それぞれの思い
「おーい」
シフォンの後ろから、スキンヘッドで、左目に大きな火傷の跡を持つ、大柄な体格のグレカロイドが手を振りながらやってきた。グレカロイドは、ここら一帯で取り引きされる商品を取り仕切る仲介業者だ。そのため、顔が広く、皆の兄貴的な存在である。グレカロイドは、なにやら肩に大きな袋をかけていた。
「あ、グレカロイドさん」
クレアが立ち上がり、手を振って応えた。それと同時にシフォンも振り返り、手を振った。グレカロイドは二人のそばまで来ると、肩の重そうな荷物をゆっくりと下ろした。
「ふう・・・。10日分の食料を買ってきたぞ。これで、ライン伯爵に届ける、ルストック・アルファロメオRJの納品にゆっくりと備えることができるな。」
「そ、それが・・・」
グレカロイドが、買ってきた肉や魚を出しながら聞いた。すると、シフォンが言いづらそうに言った。
「実は・・・使えそうな部品を探しに廃棄物埋め立て地まで行ったんですが、探している途中に上から突然、無人のスーパーカーが落ちてきて、お姉ちゃんに襲いかかったんです。でも、お姉ちゃん、強いからありったけの魔力を使ってそのスーパーカーをなんとか止めたんですけど・・・お姉ちゃん、10日分のの魔力を使っちゃったみたいで・・・。それで、試運転が出来ない状態なんです。」
「何!怪我はなかったのか?」
グレカロイドは、クレアの肩に手を置いて言った。
「は、はい・・・」
クレアが答えた。
「本当か?魔力をたくさん使ったんだろう?横にならなくても大丈夫なのか?」
クレアは少し視線を外しながら、体をもじもじさせて言った。
「ええ。10日後の納品に間に合わなくなっちゃうんで。少しでも他の作業を進めておかないと・・・。それにしても、私のこと、そんなに心配してくれるんですね」
「当たり前だ。お前の魔法はまだ未熟だが、ロードレーサーだった君らの親父さんの血を受け継いでる。俺は長年、あの人と一緒に名だたる大会を渡り歩いてきた。だからわかる。お前には才能がある。こんなところで怪我でもされたら、死んだ親父さんに顔向け出来ない。」
「そうですか。心配したのはお父さんの方ですか・・・・。」
クレアは、足元にある石を見ながら小さい声で言った。
「ん?何か言ったか?まあ、無事ならそれでいいだが。しかし、試運転出来ないとなると・・・それは少し困ったことになったな。試運転しないとと、どこに不具合があるのかが分からないもんな。もし、走ってみてどこが壊れてて、怪我でもしたってなったら、これはここ一帯の製造元の信用を落とすことにも繋がりかねんしなぁ。」
グレカロイドは肩から手を下ろすと、考えこみながら袋から肉や薬草を取り出し始めた。クレアはまだ少し俯いている。少しの間、その場がシーンとなった。そこから、会話を繋げるようにシフォンが慌ててしゃべりだした。
「それにしても、何であんな所にまだ動くスーパーカーがあったんでしょうね?しかも、無人で動いてたから、魔導レース用だよなぁ。誰かの魔力がまだ残っていたのかな。普通なら、使えなくなっても魔導レース用だったら中のコマンダーを抜いて、それを小さな業者が引き取って、チャイルドカーとして改良して売るはずですよね。あの時はテンパっててそっちには気が向かなかったけど、うーん、動いたってことはまだ使えるのかな?」
どちらかに聞くようにして話すと、グレカロイドが反応した。
「ああ、確かにそうだな。その機体、もしかしたらまだ使えるかもしれないな。動かせなくても、中のコマンダーがクレアの魔力の影響を受けていて、そのストックがあるなら、コマンダーだけ出して使えば、試運転が出来るんじゃないか?」
「確かに!お姉ちゃん、たくさんの魔力を使ったから、まだ残ってるかも。今から行ってみましょうか。」
「そうだな。もう夜だが早く行ってみた方が良さそうだな。俺もついて行くお前の工場にランプ、あるか?」
「はい!あります!お姉ちゃん、グレカロイドさんも行くって。もちろんお姉ちゃんも行くよね。」
シフォンがクレアの袖を引っ張ったりながら言った。
「う、うん」
クレアは少し顔を赤らめながら小さく頷いた。
初めからきちんと設定考えておけば良かった。ノリで始めてしまうと、後に引けない。




