第四十八話 変態と適当
チビヤンキー上松の前に庇うように前に立ちはだかる智秋、真剣な顔をしてボクに話す
「姉ちゃん!こいつはそんなに悪いやつじゃないんだ!すまん!俺が・・中学の時に相談に乗った結果なんだ!」
よくわからない事を言っている智秋、それを聞いたからか、集まってきたサラリーマン達も少し呆れた顔をして一人また一人とこの場を離れていく
ボクも訳がわからず呆気に取られ、一緒にこの場を立ち去ってやろうかと思ったところで智秋に聞いてみた
「中学の時の相談って?なんで智秋が謝るの??」
ボクの言葉に暫く無言を貫く智秋だったが、何かを覚悟したのかゆっくりと話しだす智秋
「実は・・もう一人いたんだ・・姉ちゃんに中学時代告りたいやつが・・リキと・・この・・雅人だ」
なっ・・なに!?
あれは確か・・智秋がリキに押し通される形でボクの事を女子だと言う事にしたボク偽り女子事件か?!
でもあの時はリキの告白を智秋は止めてくれてたんだよな・・?
なんでチビヤンキー上松は止めなかったんだ?
そのおかげでボクは毎日しつこく絡まれてたんだぞ?
脳内で女子偽り事件を少し思い出したところで智秋が神妙な表情で更に話してくる
「中学の時・・俺は今話した二人以外にもかなりの男子を相手取って相談を受けてた・・どれも姉ちゃんを紹介しろだとかなんで男装してるのか?とか・・」
なんだと!?初耳だぞ!?ボクは男子だったんだ!男装じゃなく、それが正装だったんだ!
そもそもそんなに相談を受けること自体おかしいんじゃないのか?!
何まともに相談なんか受けてやがる!
当時のボクが男子にモテモテだったというヤバい過去が明るみに出て驚愕したところで険しくなった表情の智秋が更に言う
「とくにしつこかったリキと雅人・・リキはタイミング的になんとかなったんだ・・が・・いい加減対応が面倒くさくなって雅人につい言っちまったんだ・・
うちの姉ちゃんは強引で無理矢理な男子が好みだぞ?って・・」
おい・・強引で無理矢理って・・
それではボクが変態プレイ好きな男子だった・・いや・・ボクは女子ってことにされていたから完全にドM女子だと思われていたんじゃないか・・
もしかして・・チビヤンキー上松がしつこくて変態じみてるのは・・
ボクの脳内でS極とM極がくっついたところで、智秋の後に隠れていたチビヤンキー上松にボクは恐る恐る聞いてみた
「あのさ・・昔からボクにしつこくかまってくるのって・・もしかして智秋の言った事・・真に受けてやってる・・?」
ボクの言葉に先程まで威勢が良かったチビヤンキー上松が急にテンションダウンしてボクの知らない表情を見せて話しだした
「松元ごめん!僕・・どうしても智秋のお姉さんと仲良くなりたくて!相談したら強引に無理矢理誘った方が良いって言われたから・・それで僕・・考えてキャラ変えてお姉さんに・・」
それを聞いて呆れて開いた口が塞がらないボク
・・純粋にも程があるだろ・・
無理矢理キャラを変えて変態ヤンキーになったってのか?
・・・
ここにも・・アホがいたとは・・な・・
ていうか・・
この茶番・・全て智秋の仕業だったとは・・
アホが変異してドアホの域だぜ・・
我が弟ながらこれ程にもアホを露呈して他人に迷惑を掛けるとは・・
笑止千万!!
このボクがアホのせいで二度も迷惑を被るなんて・・!
ゆ・・ゆるさん・・
ゆるさんぞおぉぉ!!
プチっと穏やかな心の持ち主のボクが怒りでプンプン千秋に目覚めたところでギロッと智秋を睨んでボクは言ってやった
「おまえ・・適当な事ばかりいいやがって・・罪もないリキや上松にホラばかり吹き込みボクを困らせやがったな?お仕置きが・・必要だね・・?」
鬼神紗良譲りの眼力で智秋をフリーズさせてやったボク、フルフルと震える智秋がボクに言う
「俺のせいじゃねぇぞ・・みんな俺に聞いてくるのがいけないんだ!もっと言えば姉ちゃんが男子を虜にする思わせぶりな態度取るから勘違いするんだ!!それにお仕置き朝受けたじゃねぇかよ!これ以上姉ちゃんになんかされたら俺の股間が保たねぇからな!!!」
病み上がりの股間を押さえて、生意気にボクに歯向かってくる智秋
ほう・・全てはこのボクに責任があると言っているのか・・
思わせぶりだと!?
笑止!
ボクの中学時代は男子友達は多かったんだ!
まぁ・・大体少し遊ぶとつい嬉しくて知らない間に笑顔を振りまいてしまった記憶はあるが・・
その後は必ずかまった奴はボクから去っていって翌日には代わりにラブレターが・・
あの時は流石に処理に困ったぜ・・
困り過ぎて智秋の机に押し込んでやったが・・
ん?ていうか・・裏を返せばボクはイケメンだったと言うことになるな?
モテるのは男子時代からだったとは・・
モテる男子はつらいぜ!
イケメンは男子をも虜にする力があるのかと当時のボクに自惚れて怒りがあやふやになったところで変態上松が真面目な顔をボクに向けて話してきた
「松元・・折角だから言わせてもらう!僕は君がずっと好・・」
と言いかけたところで悪寒がボクを襲い、とっさに笑顔でかぶせて変態上松に言ってやった
「断る!ボクは強引で無理矢理な男子は嫌いだよ?それにもう大事な人もいるから!変・・じゃなくて・・上松とはそう言う関係にはなれないね!」
それを聞いて意気消沈する上松、ボクの女子の部分が弱っている男子に反応して思わず付け足して言ってしまう
「けど・・友達ならいいよ・・?仕方ないなぁ・・」
上松に向けてニヤッと天使のほくそ笑みをお披露目してやると、真っ赤な顔をして湯気でも出てそうな表情になる上松
それを見て九死に一生を得た智秋が呆れた表情で言った
「姉ちゃん・・それだよ・・その笑顔・・姉ちゃんと接点あった男子全員それにやられたんだよ・・」
当時男子だった頃も破壊力抜群のボクの笑顔が思わせぶりの原因だと悟ったところで呆けた変態上松がボクを見てうわ言のように勝手に話している
「あぁ・・千秋様・・好きです・・胸・・触っちゃった・・えへへへへ」
このあとボクは気持ち悪い変態上松に真っ当に生きろと活を入れ、真面目に相談に乗ってたフリの智秋に野外版チョークスリーパーを決めてやってボクは今日ガッツリと学校を遅刻してやったのであった




