剣の秘密は、まだ答えにならない
夜。宿の部屋。
私は椅子に座って、右手の剣を膝に置いていた。
今日だけで、いろいろありすぎた。
森を抜けて、町に入って、服を手に入れて、ギルドに入って、仕事をして、宿まで決めた。
普通なら一週間かけてもおかしくないことを、一日でやった気がする。
でも、その全部の中心にあるのはこの剣だ。
私はそっと柄を握る。
すると、剣の青白い筋がふっと淡く光った。
「やっぱり、普通じゃない」
普通じゃない剣を持って、普通じゃない場所にいる。
それでも、私がやることはたぶん変わらない。
強くなる。
情報を集める。
帰る方法を探す。
そして、生き残る。
そのためには、この剣のことも知らなければいけない。
「明日、もう少し聞いてみよう」
ギルドの人たちなら、何かわかるかもしれない。
ルクトも、ハルドさんも、リディさんも、話は聞いてくれそうだった。
窓の外から、町のざわめきが少しだけ聞こえる。
知らない世界の、知らない夜の音。
私は布団に潜り込み、目を閉じた。
家族の顔が浮かぶ。
けれど、泣くのはまだ違う気がした。
泣くより先に、やることがある。
私はそういうふうにできている。
だから今は、眠る。
明日もきっと、わからないことだらけだ。
でもそれなら、それでいい。
マニュアルがないなら、自分で読み解けばいい。
そう決めて、私は静かに息を吐いた。
その夜、夢の中で――
白黒の丸い何かが、書類の山に埋もれて泣きながら残業していた気がした。
たぶん、気のせいじゃない。




