交流は、説明不足のまま進む
その日の夕方、私は広場の屋台でスープを買った。
豆と根菜を煮込んだもので、少し塩気が強い。
でも温かくて、ものすごくおいしい。
「うま……」
思わず声が漏れた。
屋台のおじさんが笑う。
「嬢ちゃん、よっぽど腹減ってたんだな」
「はい。かなり」
「ギルドの新人か?」
「今日入ったばかりです」
「へえ。なら景気づけだ、パン一つおまけしとく」
「いいんですか」
「初日くらいはな」
ありがたい。
この世界、見た目に反して優しい人が多い。
いや、見た目に反しては失礼か。
私は嫌いな人を作らないように生きてきた。
それは、この世界でも変えたくなかった。
宿は、ベルナさんの紹介で安い部屋を貸してくれるところが見つかった。
経営しているのは、ふくよかな女将さんと口数の少ない旦那さん。
部屋は狭いけれど清潔で、藁の寝具も思ったより寝心地が悪くない。
「しばらく滞在するなら、朝の水汲みくらい手伝ってもらうよ」と女将さんが言う。
「やります」
「即答だねえ」
「働けることは働きたいので」
「いい子だ」
その言葉に、少しだけ照れた。
宿へ向かう途中、子どもたちが私のまわりをうろうろした。
どうやら、昼間の木板両断の話が広まっているらしい。
「ねえねえ、お姉ちゃん本当に一振りで斬ったの?」
「森から来たってほんと?」
「その剣、光るの?」
質問攻めだ。
「光ります」
実際、少しだけ。
「すげー!」と子どもたちははしゃぐ。
その様子を見ていたルクトが、小さく笑った。
「人気者だな」
「やめてください。落ち着きません」
「でも、悪くないだろ」
……悪くはなかった。
まだ何もわからない世界で、知らない人たちに囲まれて、少しずつ居場所らしいものができていく。
本当なら、こんなに早く気を緩めるべきじゃないのかもしれない。
でも私は思ってしまった。
生きるだけなら、もしかしたら何とかなるかもしれない。
その希望が、少しだけ嬉しかった。




