No. 195 秋矢の記憶13
遅れて申し訳ありませんでした。暑くて頭が動きませんでした。今後も、夏の間はこういうことがあるかもしれません。
『ーーこんな極上の獲物を逃がすわけがないだろう?』
部屋の中に、唐突に謎の声が木霊する。
男にも女にも、子供にも老人にも聞こえる、あるいはそれら全てが混じったような声が。
慌てて辺りを見渡すが、それらしい人物は何処にもいない。
が、叔母さんには心当たりがあるらしい。
苦々しい顔で舌打ちする。
「……まさか、貴方まで動いているなんて」
『予想外だったか?無限図書館の価値を考えれば不思議でもないだろう?だが、私も私自身が動くになるとは思わなかった。それもこれも、あの二人が不甲斐なかったからだ……とは言えぬか。相手はクルミナル、それもやる気がないくせに強いと評判の『怠惰』だ。ただでさえ今世紀の新参者は化け物揃いだしな。そこの二人も含めて、この世代の子供は異常な資質を持つ者だらけだな』
感情が全く篭ってない平坦な口調が怖い。
何もかもどうでもよさそうな、まるで自分以外は全てゴミだと思ってそうな見下した感が声を聞いただけで伝わってくる。
「……そんな人たちが相手だろうとまるで眼中に入ってないような化け物が何を言っているのかしら?」
『それは褒め言葉だな。私達を化け物だと思うのなら、それだけ私達の力が強いことを証明出来るということなのだから』
そんな会話を交わしている間に、夏夢の手がコッソリと動く。
が、
『余計な真似はするな管理者』
「くっ……!?」
床に沈みそうな勢いで夏夢の手が抑えられる。
どういう仕組みだ、これ。
と、いうか、この状況からどうやって異世界に行けたのオレ?
記憶の回想だからか、時間の流れが速く感じる。
おかげで全くついて行けない。
……単純に超展開過ぎて混乱しているだけかもしれないけど。
『さて、それではサッサと終わらせてしまうか』
何故か床が歪み始めた。
なんだこれ?
まさか地面に吸い込まれたりするのか?
あり得そうなのが怖いんですけど!
「くそ、どうしたら……」
夏夢が唇を噛みながらつぶやく。
しかし、身体は動かない。
夏夢でもどうにも出来ないって、本当にどうなるんだ?
そう思ったが、これは超展開が相次いだオレの記憶。
更なる超展開が起こる。
『やれやれ、仕方ないね』
よくわからん声と違い、明確な少女の声が聞こえてきた。
『貴様はーー』
『悪いがお邪魔させてもらったよ。ほら、今のうちだ。早く逃げるといい。あまり長時間は持たないからね』
いつの間にかに、オレ達の周りには結界と思わしきものが貼られていた。
多分、結界のはずなんだが、ちょっと違うように感じられて……どっちだ?
「秋矢!」
動けるようになった夏夢がオレを引っ張り、魔法陣の中心に連れて行く。
『待て。クソ、おのれ魔女が……!!』
初めて憤怒に駆られた声を出す謎の存在。
『まあまあ、落ち着くことをオススメするよ』
何処かからかうように笑う魔女と呼ばれた少女の声が響く。
「よし、魔法陣を起動する」
魔法陣が光り、徐々に吸い込まれそうになる。
「ふふ、なんだかんだで上手くいきそうね。秋矢ちゃん、頑張ってね」
「秋矢、落ち着いたら私を呼べ。すぐにそっちにーー」
夏夢が何かを言おうとしていたが、それを最後まで聞くことなく、オレは光に飲み込まれた。




