No. 111 一人は辛いから
数分後。
辺りはデコボコになった地面と、散乱した武器の破片でいっぱいになっていた。
私の前では真冬が魔力切れで倒れており、アインスが真冬を休ませている。
「もう、ダメ••••••力が入らないよ••••••」
真冬は秋矢と違って、極端に魔力が多くない。
いや、秋矢の魔力量が異常というだけで、普通の人間よりは多いが。
むしろ、秋矢は何故あそこまで魔力量が多いのだろうか?
素質の面もあるが、それにしても多い。
人間の中では間違い無くトップクラスだろうし、このままの上昇値を保ったままレベルを上げ続ければ、一層に属する中でも最高値まで上がるんじゃないのか?
種族が人間だからレベルが上がりやすいし、その中でも秋矢には経験値+のスキルがある。
そして、私と真冬が経験値を得るごとに秋矢にも経験値が入ることを考えるとあり得ない話ではない。
「••••••ふぅ」
一度ため息をつく。
少し落ち着こう。
今考えても仕方の無いことだ。
「とりあえず真冬。これを飲め」
「••••••何、これ?」
「魔力回復用のポーションだ。さっき作った」
ちなみにこの世界では、魔力回復ポーションは重宝されているので、そういう面で錬金術は需要が高い。
錬金術はかなりセンスが問われるが、努力に見合うだけの利益を手に入れることが出来る可能性があるので習得しようとしている人間は割と多い。
「••••••本当に、なんでもありだねリオンは。冗談でもなんでもなく、もうリオン一人でもいいんじゃないかな?」
「悪いが一人はお断りさせてもらおう」
「何で?」
「••••••一人は辛いだろう?昔はともかく、今の私は一人に戻りたくないんだ」
だからこそ、何年もかけて秋矢と再び出会えたことは嬉しかった。
私が天使になってからは、次会う時の期間が長く、会った時は秋矢が私を忘れているという事態が毎回起きているが、それももう無いだろう。
力が足りなかったころはともかく、今は力がある。
きっと、これからはずっと秋矢の近くにいれるはずだ。
「あー確かに一人は辛いね。お兄ちゃんが突然失踪した時は本当に焦ったよー。一週間過ぎた時はつい泣いちゃったよ。まさか異世界にいるとは思ってなかったけど」
「それは••••••すまなかった」
「なんで謝るの?」
「••••••秋矢をこの世界に送ったのは私だからな。真冬には本当に悪いことをした」
真冬がどれほど秋矢を慕っているかは誰が見てもわかる。
秋矢が突然いなくなった時の真冬の気持ちは、きっと誰にもわからないほど辛かっただろう。
真冬には、私には無い秋矢との関係があるのだから。
家族、兄妹という関係。
過ごした時間も違うのだから。
「いいよ。何か理由があったんでしょ?お兄ちゃんを異世界に送らないといけなかった理由が」
「••••••ああ」
「それならむしろ感謝したいくらいだよ?ただ、いつか理由を話して欲しいな」
真冬は優しく微笑む。
「覚えて無いけど、わたしはリオンのことを大事に思ってるから。お兄ちゃんも同じだと思うよ?記憶に無くても、気持ちはきっと変わらないんだよ」
真冬の言葉に、思わず泣きそうになってしまった。
私は誤魔化すように目を逸らし、人間だった頃の記憶を思い返していたのだった。




