No. 94 さっきのは
「さっきのティアは何だったんだ?」
ティアを屋敷に連れ帰り、眠るのを見届けた後、スピカと一緒に街の中心部に戻って来た。
「ティアじゃないような感じだった、か••••••」
スピカが首を傾げる。
まあ、何を言ってるかわからんだろうな。
と思ったが、違ったらしい。
「もしかして、目が虚ろになったり、自分のことを私って言ってたりしてた?」
「ああ、そんな感じだったけど••••••何か知ってるのか?」
ちょっと期待を込めて聞いたのだが、スピカは首を横に振った。
「詳しいことは何も。ただ、昔から、時々ティアがそんな感じになることがあったから」
そうなのか?
昔からねぇ。
「何か、共通点とか無いのか?ティアがあんな感じになるのには」
さっきは••••••何だろうな。
人間の身分的な話が原因になったのか?
「うーん、あまり詳しいことは覚えてないんだよね••••••」
苦笑しながらスピカが頬をかく。
「ごめん、わからないや」
「そうか••••••」
となると原因は不明だな。
オレとの会話だけじゃ、断言は出来ないし。
「アダマスは何か気付いたこととかあるか?」
人間じゃないアダマスの目から見たらどうだったか、と聞きたかったのだが••••••。
『••••••』
「アダマス?」
返事は返って来なかった。
返って来たのは沈黙だけ。
「アダマス、聞こえてるか?」
オレが右手の紋章にデコピンする。
いや、そんなことをしても意味は無いと言うか、むしろオレの方にさり気ないダメージが入るわけなのだが、そんなマヌケなことを悟らせるわけにはいかない。
『もう遅いわよ。何やってるのよあんた。バカなの?バカなんじゃないの?』
二回も言うな!
てか、しっかり聞こえてるのかよ!
『まったく。••••••考え事してたのよ。少しは静かにしなさいよ』
それはすまなかったな。
で、何考えてたんだ?
それよりティアの様子をお前はどう思う?
『質問した瞬間にそれよりってどうなのよ。まあ、いいわ。私が考えていたのはティアのことよ。あの状態について、私なりに考えていたの』
へぇ、それでどんな結論が出た?
『••••••ごめん、確証が得られるまでは聞かないでもらえる?ちょっと自分自身でも信じられないし』
んーわかった。
じゃあ、確証を得られたら話せよ。
『ええ、約束するわ』
「シュウヤ、アダマスは何か言ってた?」
会話をやめたタイミングでスピカが声をかけてきた。
「確証を得られるまでは聞かないでくれってさ」
「そっか••••••まあ、今は不審者を捕まえることを考えよう」
「お前は案内役だからな?わかっているのか?」
スピカはあはは、と笑う。
••••••わかってなさそうだな。
ちょっとお説教かな?
『(そう、あり得ない。いくらなんでもそんなことは)』
ん?何か言ったかアダマス?
『いいえ、何も』
ふぅん。
オレはそれ以上は聞かず、スピカを追いかけた。




