愛するものと一緒にて他(人)のことを考える(時)3
「どうぞ、わたくしをさしだしてくださいませ」
王妃は言った。
隣の王は無言で下を向いている。
「陛下」
と数段、低い場所にいる男が言った。
「ヌエイワラント大臣、申せ」
王よりもはやく王妃が返事をした。
「恐れ多くも陛下」
大臣は王妃を無視するように喋り始めると王妃は不満気に腹をたたいたので、そのせいで子宮が揺れて画像と音声が乱れた。
「ヌー□教信徒たちは□信的で話し合いが通じ□相手ではございません。故に、王妃陛下の申し出はまことに嬉しい限りですが」
王妃が明るい顔をした途端、それをあざ笑うかのように大臣は慇懃に話を続けた。
「今朝、ヌーア教信徒会の使者が、もはや王妃陛下の御身は不要、との知らせをもってまいりました。必要なのは、ただその亡骸のみ、と」
以上は王妃の記憶から僕が再現した寸劇なわけだが、国母としての立派な王妃としての表の姿。
で、今、耳にしているのは裏の顔というか、本音というわけか。
「話が違わよ」
「どうなってるの?」
「あの人は!?」
「何言ってるのよ、この子の父親よ!!」
「死んだ?!」
「・・・・・・」
魔法?で敵で会話か・・・。
あー、この女、要するにビッチだったわけか。とすると、この戦争の発端もこの女にありそうだな。
「このっ!」
と王妃は豪奢な絨毯をけった。
どうやら、この時代、王族の処刑方法は絨毯に包んで死ぬまで蹴り続けるらしい。
絶望して自らの棺と化すはずの絨毯に崩れ落ちた王妃に、僕はいい機会を得たと思い、話しかけた。
「ねぇ、おかあさま」
と、幼子の声色で。
「しなないで」と。