魔王になった者の意思
―――城の応接室にて
「うむ、まぁ仲間になるぞ」
「そりゃ心強い」
「だがシード殿、其方の敵になるだろうな」
「???」
「何方かと言えば私はフロル派になる」
「確かにそれは敵かもしれんな。どっちが魔王になるか勝負してるんだ」
「…今のフロルはどうやって魔王に?」
「13の彼奴でも魔王になる素質があっただけさ。どうやったかは知らん」
「なるほどな。して如何するのだ?」
「んとね、まず四天王制度が無いからそれを戻したいんだよね。そこでファームをまず推薦したい」
「ファーム殿か。魔族一の弓使い、そして巧みな戦術で相手を翻弄すると聞いたことがある」
「間違いはない。そうだろ?」
「わ、私に聞かないでください!」
「うん、まぁ照れてるしそう言う事だろう」
「射抜きます」
「まった、冗談だ冗談、ラスハントが悪い」
「……フフッ、冗談ですよ」
「目が笑ってねぇ…。ま、まぁ…お前等二人は四天王に適任だろ?」
「「う~ん」」
「でもシード、残り二名はどうするのよ」
「俺の派閥二名にしたいんだ。そうすりゃ派閥が半分半分で丁度良いだろ?」
シード派閥二名、フロル派閥二名。兵は適当に二分されるはずだ。美女が良いか美男子が良いかでな。
「シードシード」
「どうしたワールス」
「私は?」
「お前は駄目だ。永遠に俺の親衛隊」
「親衛隊で良いの!?やった~!」
「………お前と反応が違って困っちゃうよ」
「ワールスはアホの子なので」
「それはそうだな、否定する気も起きない」
「酷くない?!」
「まぁシャナリア、どうだ?」
「嫌よ。騎士団長やってるから兼任は無理だし」
「確かにそうだな。まぁ一旦保留か。発表するのは当面先だし。今は…」
「「魔王軍を作り直す?」」
「そ。意味のない貴族制度や弱者には生きる権利すら与えられない魔族の上下関係。それはおかしい筈だ」
「弱者は弱者なりに努力を重ね、才能を持つことを許してもらえぬならば…」
「せめて努力して才能を持つ者を上回れるという自信を持て。…その教えはお前も知ってるんだな」
「当たり前だ!唱えたのはかの有名な剣神だからな、其方の師匠だが」
「あぁ。魔王軍は龍だろうが人だろうが力があれば為れる。そして…レイちゃんは全てを失い、捨てられた孤児から魔王に成り上がった」
帆と喉他者に興味を示さない事から孤高の王と内情を知らぬ輩には呼ばれる。
しかしあの時代以降、彼女がどういう人かを少しでも聞いたことがあれば呼び名は変わる。…欲をかかぬ至高の王、と。
話は変わるが、歴代の魔王の中でも初代、二代目、三代目は崇められている。初代は魔族の領域を拡大し、荒くれ者共を統率して盤石な基盤を作ったから。
二代目は更に領域を拡大し、降臨した魔神と和解するだけでなく、人間に不可侵条約を結ばせた。
三代目はほぼ全てを魔族領にし、邪神と同盟関係を結んだ挙句に多くの禁術や魔法を生み出し、後世の魔族に発展の可能性を残した。
四代目、五代目もそれなりに頑張ったと聞く。負けてしまったが、それでも魔族の為にその命を使い果たしたと。…その後は知らん。
「力無き者でも努力できるようにするところが最初だ。…力を貸してくれ。お前達がフロル派と言えども、仲間であることは変わらない」
「うむ、そうだな!我らはフロル派閥、しかしフロルが認めた男ならば仲間でもある!」
「本当か、その確信は得られない。でも…私は貴方を信じてる」
「…ありがとう」
――――翌日、未明
「う~ん、こんな感じの方がカッコいい?」
「前の方が良いんじゃ…」
「シードがそう言うなら…」
「…ね、ねぇレイちゃん」
「ん?」
「どうして…魔王になろうと思ったの?それにあんまり…その…」
「…フフッ、すこし座って話そっか」
レイちゃんはそう言いながら縁側に座り、隣をぽんぽんと叩いた。なので俺もそこに座り、木刀を背に置く。
「知っての通り私は捨てられた孤児。生まれた瞬間に固有スキルの一つも持たずに生まれたただの魔人だった」
「……な、何も…?」
「うん、何も。だから同じ子供達からは格好の的、丁度良い虐めの対象でね。その時に気付いたの。虐められても彼等はスキルを使わずに殴って来てることに」
「?」
「それが何だ、そう思ったでしょ。…スキルが無くても、力があれば私はやり返せる、そう思ったの」
「確かに…」
「だからまず盗みを働いた。捕まったらヤバいのは知ってるから、己の限界の速度を出せる。それで走り続けた」
「わぁ…」
やり方がハード過ぎる。けど…確かにそれは悪くないやり方かもしれない。
「その次は剣を盗んだ。そして集落から出て世界を探検し始めた」
「冒険者っぽい」
「まさにそれだね!…ある時には盗賊に追いかけられた時もあった。まぁその頃にはある程度我流の剣を身に着けてたからすぐ殺したけど」
「カッコいいなぁ…」
「それで気付いたら殆ど踏破しててね。残ってるのはデミの魔王城だけ。まぁ行く当てもなく入ったら次の魔王をどうするかで色々やっててさ」
「入れるもんなの?」
「魔族なら誰でも入れるよ!皆強いからこそ、何かされてもやり返せる自信があったんだろうね。まぁ私もあったよ、だからこそ今でも穢れなしの乙女」
「流石レイちゃん!」
「でしょ~!…んでね、中に入ったら厳つい兵士に目を付けられ、優勝すれば魔王になれる権利を得られる大会に参加させられたの」
「ワオ」
「とにかく強いリーダーが欲しかったんだろうね。まぁ…なんか皆弱くて優勝しちゃってさ」
「それで魔王を…」
「ううん、最初は辞めようと思った。魔王に興味は無くてさ。…でも誰かが自分と同じような目に合って欲しくなかった」
「それで…魔王になったんだ」
「うん!…ただあんまり人を信頼できなくてね。ほら、虐められてたのもあって他人をあんまり好きになれなくて」
「……それはそうだね」
「だから四天王やら六王やらとしか会話しなかった。まぁそれも必要最低限の会話だね。でも何か崇められたけど」
「だってレイちゃんのお陰で多くの魔族が助かったんだから!虐めたら死刑って凄いルール作ってるし!」
「ハハッ、まぁね~!…本当はもっと誰かと話したかったんだけどね。叶ってないわけじゃないから良いけど」
「そうなの?」
「うん、一応ね、しかも生前に。…そして今、シードに会えて完璧!」
「えへへ、俺に会えて嬉しい?」
「勿論!」




