No. 197 薬
「ところで薬は出来たのか?」
考えてもわからないことは潔く放棄して次の話題を口にする。
というより、元々の目的に戻る。
オレの記憶を取り戻したことなんてオマケだオマケ。
今回重要なのはスピカだけだ。
「安心するといいよ。とっくに完成しているから。ちなみに完成品はご本人の目の前です」
その言葉に従ってスピカの方を見ると、スピカの前にヤ○ルトのような容器に入った深緑の液体があった。
……。
「……それが薬なのか?」
「うん。飲みやすいように液体にしたんだよ」
飲みやすい?
見た目がグロくて逆に飲みにくいんじゃないか?
あ、スピカの顔が青ざめている。
オレの方を見て口をパクパクさせるスピカ。
えっと、これは口パクで何かを伝えようとしているのか?
何々……『タスケテ』?
「……」
どうやら助けを求めているらしいが、オレにはどうすることも出来ん。
オレは無言で首を振る。
良薬は口に苦し。
これはスピカのためだ。
オレは心を鬼にする。
スピカは絶望した!
「ちなみに、薬が切れたらまた取りに来ないといけないのか?」
「当然じゃないか」
「ですよねー」
いや、わかっていたけどね。
またここに来ないといけないのかと思うと……。
「まあ、流石に迷路に最初から挑めというのは可哀想だから、ここまで直通で来れるようにはしよう」
「そうじゃなけりゃ、来る気失せるわ」
それでもなんだかんだ言って来そうだけどな。
「ああ、一応君にも教えておくが、薬は夜、寝る前に服用すること。彼女だけでは忘れてしまう可能性もあるから、君にも伝えておくよ」
「夜寝る前にこれを飲むって……」
どんな拷問だ。
明らかに寝苦しくなるだけじゃん。
可哀想に。
「嫌なら飲まなければいい。ただし、夜は君が相手をしなければならなくなるがね。まあ、一回やったなら変わらないさ。貴族の純潔を奪ったのなら、どのみち結婚するのだろう?なら、特に問題があるわけでもないと思いよ」
「……だ、そうだが、どうだスピカ?」
「ええっと、問題はあると思うよ?そりゃ、わたしが原因ではあるけど、シュウヤに責任を取ってもらうのは多分確定ではあるけど……」
「……まあ、オレはスピカの意思を尊重するから」
会話を終わらせてコーヒーを飲み干す。
そして、無言でおかわりを要求したところで、眠っていた二人が身じろぎした。
どうやら、そろそろ目を覚ますらしい。




