No. 17 庭師?
「大丈夫ですか皆さん」
変人と話してグッタリしているオレ達に、マシュさんが声を掛ける。
「••••••嵐みたいな女だったな」
間違い無くテトさんのことだろう。
確かにリオンが言う通りだな。
嵐というか、局地的な台風に近い気がするが。
「頑張ってください。この家の人間は大体あんなのばっかりです」
「••••••どういう基準で採用してんですか」
あんなのばっかりって、変人の巣窟じゃないか。
「この家は、他の貴族より遙かに緩いですからね。採用基準なんてものは存在しません。気に入った人がいれば勧誘するような感じです」
そんな職場で大丈夫か?
あんなのが他に四人もいるとか、今から会うのが鬱になってくるな。
「あの、お水、です」
頭に手を当ててグッタリしていると、アインスが水の入ったグラスを差し出してきた。
「さっき、キッチン、で、ユグニ、さん、から、もらい、ました」
「へぇ••••••」
あの人、意外と気が利くのかな?
「ありがとう」
お礼を言ってから水を飲む。
マズイ!
なんてことはなく、普通に美味しい水だった。
「ユグニ様は人の口に入るものに関してだけは真面目ですから」
「だけは、なんですか」
「ええ」
マシュさんが頷く。
「褒めていいのか微妙だな」
リオンがちょっと呆れた顔で言った。
「さて、それでは次に行きましょうか」
オレが水を飲み終わったところで、マシュさんがそう言って歩き出した。
「ーーここでラストですね」
それから屋敷内を周り、オレ達は最後に裏庭にやって来た。
ちなみに、その間他の使用人の方々には会わなかった。
途中で会ったマイクさん曰く、三人はちょっと野暮用でいないらしい。
つまり、あと一人は裏庭にいる可能性が高いというわけだが••••••。
「••••••マシュさん」
「はい」
「あの人は••••••」
オレは前方を指差す。
「凄い、筋肉、ですね」
アインスが感心したようにつぶやく。
オレ達の目の前には、ムッキムキの男性がどっかで見たようなエクササイズに励んでいた。
「ワンモアセッ!」
オイ、ヤメロ!訴えられるぞ!
「バーン様」
何処でそのエクササイズを知ったのか疑問に思っていると、マシュさんが筋肉の名前を呼んだ。
「ん?オオ、マシュ嬢ではないか!」
見た目と同じくらい大きな声だな。
てか、アインスが怯えてオレの背中に隠れちゃったよ。
「••••••」
一方、リオンはバーンと呼ばれた男性を見て、眉をひそめていた。
どうかしたのだろうか?
「うむ、そちらの三人は新入りだな!」
「その通りです。皆さん、こちらはこの家の庭師です」
「庭師のバーンだ!よろしく頼むぞ!気軽にバーンと呼んでくれ!」
豪快に笑いながら名乗る。
てか、庭師?
え、庭師?
庭師って、庭を整える人のことだよな?
••••••あ、合わねー。
むしろ、庭を破壊しそうなイメージがプンプンするんだが••••••。
「使用人の中ではこの家に一番長く仕えてますので、家内で困ったことがあったら相談するといいですよ」
「ハッハッハッ!オウ!可能な限りは力になるぞ!」
それは頼もしいんだけど、声は小さくして欲しいです。
なんて思っていた時。
「••••••一ついいか?」
唐突に。
私、不機嫌です!って顔をしていたリオンが口を開く。
「なんだ、小娘!答えられることなら答えよう!」
「では、遠慮無く」
胡散臭いものを見る目でバーンを見ながら、リオンが続けた。
「なんで竜王が庭師なんかやっているのだ?」
サラリととんでもないことを口にしながら。
そんなことを。
・魔導書
魔力が宿った特殊な本。このカテゴリーに分類される本は、本の中身を具現化する能力がある。基本は封印が掛かっており、その状態で人の手が届かない場所に保管される。




