No. 96 関わってはいけない
「一通り回って見たが••••••特に怪しい奴らは見つからなかったな」
日が暮れ始めて来た。
オレは空を見上げ伸びをする。
「疲れたな••••••冷やかしに対する対応に」
街を回っている最中、スピカの知り合いの住民にデート扱いされまくった。
デートじゃないって言っても聞いてくれないし。
「冗談で言ってると思うから、あまり気にしない方がいいと思うよ」
「わかってないなスピカは。アレは割とマジだ。てか、別にデートだろうがデートじゃなかろうがどっちでもいいんだろうよ」
女性はともかく、男共は全員目が笑ってなかった。
あの目はアレだ。
「例えデートじゃなくても羨ましい。死ね。死んでしまえリア充が!」という嫉妬が込められた目だ。
スピカはこの街でもアイドル的な存在なのだろう。
それをハッキリと理解した。
スピカ自身は特に何も思ってなさそうだがな。
「男の嫉妬は恐ろしいな••••••」
軽く戦慄する。
「誰が嫉妬してたの?」
スピカが不思議そうに首を傾げる。
••••••こいつ、鈍感主人公並みに恋愛ごとに鈍い奴だな。
間違いない。
「まあ、気にするな。大人になればわかるさ」
「••••••それとなくバカにしてない?」
「してない」
呆れているだけだ。
バカにはしてない。
「それにしても見つからないな、不審者」
「そうだね。怪しい人は見かけないね」
「••••••いや、怪しい人自体は大量発生してたけどな」
この街の住民は、基本怪しいというか変なのしかいないのだ。
ハッキリ言ってほぼ全員不審者だ。
スピカが訂正してくれなかったら大変なことになっていた。
「やっぱりわたしがいてよかったでしょ?」
「••••••そうだな」
素直に同意しておく。
「しかし、これからどうするか。街中はほとんど回ったし、捜してない場所はーー」
「ハハハハ!もっと持ってくるのじゃ!」
突如、街中に幼い笑い声が響き渡る。
声の方向を見て、オレは目を疑った。
そこには、紅い和服を着た黒髪の幼女がワインをラッパ飲みしていた。
「美味いの!中々美味じゃな。金ならいくらでもあるのでな、もっと持ってくるのじゃ!」
凄まじい勢いでワインを飲み干す幼女。
顔は真っ赤であるが、酔っているようには見えない。
その豪快な飲みっぷりに近くの人の視線が集まる。
「なんだありゃ••••••」
「凄いね••••••」
オレとスピカも目を丸くする。
が、ここでアダマスがこう言った。
『今すぐここから離れなさい』
何処か焦るような口調だ。
何故だ?
『いいから離れなさい。あの女に見つかる前に!』
何だあの幼女はお前の知り合いか。
••••••。
よし。
「スピカ、行くぞ」
「え?うん••••••」
スピカの手を引く。
戸惑いながらも、スピカは抵抗せずについてきた。
とにかく離れよう。
アダマスの知り合いなんて、どう考えても普通の人間じゃない。
絶対に関わってはいけないと直感が告げていた。
「ん?なんじゃ、懐かしい気配がするような••••••」
背後からそんな声が聞こえてきたので、オレは足を早めた。




