No. 21 要注意貴族
「••••••」
アアアア、来ちゃったぜこの時が!
いや、一日しか経ってないんだけどね!
目の前には大きなお城。
王様が住む、王城である。
ヤバイヤバイヤバイ。
メッチャ緊張してきた!
「シュウヤ?緊張してるの?」
「当たり前だろ••••••」
キョトンとした顔のスピカに即答する。
今一緒にいるのは、スピカとマイクさんだけ。
リオンはいない。
あいつは仕事中だ。
ぶっちゃけ、リオンを説得するのに体力をかなり持っていかれた。
「私もついて行くんだ!」と暴れそうになったリオンを宥めるのは、中々に重労働だった。
そして、ここに来る前の「浮気するなよ(意訳)」という言葉とリオンの視線が怖かった。
「まぁ、この国の王様はいい人だから、シュウヤ君もすぐに緊張しなくなるさ」
マイクさん、相手の性格と緊張は関係ありませんよ、多分。
むしろ、あまりいい人過ぎると余計に緊張する気がする。
「いつまでも門の前に立っているのもなんだし、早く中に入ろうか」
いえ、ゆっくりで構いませんから!
オレのそんな思いは伝わらず、オレはスピカに背中を押されて王城に入ることになった。
「じゃあ、わたしはあの娘に会ってくるからまた後でね!」
城内で、スピカはそう言って早々に別行動をとった。
ああ、頼りになる••••••わけでもない気がするが、相手が一人いなくなってしまった••••••。
「まぁまぁ、王様との話はむしろスピカには聞かれたくないんじゃないか?」
「••••••それもそうですね」
スピカには、オレが異世界から来たことなんかは言ってない。
理由としてはタイミングを逃したからだ。
これはかなり重要なことである。
いずれは言う機会に恵まれると信じよう。
まあ、つまりはそのことを考えれば、むしろスピカがいないことは好都合ではある。
「じゃあ、行こうかーー」
そう言って、マイクさんが足を踏み出そうとした時。
「おやおや、マイク殿ではありませんか」
前方から、一人の男がやって来た。
「ラドゥン殿」
マイクさんは、男の名前を呼び、軽く一礼する。
男も一礼した後、細い目でチラリとオレを見た。
「そちらの方は新しい執事ですかな?やれやれ、貴方の家系は酔狂な人物が多いですなぁ」
いきなりの暴言。
「ハッハッ、執事を雇っただけで酔狂ですか」
「いえいえ、執事を雇ったことにではなく、雇った執事の出生のことですよ。具体的には、何処の誰だかわからない馬の骨ばかりを集めることなど」
随分と失礼な奴だな。
だが、耐えろ。
相手は貴族のようだし、こういう奴はマトモに相手にするだけ時間の無駄だ。
言いたい奴には言わせておけばいいのだ。
「ま、そういうことは他家が口を挟むことでもありませんが」
散々言っといてか?
「では、私はこの辺で失礼します」
立ち去る男。
言いたいことだけ言って去りやがった。
「マイクさん。何なんですか、あいつ」
「彼はラドゥン・ニュー・ポイソン。フォルティシモ家と同じ、公爵貴族の家系だよ」
あんな奴が公爵か。
あれか、性格はともかく、能力は優秀な奴なのかもしれない。
まあ、違うかもしれないが、今見た感じだと、オレの苦手なタイプだな。
「正直、何を考えているかよくわからなくてね。王様もちょっと警戒しているようだよ」
王様からも警戒される、か。
オレも、少しは警戒しておこうか。
意味は無いだろうけど。
「それより、急ごうか。まだ時間はあるが、王様を待たせるわけにはいかないからね」
それもそうか。
オレはひとまず、ラドゥンのことは置いておくことにした。
そして、少し早足のマイクさんについて行ったのだった。
・マッドドック
魔物。泥犬。雑魚のくせに倒しにくい魔物なので嫌われている。一方的に狩られて、一方的に嫌われる可哀想な奴ら。




