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妖奇譚~怪異の来る探偵事務所と、人間をやめかけた男~ ※次回更新5月  作者: Tomato.nit
空の器

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代金


 零課の解析室に戻った頃には、庁舎の外の夜が少しだけ薄くなり始めていた。


 昼の残り香をまとっていたショッピングモールの屋上から、夜明け前の公安零課へ。移動した距離はそれほどでもないはずなのに、綾戸にはずいぶん遠くまで戻ってきたように感じられた。人で満ちていた場所が夜になって空き、そこで怪異の力が売られていた。その事実が、まだ煙草の匂いよりもしつこく服に残っている。


 解析室の中央には、鈴が煙で包んだ黒い玉が置かれていた。


 透明なケースの中に、さらに塩と鉄粉で円が描かれ、その中心で怪玉は小さく沈黙している。光を吸うような黒い表面には、先ほど屋上で広がった赤い布の気配はもう見えない。だが、ただの石ではないことは、その場にいる誰にでも分かった。室内の空気が、玉の周囲だけ少し重い。


 三枝裕也は別室にいる。保護という扱いだが、事情聴取は避けられない。彼は怪貨連の構成員ではない。だが、怪異の力を買い、使った。その結果、誰かを傷つける可能性があった。


 被害者であり、同時に加害の入口にも立っていた。


 その分類の難しさが、いかにも怪異絡みだった。


 綾戸が解析室へ入ると、竜胆はすでに待っていた。机の端には資料が数枚、三枝の簡易プロフィール、モールの見取り図、そして回収した怪玉の写真が並んでいる。壁際には奏灯が立ち、丸い着ぐるみの頭を少し傾けながら、怪玉の入ったケースを見ていた。


 そして、部屋の隅には朔夜がいた。


 腕を組み、壁に背を預けている。いつも通り凛とした姿勢ではあるが、その目は明らかに不満を含んでいた。


 綾戸がそれに気づいて視線を向けると、朔夜はじとりとした半眼でこちらを見た。


「我を番犬扱いとは。随分と偉くなったものよ。のう、主様」


 わざとらしく“主様”と呼ばれ、綾戸は片眉を上げた。朔夜との契約は今となっては形骸化している。それでも、こういう時だけ律儀にその関係を持ち出してくるあたり、朔夜らしいと言えば朔夜らしい。


「仕方ねぇだろ。人間を追っかけるにしても、怪異を追っかけるにしても、お前は目立ちすぎるんだよ」


 綾戸はコートの襟を直しながら、ため息まじりに続けた。


「人間相手には綺麗すぎるし、怪異相手には気配が強烈すぎる。昼間のショッピングモールにお前を連れて歩いたら、別の意味で人目を引く。夜の屋上に連れていったら、怪異の方が先に逃げる」


 朔夜は鼻を鳴らした。


「ふん。言っておれ」


 そう言いながらも、口元はわずかに緩んでいた。褒め言葉として受け取るには不満が残るが、否定するほどでもない。そういう顔だった。


 綾戸がそこを見逃さず、何か言い足そうとしたところで、竜胆が紙束を机へ軽く叩きつけた。


「惚気は後にしろ」


 解析室の空気が一瞬だけ止まる。


 綾戸は竜胆を見た。


「どこをどう聞いたら惚気になるんだよ」


 竜胆はまったく表情を変えない。


「俺にはそう聞こえた」


 朔夜はふいと顔を逸らし、鈴はわずかに口元を押さえた。奏灯は何か言いかけて、やめた。こんがここにいれば大喜びで茶々を入れていただろうが、今は別室で鈴に頼まれた雑用をしている。


 綾戸は深く息を吐いた。


「……で、怪玉の話だろ」


「そうだ」


 竜胆は短く答え、透明ケースを指差した。


「三枝裕也は怪貨連の構成員ではない。現時点では買い手、あるいは利用者だ。供述もその線と矛盾しない」


「半分は被害者だろうな」


 綾戸はケースの中の黒い玉を見た。


「ただ、被害者だけで済ませるには危うすぎる。あのままなら、本人も誰かも怪我してた」


 竜胆は頷いた。


「同情する余地はある。だが、怪異の力を買って使った事実は消えない。そこは別に扱う」


「警察らしい線引きだな」


「必要な線引きだ」


 竜胆の声は淡々としていた。冷たいのではない。ただ、崩せばすべてが曖昧になることを知っている声だった。


 鈴がケースの前へ進み、巡煙簫を取り出した。彼女の表情は静かだったが、いつもの穏やかさだけではない。黒い玉を見る目に、抑えた怒りのようなものが宿っている。


「開けます。直接触れないでください。今は煙で封じていますが、何かの拍子に反応する可能性があります」


 竜胆が頷く。綾瀬が記録用の端末を構え、奏灯は少しだけ壁際から離れた。


 鈴が巡煙簫を唇に当てる。細く低い音が解析室に流れた。白銀の煙がケースの内側へ滑り込み、怪玉を柔らかく包んでいく。赤い気配はすぐには出ない。ただ、煙が玉の表面に触れるたび、黒い外殻の内側で薄く赤が滲んだ。


 鈴は息を止めるように、その反応を見た。


「これは、赤マントではありません」


 言葉は静かだった。


 だが次の一文で、声の奥に微かな痛みが混じる。


「でも、赤マントだったものです」


 室内が静まり返った。


 綾戸はゆっくりと綴桴を取り出す。ケースの上からではなく、鈴の煙が少しだけ隙間を作ったところへ、慎重に先端を近づけた。


「触るぞ」


 鈴が頷く。


「お願いします。ただし、強く叩かないでください。壊せば、中の力がどう出るか分かりません」


「分かってる。昨日も壊さずに止めた」


 綾戸は綴桴の先を、黒い玉の表面へほんの少し触れさせた。


 その瞬間、耳の奥に音が入ってくる。


 声ではない。


 赤い布が擦れる音。何かが引き裂かれる感触。遠くで繰り返される壊れた問い。


 赤。


 青。


 選べ。


 だが、それは生きた声ではなかった。録音された言葉を切り刻み、無理やり繋ぎ直したような残響。そこには意思がない。怖がらせようという衝動もない。ただ、そういう機能だけが残っている。


 綾戸は綴桴を離し、しばらく黙っていた。


「声じゃねぇな」


 やがて低く言う。


「録音を切り刻んで貼ったみたいな残り方だ。赤マントの形をしてるのに、赤マントはいない。問いだけが残ってる」


 鈴の指が、巡煙簫を握る手の上でわずかに強くなる。


「人格が削られているのですね」


「ほぼな。残ってるのは、力と癖と、使われた跡だけだ」


 朔夜がケースを見下ろし、静かに言った。


「怪異を布のように裁ったか」


 その言葉に、鈴の目がかすかに揺れた。


「……この縫い方、似ています」


 綾戸は鈴を見る。


「仕立てか」


 鈴はすぐには頷かなかった。ケースの内側で揺れる煙と、黒い玉の外殻に浮かぶ微細な術式を見つめている。


「断定はできません。ですが、赤マントの時に見たあの方の術式に近いです。力の端を縫い留めるようにして、外殻へ固定している。普通の封印とは違います。これは閉じ込めるためではなく、取り出して使わせるための縫い方です」


 綾戸は舌打ちをしそうになり、堪えた。


「嫌な縫い方だな」


「はい」


 鈴は静かに答える。


「嫌な縫い方です」


 その声音は穏やかだった。けれど、柔らかいだけではない。怒りが、丁寧に畳まれている。


 綾戸は鈴の横顔を見た。


「無理すんなよ」


 鈴は首を振る。


「無理ではありません。怒っているだけです」


 その一言に、綾戸は何も返さなかった。鈴が怒るときは、声を荒らげない。その代わり、引かない。赤マントだったものを、こんな形にされた。その事実を、彼女は静かに受け止め、静かに怒っている。


 竜胆が記録を取っていた綾瀬に視線を向ける。


「解析結果は保存しておけ。証拠能力云々は後で考える。今は、仕立ての痕跡として扱う」


 綾瀬が頷いた。


「了解です。ただ、これを正式な物証にするには説明が大変ですね」


「いつものことだ」


 竜胆は短く言った。


 そのとき、部屋の隅にある椅子から、ぬらりひょんの男が小さく笑った。彼はまだ拘束されている。鈴の符と朔夜の監視、奏灯の未来視。その全部に囲まれながら、それでも会話へ割って入るだけの余裕は残していた。


「これはこれは。現物を持ち帰りましたか」


 綾戸は男を睨む。


「知ってる顔だな」


「ええ。あまり好きな品ではありませんが」


「怪貨連の人間が、それを言うのかよ」


 男は薄く笑う。


「怪異を道具にすることには異論はありません。ですが、あれは少々、品がない」


 綾戸の目が冷える。


「品の問題かよ」


「ええ。道具にも加工にも、作法というものがあります。何を削り、何を残し、どのように扱うか。そういうものを無視して、機能だけを取り出す。あれは便利ですが、荒い」


 朔夜が不快そうに眉を寄せる。


「同じ穴の狢が、作法を語るか」


 男は肩をすくめた。


「一枚岩ではないと申し上げたでしょう。怪貨連には色々おります。怪異を尊重する者もいれば、材料としか見ない者もいる。どちらも結論としては道具にするわけですが、その過程に好みは出るものです」


 竜胆が低く問う。


「仕立てはどちらだ」


 男はすぐには答えなかった。


 その沈黙が、答えの一部だった。


「彼は、綺麗にすることに執着している」


 やがて、男はそう言った。


「怪異も、人間も、形を整えれば使いやすくなる。そう考える類の人間です」


 鈴の表情がわずかに強張る。


 綾戸は煙草が欲しくなったが、解析室で吸うわけにもいかない。代わりに、舌の奥に残る苦味を飲み込んだ。


「三枝の話を聞くぞ」


 竜胆が立ち上がった。


 別室での事情聴取は、長くはなかった。


 三枝裕也は消耗していた。怪玉を手放したことで、ようやく緊張の糸が切れたのだろう。椅子に座り、両手を膝の上で握りしめている。顔色は悪く、目の下には濃い影がある。


 竜胆が正面に座り、綾戸は壁際に立った。鈴も同席しているが、直接問い詰めるつもりはない。彼女は怪玉の反応を見た者として、必要があれば補足する役だった。


「三枝裕也」


 竜胆の声は淡々としている。


「お前が買ったものは、怪異由来の力だ。普通の護身具ではない」


 三枝は唇を噛んだ。


「分かってます。いや、分かってなかったんだと思います。でも、必要だったんです。会社で、ずっと……近づいてくる奴がいて、断っても笑われて、相談しても大げさだって言われて」


 言葉は途切れ途切れだった。だが、嘘をついているようには見えなかった。


「誰かを傷つけるつもりはなかった。近づくなって言ってほしかっただけなんです。俺の代わりに。俺が言っても誰も聞かなかったから」


 綾戸は黙って聞いていた。


 弱さにつけ込まれたのだろう。そこには同情の余地がある。だが、それは怪異の力を買って使っていい理由にはならない。


 竜胆も同じ線を引いた。


「同情する余地はある」


 少し間を置く。


「だが、だからといって怪異の力を使っていい理由にはならない。お前が制御できないものを持った結果、周囲の人間にも危険が及んだ可能性がある」


 三枝はうつむいた。


「……はい」


「誰から買った」


「顔は見てません。夜の屋上で、スマホ越しに指示されて、置かれていた封筒を取っただけです。中に玉が入っていて、使い方も書いてありました」


「代金は」


 三枝の肩が震えた。


「金じゃ、ありませんでした」


 竜胆の目が細くなる。


「何を払った」


「使ったら、話せって言われました。怖かったことを誰かに話せって。赤い布が出たこと、近づいてきた相手が逃げたこと、それを怪談みたいに広めろって。それで代金は十分だって」


 室内が静かになった。


 竜胆はすぐには言葉を返さない。綾戸も同じだった。


 金ではない。物でもない。恐怖を語ること。


 それを代金と呼ぶ意味が、まだ完全には掴めない。だが、ひどく嫌な方向を向いていることだけは分かった。


「紹介された経路は」


 竜胆が続きを促すと、三枝はスマートフォンのメッセージアプリや匿名掲示板、使い捨てのチャットリンクについて話した。どれも追跡されにくい。だが、完全に手がかりがないわけではない。


 竜胆は必要な情報を聞き終えると、三枝を別室で休ませるよう指示した。


 会議室へ戻ると、ホワイトボードにはすでに綾瀬が要点を書き出していた。


 怪玉。


 買い手。


 代金――怪談の拡散。


 その三つの文字を前に、全員がしばらく黙った。


 綾戸が最初に口を開いた。


「金じゃなくて、話せってのが気持ち悪い」


 竜胆は腕を組み、ホワイトボードを見た。


「宣伝か」


「怪異の宣伝ってなんだよ。いや、言葉としては分かるが、分かりたくねぇな」


 鈴が静かに言う。


「怪異は、語られることで強くなるものがあります。恐れられ、想像され、噂として広がることで、形を保つものも」


 朔夜が目を細める。


「恐怖を代金にするなら、売り手は金とは別のものを集めておることになる」


 奏灯が、ホワイトボードの文字を見たまま小さく言った。


「怖い話が増える未来は、少し見える」


 その一言で、部屋の空気がまた重くなった。


 綾戸は頭を掻く。


「嫌な商売だな。怪異の力を売って、使わせて、その恐怖をまた広めさせる。売り物が力なのか、噂なのか分からなくなってくる」


 拘束席の方から、ぬらりひょんの男の声がした。


「お気づきですか?」


 綾戸が睨む。


「何にだ」


 男は穏やかに笑った。


「怪異の力を売るだけなら、金を取ればいい。けれど、彼らは恐怖を語らせている」


 少し間を置く。


「さて、それは誰の利益になるのでしょうね」


 誰もすぐには答えなかった。


 答えの輪郭は、まだ暗い場所にある。


 だが、その暗さの向こうに、単なる金儲けではない何かがあることだけは、もう見えていた。


 それから少し後、綾戸は庁舎裏の喫煙所にいた。


 ようやく煙草に火をつけることができた。細い煙が夜明け前の空気へほどけていく。屋上では吸えず、解析室でも吸えず、会議室でも吸えるはずがない。結局、ここまで来てようやく一服だ。


 足音がして、鈴が隣に立った。


「吸えましたね」


 鈴は少しだけ呆れたように、けれどいつもの穏やかさを崩さずに言った。綾戸は煙草を指に挟んだまま、庁舎の裏手に広がる薄明るい空を見上げる。


「ようやくだよ。最近、煙草一本吸うのにも許可がいる気がする」


「条例で決められていますから。吸える場所で吸ってください」


「はいはい。優等生みたいなこと言うようになったな、お前」


 綾戸は軽く返したが、そこで話を続ける気にはならなかった。煙を吐く。白い筋が夜明け前の空気へ伸び、ほどける。喫煙所の簡素な灰皿、庁舎の裏口、まだ動き始めていない駐車場。そのどれもが、妙に現実的だった。


 だからこそ、三枝の顔が浮かんだ。


 疲れきった目。握りしめた黒い玉。誰にも聞いてもらえなかったと言った声。


「三枝のこと、どう思いましたか」


 鈴が静かに尋ねた。責める声ではない。ただ、綾戸が何かを飲み込んだままでいることに気づいている声音だった。


 綾戸はすぐには答えなかった。煙草の先を灰皿の縁に軽く当て、灰を落とす。


「馬鹿だとは思う」


 それから、少しだけ間を置いた。


「怪異の力なんてもんを買って、どうにかなると思った。そこは馬鹿だ。あのまま使い続けてりゃ、本人も周りも巻き込んでた」


 鈴は黙って聞いている。


 綾戸は煙草を口に運びかけ、途中で止めた。


「でも、笑えねぇんだよな」


 声は少し低かった。


「俺も、こっち側に足を踏み込んだ頃は、別に格好いい理由があったわけじゃない。社畜やって、毎日同じような顔して、同じような電車に乗って、同じように心を削ってた。自分が何を嫌がってるのかも、何に怒ってるのかも分からなくなって、ただ擦り減ってた」


 綾戸は自嘲するように笑った。


「怪異の世界に足を突っ込んだのだって、英雄願望なんかじゃねぇよ。半分は逃げだ。こっち側なら、自分がまだ何かを見てるって思えた。少なくとも、見えないふりをして毎日をやり過ごすよりはましだった」


 鈴の表情がわずかに変わる。彼女は何か言おうとして、けれど言葉を選ぶように少し黙った。


 綾戸は先に続けた。


「だから三枝が、誰かを遠ざける力が欲しかったって言ったのは、分からなくはない。自分で言っても届かない。助けを求めても大げさだって笑われる。そういうところに、都合のいい力を差し出されたら、人間は手を伸ばす。俺だって、一歩間違えばああなってたかもしれねぇ」


 煙草の火が、指先の近くで赤く灯る。


「違うのは、俺がたまたま怪異を道具として買う側に行かなかったってだけだ。運が良かったのか、悪かったのかは知らねぇけどな」


 鈴はゆっくりと息を吐いた。


「だから、三枝さんを切り捨てきれないのですね」


「切り捨てはしない」


 綾戸は即答した。


「でも、甘やかしもしない。あいつは弱ってた。そこに付け込まれた。それは事実だ。けど、怪異の力を握ったのも事実だ。弱かったから無罪、なんて話にしたら、怪貨連の思う壺だろ」


 鈴は小さく頷く。


「弱さを責めずに、選んだことの責任は見る。難しいですね」


「難しいから、探偵なんて面倒な仕事になるんだよ」


 綾戸はそこでようやく煙草を吸った。煙が肺に入り、ゆっくりと吐き出される。


 しばらく、二人は黙っていた。


 夜明け前の空は、少しずつ青みを帯びている。


 綾戸はふと、解析室の黒い玉を思い出した。


「赤マントだったもの、か」


 鈴は静かに頷いた。


「はい。あれを、ただの道具として使った人がいる」


「使った人間だけじゃねぇ。作った奴がいる」


 綾戸は煙をゆっくり吐いた。白い煙が夜気にほどけ、すぐに消える。


「仕立てを見つけるぞ」


 鈴は隣で、まっすぐ前を見た。


「はい」


 その返事は短かったが、迷いはなかった。


 煙は夜気にほどけて消えていった。


 だが、赤い布の残した嫌な手触りと、三枝の疲れきった目だけは、まだ綾戸の中に残っていた。


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