そうだったのか。…ファーム、一応聞くが馬でだよな?」
「勿論。基本移動時間は馬で計算してるからね」
「なら安心。と言うわけで数日以内には出発するからお前等は準備を。…それじゃ解散」




