No. 86 フォルティシモ領へ
突然だが、オレ達は今、馬車に乗っている。
「風が気持ちいいよ、お兄ちゃん」
「んー、そうか。たまにはいいかもな、こういうのも」
馬車の屋根に出ている真冬に返事を返す。
ついでに、落ちるなよー、と言っておく。
「••••••あの街に行くのも、久しぶり」
「懐かしいよな。ガキの頃はよく行ってたもんだがな」
ティアとクレイが懐かしそうに、目的地に想いを馳せている。
現在、馬車に乗っているメンバーは、オレ、リオン、真冬、ティア、スピカ、マイクさん、アストレアさん、クレイ、アインス、ツバキさんというメンツ。
割と人数がいるので、二手に別れている。
オレ達は現在、フォルティシモ家の領地に向かっている。
そうなった理由は、数時間前に遡る。
「お前たちには、ラウトに行ってもらいたい」
唐突に、王様がそう言った。
「えーと、何でですか?」
確か、ラウトはフォルティシモ家の領地にある街だ。
前にスピカに聞いた。
ギシリヤの中では、公爵家が管理しているだけあって大きい街で、音楽家が多いとかなんとか。
「一つは、ラウトの近くにダンジョンがあるからだ」
ダンジョンの場所が書かれた地図を見てみると、確かに近くにダンジョンがある。
しかし、一つと言ったからには他にも理由があるのだろう。
「他の理由は何ですか?」
「それなんだがな。詳しい話はマイクに聞いてくれ」
と言われ、みんなでフォルティシモ家に。
行ってすぐに帰るって、ちょっと微妙な気持ちになってしまうのはオレだけだろうか?
まあ、とにかくフォルティシモ家に戻り、マイクさんに話を聞く。
「実は最近、ラウトに不審者が多発してるらしくてね。ダンジョン攻略のついででいいから、捕まえるのに協力して欲しいんだ」
とのこと。
フォルティシモ家は、有している騎士団の規模があまり大きくないらしいのだが、そのツケがここで回って来たのだろう。
大きな街なんだから、騎士団の規模も大きくすればいいのに、と思ったが、領主にも色々あるんだろう。
オレは何も言わないでおいた。
ということがあり、オレ達はラウトに向かっている。
一部は観光目的な奴がいるが、気にしないことにした。
「久しぶりにお姉ちゃんに会うの、楽しみだなぁ」
スピカが懐かしそうに笑っている。
「スピカのお姉さんって、どんな人なんだ?」
ちょっと気になって聞いてみる。
「んー、そうだね••••••お母さんにイタズラ心が加わった感じかな?」
何それヤバイ。
混ぜるな危険の香りがプンプンするぜ。
「まあ、基本的に優しいよ」
「そうか」
スピカの顔を見る限りは本当のことなんだろう。
多分、大丈夫だと思うんだけど••••••。
••••••アストレアさん+イタズラ心か。
アストレアさんがそもそも、割とイタズラ好きなところがあるし••••••。
オレ、いじり倒されそうな気がするんだけど。
大丈夫、だといいな。




