No. 112 渓谷のダンジョン
「さて、先に進もうか」
頭の中で回想シーンを繰り返しているうちに、真冬の魔力も回想してきたので立ち上がってそう言った。
「あのイノシシ、さりげなく死んじゃってたしね」
実験体として捕らえていたイノシシは真冬の重力操作に当たって潰れていた。
イノシシは犠牲になったのだ••••••。
まあ、実験体にはなったのか?
「少し、可哀想、です」
「アインス、これは自然界のルールだ。強いものが生き、弱いものは死ぬ。それだけのことなんだよ」
日本にいた時は動物愛護団体に怒られそうだが、幸いここは異世界。
むしろ、弱肉強食が基本ルールであり、野生動物に対して愛など無い。
まあ、今のイノシシは魔物なんだが。
「魔物も近くにはいないようだし••••••」
索敵の魔導書で辺りを探索したところ、おそらく私たちが原因だが、周囲の魔物は一匹もいなくなっていた。
更に深く索敵してみると、魔物は渓谷の奥に逃げていた。
そして、偶然だがダンジョンと思わしき場所も見つけた。
「ダンジョンを見つけたぞ」
「本当?」
「ああ。魔物もいないようだし、ダンジョンに行くとしようか」
アインスのレベルを上げられないのは残念だが、それはダンジョン内でも出来るだろう。
安全性は••••••私がいるから大丈夫だろう。
「早く行こうか。暗くなったら面倒だ」
そう言って私はダンジョンに向かって歩いて行った。
真冬とアインスも私に続く。
「ここだな」
目の前の大きな扉を見つめる。
この扉を見つける時に、認識阻害の術式を見つけたので間違い無いだろう。
「何故、こんなに、大きな、扉に、するの、でしょうか、?」
「さぁ?製作者の趣味じゃないの?雰囲気出そうとかそんな理由だったりして」
••••••何と無く後者の理由が正しいような気がする。
いや、まさか••••••まさかな。
そんな理由でこんなデカイ扉を作るか?
••••••まあ、死人に口無し、真実は闇の中だ。
考えても答えは返って来ないし、考えるだけ時間の無駄か。
「••••••」
一歩踏み出すと、重々しい動作で扉が自動的に開いた。
無駄に凝ってる仕組みだ。
技術の無駄使いとは、こういうことを言うのだろう。
「••••••行くぞ」
二人が頷いたのを確認し、私はダンジョンに足を踏み入れる。
早く終わらせて帰るとしよう。




