表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/60

えんちゃん、朝から怒られる

「何で開始装備が調整前の試作支援剣なんだ!!」


朝一番。

企画管理フロアに、上司の怒声が響いた。


レッサーパンダ風の上司――営業企画兼監査主任、赤坂部長は、机を叩かんばかりの勢いでモニターを指さしていた。

そこに映っているのは、町の詰所で事情説明をしている涼花の姿である。


えんちゃんは椅子の上で縮こまりながら、小さな声で言った。


「ええと……持たせる剣を仮登録して、そのまま本登録を……」


「したのか!」


「してしまいました……」


「してしまいましたで済むか!」


会議室の隅では、みなちゃんが紙パックのお茶を飲みながら他人事の顔をしていた。


「いやあ、やっぱりだったね」


「みなちゃん、今それ言う!?」


「だって言ったじゃん。衣装確認した? 武器確認した? って」


赤坂部長はこめかみを押さえた。


「えん君」


「はい……」


「君は毎回、詰めが甘い」


「はい……」


「発想は悪くない」


「ありがとうございます……?」


「褒めてない!」


部長の尻尾が怒りで膨らんだ。

えんちゃんは心の中で終わったと思った。


試作支援剣――正式名称《導因補助式第七試製兵装》。

それは本来、世界線に適応できるかどうかを検証するための開発中装備で、主人公支援用としてもまだ承認されていない代物だった。


特徴は単純。

相手の危険度と使用者の生存率を参照して、必要最小限を大幅に超えた威力が出る。


つまり、めちゃくちゃ危ない。


「しかも衣装がパジャマ! 導入イベントとして最悪だ! 何だあの生活感の強い勇者は!」


「勇者ではない設定です!」


「そこは今どうでもいい!」


みなちゃんが横から口を挟む。


「でも、視聴率……じゃなかった、注目率は高いと思うよ。森からパジャマの剣士が来たって、町の人みんな気になるし」


「みな君、君は火に油を注がない」


「はーい」


言いながら、まったく反省していない声だった。


赤坂部長は長い長いため息をついたあと、えんちゃんを指差した。


「今日中に三つやれ」


「三つ……」


「一つ。支援剣の出力制御を再設定しろ。

二つ。主人公の初期生活導線を整えろ。

三つ。ギルド側に自然な受け皿を用意しろ」


「はい」


「終わるまで帰るな」


「はい……」


「残業申請は通しておく」


「そこは優しいんですね……」


「当たり前だ! 勤務時間内に終わる規模じゃないからだ!」


えんちゃんは机に突っ伏したくなった。

けれど、モニターの向こうでは涼花が真面目な顔で詰所の椅子に座っている。


何だかんだ言っても、自分が連れてきたのだ。

だったら、せめて最低限のレールは敷かなければいけない。


「……やります」


「やれ」


「あと、部長」


「何だ」


「できれば今後、視聴率って言い方は控えていただけると」


「上層部がそう言うんだから仕方ないだろう!」


やっぱりこの会社、少しおかしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ