かわいい仲間候補は、わりとぐいぐい来る
その日の午後、私はギルドの裏庭で剣の振りを確認していた。
生活魔法を覚えたとはいえ、戦闘の違和感は消えていない。
踏み込みが伸びる感覚。
剣が時々、私の想定以上の火力を出す感覚。
「また練習してるんですか?」
声をかけてきたのはフィアだった。
今日は淡いクリーム色のローブに着替えていて、朝より少しだけ柔らかい印象だ。
「気になることがあるから」
「剣ですか?」
「うん」
フィアは私の横にしゃがみ込み、まじまじと剣を見る。
「綺麗ですよね。ちょっと怖いけど」
「怖いのはわかる」
「でも、スズカさんが持ってると似合います」
「そうかな」
「そうです」
即答された。
フィアは杖の先で地面に円を描きながら言う。
「わたし、昨日まで、剣を持つ人ってもっとごつい感じだと思ってたんです。でもスズカさんって、見た目はすっきりしてるのに、構えると空気変わるんですよね」
それは少しうれしかった。
たぶん、剣道をやってきた時間の話だからだ。
「フィアは、どうして術師に?」
「小さいころ、身体が弱かったんです。だから前に出るより、支える方を覚えました。でも今は、支えるの好きですよ」
にこっと笑う。
やっぱりかわいい。
しかも前向きだ。
そう思っていると、裏庭の入口から女性たちの声が聞こえた。
「あ、ルクトさん」
「今日も顔がいい……」
私は反射でそちらを見た。
ルクトが面倒くさそうな顔で通り過ぎていく。
なるほど。
やっぱりこの人、客観的に見ても顔がいいらしい。
でも本人は、まったく気にしていないようだった。
声をかけられても「どうも」としか返さない。
フィアが小声で言う。
「ルクトさん、町ではちょっと人気なんですよ」
「そうなんだ」
「その反応、薄いですね」
「そういうものなんだなって思っただけ」
フィアは首を傾げ、それから私の顔を見て、なぜか笑った。
「スズカさんも似たようなものです」
「何が?」
「自覚がないところです」
本日三回目くらいの、よくわからない話題だった。




