ギルドの評価は、噂より少し早く上がる
町へ戻る頃には、討伐記録の紙がやけに重く感じた。
五体討伐。
うち二体は私。二体がルクト。一体は連携。
そしてなにより、想定より群れが大きかったことが問題だった。
報告を受けたハルドさんは、まず眉をひそめた。
「五体か。やはり増えてるな」
リディさんも真顔になる。
「北側だけですか?」
「今のところはな」とルクト。
「ただ、動きが飢えすぎてた。普段より縄張りが押されてる感じだ」
フィアが補足する。
「魔力の流れも少し変でした。うまく言えないんですけど、ざわざわしてる感じで……」
そのあたりは私にはまだわからない。
でも、わからないなりに、気になるものはあった。
「一体、変な動きをしてました」
みんなの視線が私に集まる。
「変な動き?」
「はい。襲ってくる前、一瞬だけ止まって……何かを待つみたいに首を振りました。私たちを見てるというより、何か別の合図を探してるみたいな」
ハルドさんは腕を組んだ。
すぐには答えず、少し考える顔をする。
「……念のため北側の見回りを増やす。リディ、依頼板の討伐報酬も一段階上げろ」
「わかりました」
それから、ハルドさんは私を見た。
「スズカ」
「はい」
「初討伐としては、文句なしだ。加減の危うさはあるが、判断は早い。味方の位置も見えてる。……正直、仮登録にしておくには惜しい」
リディさんが頷く。
「本登録への繰り上げ申請、出しておきますか?」
「出す」
私は目を瞬かせた。
「そんなに早く?」
「早い」とルクトが言う。
「普通はもう少しかかる。でも、お前は実力が基準からずれてる」
「褒められてる気がしない」
「半分は褒めてる」
また半分だ。
とはいえ、周囲の視線が昨日とは違っていた。
珍しいものを見る目から、ちょっと警戒しつつ認める目に変わっている。
それはたぶん、悪くない。
受付近くにいた女性冒険者が、通りすがりに笑った。
「新人ちゃん、見た目は綺麗なのに戦い方が迷いなくて怖いわね」
「褒め言葉でしょうか」
「褒めてるわよ」
どうやら今日だけで二回、そういう方向のことを言われている。
まだあまり実感はない。
私からすると、自分の顔なんて見慣れたものだし、整えるのは身だしなみの範囲だ。
でも、周りがそう言うなら、少なくとも異世界ではそう見える側なのかもしれない。
……いや、やっぱりよくわからないけど。
フィアが私の横でうれしそうに言った。
「スズカさん、もう有名人ですね」
「その言い方やめて。落ち着かないから」
「でも、かっこよかったです」
「……ありがとう」
フィアは本当に素直だ。
かわいい上に素直だと、ちょっと無敵感がある。




