第四十一話 型にはまらず
何ということだ・・やはりあの松元・・いや、akiというモデルは良い意味で期待を裏切ってくれる、彼女に任せて正解だった
私の眼前で授業風景の撮影をしているaki君と娘の結月、撮影だというのに、にこやかに話をしながら撮られているのだが、素人目にも流石にプロ・・キレイに映るポイントを知っていて真に画になる
それだけではない、高校生離れした妖艶さ・・我が娘をも手懐け私をも虜にしたその美貌・・真に綺麗だ
私の趣味を取り入れてaki君を私色に染めるプランだったのだが・・
aki君の独断で変更したスタイリング・・
素晴らしい!
私の趣味の幅を広げてくれた!
あの無造作な髪がボディラインがクッキリ出る制服にあそこまでシンクロして馴染むとは!
それだけではない!生足を軸に考えていたあの丈を短くしたスカート・・
まさか黒のニーハイソックスでそれを隠しただけでなく、学生らしさを際立たせて尚且さり気なくモデル独特の妖艶さをも滲み出させている・・
正しく、新設のモデルクラスの生徒という感じだ
極めつけはやはりあの黒縁の眼鏡と言ったところだが・・
aki君がプロのモデルだからなのだろうか、この校長を務める私があの眼鏡の奥の妖艶な瞳から目が離せないのだ・・
見れば見るほど吸い込まれ骨抜きにされかかってしまう
これは・・とんでもないコレクションパンフレットが出来上がってしまうかもしれん!
そんなaki君の姿に目が離せなくなってしまっていた私だったが、撮影がラストの風景に移行する前に休暇を挟む運びとなった
私も気を取り直して若槻カメラマンと話をしようと声を掛けた
「やはりプロですな、こんなに早く撮影が進むとは・・」
私の問に若槻カメラマンが応えた
「いえ、撮影が早いのは一重にうちのakiのセンスがあっての事です
通常この規模の企画撮影だと丸一日は掛けて撮ります、彼女はこちらが欲しい画をピンポイントで出してくれるんです」
なるほど・・センスか・・確かにaki君の表情には迷いがない、あの歳で相手が求める事がわかるとは・・末恐ろしいな
だがここまでは決められたポーズ・・
モデル特有のこの先の撮影のポージングはどうか・・
このあと恐らく私が必ず入れるようにとプランナーに話したメインのページの撮影の筈、果たして制服姿でどのようなポージングを見せてくれるのか・・楽しみだ
そう考えて私がふと目線をずらすと、我が娘と談笑しているaki君が私と目が合いこちらへ来て一礼した
「校長先生、独断でスタイリングを変えてしまいすみません・・でもこの方が学生らしくて良いかと・・いかがですか?」
そう言うと足を揃え片手を腰に宛てがい妖しい微笑みを向け、私の目をブレずに見つめている
何という自信・・倍以上の歳の差かあるというのにこの気迫・・私も武道を嗜むものとして相手の力量くらいはわかるつもりだ
が・・aki君は別格のようだ、道は違えどこの隙のないポーズ・・何気ないポーズだが私にはわかるぞ、気を抜けば・・飲まれる・・
教育者として生徒に飲まれるわけにはいかんが・・これは・・
唾を飲み込みなんとか正気を保った私は笑顔を向けてやり最善の言葉をかけてやる
「aki君に全て任せよう、そのスタイリング、大いに私は気に入っているよ、目が離せんな!はっはっはっ!」
本音も出てしまったが嘘を生徒につくより良いであろう
ラストのaki君のポージングもしかと目に焼き付けるとしようではないか
そう私が考えた刹那、撮影の再開に途中まで行きかけたaki君が振り返り私に先程の笑顔を見せながら言った
「ふふ、校長先生?あまり趣味を校内で出すものではありませんよ?わたしが正してあげます」
そう言ってプイッと居直るとaki君は撮影を開始した
見透かされていた?ふむ・・まぁよいとしよう
どうやら机を使ってポージングをするようだがどう私を正してくれるのか・・ありきたりなポージングでは私には少しも響かないぞ?
その刹那、aki君は片手を机に着くと両脚を肩幅に開きながらヒップを突きだす、ヒラッと紺色のミニフレアースカートをなびかせるとメガネをずらし上目遣いをしながら前髪をもう片方の指でたくし上げあの妖艶な瞳と控え気味な笑みでポーズをとってみせた
我が娘の結月も見事にakiさんとシンクロしてお互い顔を寄せ、よく見れば腕と顔からなるラインがハートになっているではないか!
な・・なんとも奇抜・・されど新鮮・・
モデルの型にはまらない末恐ろしき娘・・
あの猫のようなポージング・・そしてあの瞳・・目が離せん・・全てを脳裏に焼け付かせねば!!
この私を・・正す・・即ちそれは・・!
akiしゃんの虜になってしまう事だったとは・・
akiしゃんに個人的にあのポージングをしてもらう事は出来ないだろうか・・?
akiしゃん色に完全に染まった私の頭脳は撮影が終わったことも認識できず、ただ目だけがakiしゃんを追っていた
それを打破したのは我が娘の声だった
「・・パパ?なんか気持ち悪いですよ?その顔は家だけにしといてください?良かったですねここが学校で!外でその顔してたら完全に変態ですから!」
くっ・・娘も可愛くて仕方がない・・!akiしゃんと付き合うようになってからまた綺麗になりおって!けしからん!罰として欲しい物を何か買ってやろうぞ!
娘の言葉すらあまり届いてなかった私にakiしゃんが話しかけてくれた
「校長先生?どうやら私色に染まってしまったみたいですね?威厳はどこへいってしまったのですか?」
そう言ったakiしゃんは、私にスッと顔を寄せてあの瞳でジッと見つめ言った
「趣味はほどほどに・・モデルクラスの新設・・楽しみにしてますわ」
その言葉を最後に雰囲気が何時もの松元さんに戻り結月を連れて教室を去っていってしまった
私はその場でへたり込み、しばらくの間あの妖艶な瞳とakiしゃんの残していった甘くフレッシュな香りに酔いしれるのであった
控え教室に戻ったボクは焦り顔で結月に話しだす
「ゆず!校長の顔が目の前にあって・・!ボク変なことした?失礼なことしちゃったかな?!」
その問いに結月はニパッと笑い応える
「全然!むしろこれでパパのあの変態チックな癖・・治るといいです!てかちーちゃん完全にパパ掌握しましたよ!ちーちゃん裏の権力者ですね!女帝です!」
それを聞いてボクは話しだす
「それは言い過ぎ・・女帝はボクのマネージャーだよ?紗良は怖いから会ったら礼儀正しくね?胸揉まれちゃうから!」
それを聞いた結月は怯えた表情をしてボクに言う
「怖すぎます・・ちーちゃんを手玉にとって胸まで揉んでくるとは・・女帝マネージャー恐るべし・・です・・」
そんな話をしていると、ボクは刺すような視線を感じてふと教室の入り口を見た
そこにはいつから居たのか鬼の形相の紗良が黙ってこちらを見ている
慌てて結月に目で合図を出して取り繕うボクと結月
下を向いてなんとかやり過ごそうとしたが黒い影がボクの前まで来ると女帝がボクにゆっくりと言った
「女帝が・・なんだって?怖い・・だと・・?少しはまともになったかと思えば・・お仕置きが足りねぇようだな・・?」
その声に俯きながらフルフルと小動物の様に震えるボク
それを見た結月がボクと女帝に割り込んで話しだした
「女帝様!・・じゃなくて紗良ちゃん!はじめまして!校長の娘の結月です!結月今度この学校に転入するんです!それでちゃんと紗良ちゃんには挨拶しとけってちーちゃんが・・しないと怖いからって!」
それを聞いてボクは無意識に目が真ん丸になってしまった
えっ?撮影だけじゃないの?結月転入してくるの?
あの変態校長め・・
好き勝手に権力を振りかざしやがって・・!
頭にきたぞ!卒業までにあの校長を骨抜きにしてやる・・!
そんなことを考えていると女帝紗良が笑顔を見せ話しだす
「ほう?それは千秋の擁護かな?まぁいいわ、結月ちゃんもこの学校に来たら千秋とまとめて可愛がって調教してあげるね!二人共拒否権はねぇからな・・?返事は!」
その声にビックリしてボクと結月は大きな返事をすると抱き合いながらフルフルとバイブレーションして暫く紗良の説教を聞かされることになった