No. 119 思い出した大事なこと
「騒がしいな」
街に出て、リオンがまず発したのはそれだった。
朝食を食べた後、暗殺者が動くのは夜だろうからと、昼の間は自由時間になったので、リオンに鍛えてもらうことにしたのだ。
で、リオン曰く、実戦をした方が強くなるとのことで、街の近くで魔物と戦おうということになった。
そして、どうせならギルドで依頼を受けた方が報酬も出て一石二鳥なので、これからこの街のギルドに向かう途中だ。
ギルドは街中にあるので、当然のことながら街の中を歩いていくことになるのだが、リオンは街のざわめきにうんざりしているようだった。
「慣れないな••••••大体、王都より騒がしいというのはどういうことだ」
「いや、別に首都が一番賑やかだと決まってるわけじゃないだろ。アレだ。国会議事堂の近くとゲームセンターなら、ゲームセンターの方がうるさいだろ?」
「ああ、なるほど••••••それは少し違うんじゃないか?」
「言いたいことはわかるだろ?」
「まあな」
真冬は、ふぅと息を吐く。
「天使になってからはほとんど一人だったからな。管理者としてあの図書館に引きこもってなければならなかったし、天使の知り合いは少なかったしな。大勢の人がいるところを見ること自体が慣れなくてな」
「••••••そうか」
淡々とした、しかし何処か寂しげなリオンに、オレはそう答えるしかなかった。
「••••••なあ、リオン」
「なんだ?」
リオンがチラリとオレの顔を見る。
オレは言ってもいいことか、数秒考えた後、意を決してハッキリと言ってみることにした。
「オレさ、この世界に来てから時々変な夢を見るんだ」
「ふむ、どんな夢を?」
「••••••幼い頃のオレと真冬がさ、真冬に良く似た女の子と友達になって一緒に遊ぶ夢だよ」
「••••••」
「オレは全く覚えてないんだよ。でも、凄く懐かしいんだ」
「••••••」
「あの夢は、実際にあったことなのか?」
「••••••」
リオンはオレの言葉を俯きながら黙って聞いていたが、オレが視線を向けると一言だけ口にした。
「••••••思い出したのか?」
「それは実際にあったことだって認めるってことか?」
「••••••ああ」
「そうか。でも、どうなんだろうな。肝心なところで目が覚めるから、詳しいところまでは思い出せてないんじゃないかな?」
「そうか••••••」
「でも、一つだけ大事なことを思い出せたぞ」
俯いているリオンの顔を無理矢理上げ、その目を覗き込みながらオレは言った。
「久し振りだな••••••”夏夢”」
忘れていた、大切な女の子の名前を。




