鬼士襲来——そして
鬼士を叩き潰すと意気込んですぐさまグラウンドに向かうと、全身が銀色の鎧で覆っている不気味な騎士がいた。所々錆がついており、何やら黒いオーラのようなものも纏っている。
「あれが鬼士…!」
確かにものすごい殺気を感じる。強敵なのは間違いないようだ。レオの言っていた通り、正面から戦り合うのは少し大変かもしれないが、そんなのは関係ない。
「まずはこっちから仕掛ける!」
ポリゴンソードを取り出し、先手を取ろうと早速刺突一閃で攻撃する。
よしっ!このまま足を刺し、チェンジングポリゴンで鈍くなったところに追撃。その後瞬間移動で距離をとって奏音でさらに追撃。鉄の装甲といえど、砲撃なら効くはず。問題は最初の一刺しだが…刺さらなかったときはすぐに瞬間移動を使って次のステップへ———
「カァン!」
「!?」
装甲に刺さらなかったのではない。刺突一閃を初見で見切り、持っている片手剣で難なく受け止めたのだ。それどころか。何故か鬼士の剣からポリゴンソードが放れない。そう、まるで剣に向けて重力がかかっているかのように。ポリゴンソードを放して瞬間移動すれば良かったが、驚きのあまりワンテンポ遅れてしまい、空いていた左手に腕を掴まれ避けることもできず、剣で一突き。
「………!」
「ぐぁぁ!」
まずい、魔力である程度防御したとはいえ、まともに攻撃を喰らってしまった。ひとまず態勢を立て直すために瞬間移動で……いや待てよ、このまま瞬間移動したらこちらが一発喰らった状態で態勢がリセットされる。それでは圧倒的にこちらが不利。つまり、ここは逆に攻める!
自由のタクトを取り出し、奏音で攻撃を仕掛ける。しかし奏音は未解明の能力が多いため、有効打が打てるかは賭けだった。
「頼む!次の一手へとつながる一撃を!」
タクトを一振りし、現れたのはとても綺麗なアンバー色のヴァイオリンだった。そのヴァイオリンはすぐさま音色を奏で初め、同時に数か所から魔力弾を放ち腕をつかんでいた鬼士の左手を引きはがし、更に追撃。
「ここっ!」
すかさずポリゴンソードを鎧の間に差し込み、チェンジングポリゴンの発動に成功。鬼士の左手の動きが鈍くなる。右手も鈍らせようと攻撃を仕掛けた時、鬼士の剣が紫色の光を放つ。
「………。」
「あれは…【重力点】!まずいぞ奏!今すぐ逃げろ!」
「何…!」
重力点。発動者自信か発動者がその時身に着けているものに対し発動でき、発動個所に自分を除く半径2メートル以内のものが吸い寄せられる。
ポリゴンソードを離せなくした能力!しかしまずいな、このままでは確実に拘束される。剣が使えないとしても向こうには鉄でできた拳がある。防御で何とか耐えるしかないか。…ん?何故か光が剣先に集中していって………まさか!
「ぐっ!」
最初の光は偽装!一瞬で重力点を剣先に集中させることで確実に刺してくるとは。姿勢的に当たったのが足だったから深手を負わずには済んだが、結構ピンチかもな…
「………!」
鬼士はすぐに剣を抜き、グラウンドの端まで剣を飛ばした。一体何故か、そう、それは奏に深手を負わせるためである。重力点の性質上、発動時間中はどこに発動対象がいても効果を発揮することができる。更に剣は投げることが可能なため、対戦相手が半径二メートル以内に常に入る様投げれば、実質的に相手を投げ飛ばすことができる。つまり鬼士は奏を投げ飛ばし、よりダメージを与えようとしているわけだ。
「なっっ!」
奏は抗うすべもなくグラウンドの端まで物凄い勢いで投げ飛ばされる。生徒がいない方角だったのが不幸中の幸いだろう。しかし、剣で刺されたのち投げ飛ばされたのだから、致命傷を負ってしまうのは必然といえよう。
「っ…奏!今のお前には無理だ!とにかく今は逃げろ!じゃないと最悪取り返しのつかないことになるぞ!」
今の僕には無理…か。確かに戦況は最悪。正直今の僕じゃ勝つことは不可能———今の僕なら———
「フフフっ…!あはははっ!面白いじゃないか!今の僕じゃ無理なら今!ここで!今の僕以上になって見せようじゃないか!戦況が最悪!知ったこっちゃないねぇ!最悪なら自分から最高にするまでだ!レオのくれたこの”音の力”で!」
すると、奏の特徴的ともいえるオレンジサファイアのような色の目に、微弱な光りが放たれ、左目に♪のマークが刻まれていく
「あれは…!「神紋」!まさかこんなにも早く発現するとは!」
神紋発現状態のときは相方となる神がいる方が力が増すため、少し上から戦況をずっと見ていたレオがすぐに奏のもとへ行く。
「ハハハッ!やっぱ最高だぜ奏!ここからは一気にけりをつけるぞ!」
「勿論だレオ!それじゃあ始めよう。僕の演奏会を!【第一楽章開始】!」
自由のタクトを取り出し、一振りするのではなく、4拍子のリズムをタクトで刻み始める。すると、4拍子の曲が流れ始め、次々と楽器が登場する。そして召喚された楽器が次々と鬼士に攻撃をし、いつの間にか奏の傷も治っていた。
「……!………!!」
「よし!止めは俺たちで行くぞ!」
「うん!」
自由のタクトが音の力により強化され、光を放つ。この状態のタクトなら鎧などたやすく壊せるだろう。
「はぁぁぁ!」
鬼士を点へと突き上げ、バリィィンと音が鳴り鬼士の鎧が砕け散る。魂でできている暴霊鬼士にとって鎧は本体。つまり、奏の勝利である。
「よっしゃぁぁぁ!」
スキル習得アナウンスも流れ戦闘終了かに思われた。しかし———次の瞬間宙にいる奏の背後に黒い渦が現れ、そこから、氷でできた剣を持った黒と紫基調の服を着た青年が飛び出し奏を背後から奇襲する。
「我らの邪魔をしかねない癌は早めに除去する。」
「!?」
「奏ぇっ!…お前は、氷の魔神!」
全然戦ってくれないレオですが、戦ってないのではなく根本的に戦えないだけで、サボっている訳ではありません。どういう事かというと、基本的に神は依り代(主人公の場合はヘッドフォン)に宿り姿を見せれるようになっているだけで、基本、物理的干渉一切は行えません。2話にもあった「力を使えない」というのは、触れる以前の問題だった訳です。それとヘッドフォンに近いとより良いというのは、気だるいとかの精神的な問題で、大したことはありません。
あと、奏音の細かい能力内容も書いておきます。
スキル「奏音」
音楽の神の適応者のみが扱うことのできるゼウススキル。対応神器となっている自由のタクトを振ることで発動可能。音楽に関係する物がランダムで召喚され、召喚されたものの持つ能力が即時発動される。使い方や力量次第で幾百もの使い方ができる。そして、一度発動された能力は別のスキルとして覚え、確実に発動可能。




