No. 194 秋矢の記憶12
「やっぱり、夏夢ちゃんも知ってるのね」
「そう言うってことは、本当にリオンなんだな……」
なんとも言えない、複雑そうな顔でつぶやく夏夢。
「一体、どこまで関わっているんだ彼女は」
「さぁね。それはわからないけど、別にわからなくてもいいんじゃないかしら?知らなくても困らないでしょ?彼女は基本お人好しだから、単なる善意だと思うわよ」
「それはわかっている。わかってはいるんだが……」
「もしかして、リオンちゃんのことが苦手なのかしら?」
「いや、そういうわけではない。別に苦手でも嫌いでもない。むしろ、彼女には感謝している。私が無限図書館から抜けてこの世界に来れたのは、彼女のおかげだからな」
「あ、やっぱりそうなのね。無限図書館の管理者が早々外に出れるはずないとは思ってたけど、あの子が関わっているなら納得だわ」
何やら納得している様子の叔母さん。
いや、誰なんだよリオン。
「この魔法陣も、彼女が関わっているなら安心か。それで、今すぐに起動するのか?」
「ええ」
「……真冬はどうする?正直、秋矢が突然いなくなった時に真冬の反応なんて考えてたくもないぞ」
「それには同意するわ。でも、問題無いでしょ?」
「と、言うと?」
「どうせ転移先で落ち着いたら、秋矢ちゃんは真冬ちゃんを召喚するわよ。真冬ちゃんはブラコンだけど、秋矢ちゃんも相当のシスコンだから、ね」
何でオレはさっきからディスられてんだ。
名誉毀損で訴えたら勝てるんじゃなかろうか?
正直、何か言い返せよ過去のオレと思わないでもない。
まあ、言い返さないだろうけど。
「召喚って……秋矢はそんなこと出来ないだろ?」
「と、思うわよね。まあ、秋矢ちゃん、一応は『普通』の人間だからね。そう思うのも当然よね」
随分と意味深である。
特に、普通を強調するところが。
夏夢もそれを感じ取っているようで、怪訝な顔をしている。
「秋矢は普通の人間じゃないと?召喚士の才能でもあるのか?それなら確かに普通じゃないというか、この世界では珍しいというか……」
この世界では珍しい?
ちょくちょくわからないことを言っているんだが、誰か説明して欲しい。
「んーまあ、そう思っておけば問題無いわ」
気になる言い方を繰り返す叔母さん。
いや、お願いですから説明してください……。
「さて、真冬ちゃんは大丈夫だとわかったわね。じゃあ、始めるわよ。夏夢ちゃんも手伝って」
「全然わかってないが、まあ、いい。秋矢を安全圏に飛ばすのには同意する」
そう言って夏夢が足を一歩踏み出した時。
唐突に部屋に空気が重くなり、部屋内にいた人間全員が態勢を崩して倒れ込んだ。




