表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初心者女子  作者: nim
モデル女子編
45/61

第四十五話  車とおじさん

学校帰り、珍しくボクはペットボトルのお茶を飲みながら一人で家路までの大通りを歩いている

10月も半ば、あの青々と輝いていた街路樹も赤や黄色に色づき、秋の気配もようやく感じられるようになってきた


ボクは空の夕焼けをたまに見上げながら久しぶりの単独行動を満喫していると、前方に太っちょメガネの年配おじさんがキョロキョロしているのに気付いた


むっ・・あの風貌は漫画で読んだバスケの監督に似ているな・・あだ名は確か・・鬼がついたような・・

鬼・・・・

折角一人なのに鬼神紗良を思い出しちまったじゃねぇか!

キョロキョロしてて危なそうだから知らないフリをしとくか・・


脳内でそう言い聞かせ上をみて夕焼けの中、飛んでる鳥を数えて、キョロおじさんをやり過ごそうとするボク


一羽・・二羽・・三羽・・


数えているとボクはあることに気付く


なぜだ・・空はこんなに広いのにカラスしかいないではないか?!

不吉・・

そういえばいつもより鳴き声がうるさい気がする・・

これはもしや・・

鬼神の使い・・

ボクは紗良に監視されているのでは・・

キョロおじさんをスルーするなと鬼神様のお告げ・・

キョロおじさんをシカトしたら・・

紗良に生贄にされる・・!


脳内でヤバい信仰が侵食してフルフルとバイブレーションしたところで、ボクは道を少し戻りキョロおじさんに話し掛けてみた


「あの〜お告げが・・いや、どうかなさいましたか?」


ボクの言葉にキョロキョロをやめたキョロおじさんがメガネをクイッと上げて話してくる


「いや〜ちょっと急いでるんだけどもね・・車がね・・パンクかね?」


そう言って道に非常点滅灯を出して停まってる車を指をさすキョロおじさん


おめぇが太っちょだからパンクしたんじゃねぇのか?

その体格で軽自動車って・・

乗る車を間違えたな・・残念だ・・


脳内でキョロおじさんを軽くディスったところで、電線にとまるカラスが騒ぎ始めた


なんだと!?

やはり鬼神紗良の使いか!?

ついに人知を超えた力を身に着けやがったな!

どうやってもこのボクにキョロおじさんの話し相手になれと言うことなのか・・


アホ回路全開とも知らず、鬼神の力に青ざめたところでボクはキョロおじさんに聞き直す


「パンク・・じゃないですか?ほら左の後輪ペッタンコですよ?」


それを聞いたキョロおじさんがメガネを上にずらして目を見開いてタイヤ見ると、フムフムと頷く

暫くするとメガネを戻し少し困り顔でボクに話す


「いや〜ホントだね?これは走れないね・・・どうするかね・・・?」


いや・・タイヤ変えろよ・・

昔の車だからスペアのタイヤくらい載ってるだろ・・

それを初対面のこのボクにどうするか聞かれてもな・・

天才なるこのボクは軍隊もさることながら乗り物全般にも精通している・・

無論タイヤの交換などお父さんに仕込まれているからうまし棒を食べながらでもボクは出来るが・・

だが!

元男子とはいえ、今のボクは誰が見ても姿だけは完全体の女子なのだよ?

そのボクに向かって遠回しにタイヤを変えろと促すだと・・?

見ず知らずのキョロおじさんとはいえ・・

許さんぞ!!

と言いたいところだが・・

あの表情は絶対スペアのタイヤの存在も知らない顔だな・・

それにあの太っちょな腹よ・・

メンテナンス不良なキョロおじさんがメンテナンスが必要な車のタイヤを変えられるとは仏様でも思わんだろ・・

しかしボクも女子だ・・ここはハッキリとこのキョロおじさんに現実をしっかりと申してやらんとな・・!


ボクは意を決し、ニヤッと不敵にほくそ笑んでやると、ズバッとキョロおじさんに言ってやった


「ボク・・で良ければタイヤ代わりのやつと変えてあげましょうか?多分車に工具とタイヤ収納してあると思うので・・」


完全に意図しない言葉を放ってしまった元男子のボク

現女子なボクの暖かな心遣いに驚愕したところでキョロおじさんが少し驚いた表情をして話し始めた


「お嬢さんがやるのかね?ほぅほぅほぅ!今の若い女の子は頼もしい!お願いしてもいいのかね?」


いや・・そこは丁重に断れ・・仮にもお願いした相手・・女子だぞ?

図々しいにも程がある!

おじさんとはいえ、大人男子が言う事じゃねぇな・・

と脳内で思ったがボクはニコッと無意識に笑顔を向けてやって言ってやる


「良いですよ、差し支えなければ車の荷室見させてもらってもいいですか?道具を探し・・」


ボクの話を最後まで聞かずに突然キョロおじさんは車の後ろまで行くと、リアハッチを開いてボクに向かい手招きをして話しだす


「ほぅほぅ!お嬢さんここにあるよ、工具とタイヤ、下ろしておくからあとはお願いするよ?」


おい・・メガネオヤジ・・

車の車載物熟知してるじゃねぇか!

しかもあとはお願いするよ・・だと・・?

そこまで知ってるなら自分でやりやがれ!

ボクの腹の虫がおさまらん!

みてろ・・隙を見てボクは必ずその太っちょな腹を両手でドリブルして手懐けてやるからな!


脳内でメガネオヤジの手懐け方を編み出したところでボクはキョロおじさんに話す


「ありがとうございます!あとはボクやりますね、危ないので歩道で待っててください」


心底気遣いが上手いボクの女子の部分に若干イラッとしながらボクはタイヤの交換を始めた








最後のナットを締め終え、か弱い腕で道具とパンクしたタイヤを荷室に入れるとボクはフゥと息を吐いてからキョロおじさんに話し掛ける


「おじさん終わりましたよ?工具とパンクしたタイヤは荷室に入れておきましたから早めに新しいタイヤ買ってくださいね、それじゃ・・ボク行きますね・・」


こき使われた感が微妙に漂う空気にドッと疲れが押し寄せて、とっとと帰ろうオーラ全開のボクが離れかけたところでキョロおじさんが話しかけてきた


「ありがとう、とても手際も良いし助かったよ、これもなにかの縁だね?もしよければお嬢さんのお名前を教えてくれるかね?」


ニコニコと笑顔なおじさん、声掛けられたら帰れないじゃねぇか、と思ったが仕方なくボクは立ち止まって言ってやった


「松元です、おじさんは?」


自分だけ名乗るのも癪だし、普通は聞いてきた方のメガネオヤジから名乗るもんだろ?

そう思い聞き返してやったのだが、おじさんはニコニコ笑顔をしたまま応えてくれた


「ほぅほぅ、すまないね、名乗っていなかったね、私は綱島源八朗(つなしまげんぱちろう)、今日は大事な会議があってね、松元さんのおかけで間に合いそうだ、ありがとう、またお会いしましょう」


そう言ってボクに手を振ると車に乗り込みそのままゆっくりと行ってしまったキョロおじさん・・いや、源八朗


ボクを呼び止めただけでなく・・名前だけ聞いてボクより先に立ち去りやがった・・

汚された挙げ句に置き去りだと!?

源八朗め・・!覚えてやがれ!

次に会ったときは次こそ両手であの太っちょな腹をドリブルしてやるからな!


次に会うのかわからない源八朗にボクは文句を言いながら暗くなりつつある歩道を地団駄を踏みながら帰ってのであった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ