No. 106 恨みは無い
「詰めの甘いスサノオにボコられたあと、生き延びた八岐大蛇が作った眷属。それが鬼という存在じゃ」
親子揃って生き延びたんだな。
「八岐大蛇も、酒を飲むと弱体化するという弱点があっての。それが見事に鬼全体に遺伝しておるのよ」
「••••••うわぁ、最悪のプレゼントだな」
要らないにもほどがある。
「てか、あれ?ヤマタノオロチが鬼を作ったってことは、鬼っていうのは全員兄弟みたいなものなのか?」
「そうじゃな。その通りじゃ。そしてその理屈で言ったら、わしは長女に当たるのかの?」
いや、なんで疑問形なんだよ。
オレが知るわけないだろ。
「しかし、見事に似たもの親子だな。親子揃って酒を飲んで酔ったところで殺されかけるとか。しかも二人とも生き延びたとか」
「まったくじゃな。我がことながら、どうしてこうも同じことをしてるのやら」
ハハハっと笑ってるとこ悪いが、笑いどころじゃないよな?
「そういやあんた、恨みとか無いのか?」
「ん?何に対してじゃ?」
「いや、普通にあんたを殺した連中が憎くないのかって」
オレだったら絶対に恨む。
自信があるぞ。
「そんな自信よりもっといい方面の自信をつけなさいよ••••••」
アダマスから正論が飛んできた。
でも、それが出来たら苦労はしない。
そう思っていると、酒呑童子は言った。
「恨んでないぞ」
「え、そうなのか?」
意外だな。
この恨み晴らさでおくべきか、とか言いそうだったんだが。
「まあ、殺された時は色々言ったがの。鬼というものは弱肉強食、強さが全てな種族じゃからの」
「••••••うわぁ、世紀末だな」
世紀末妖怪伝説で一本書けそうだな。
目の前の幼女がトゲ付きの肩パットをつけてヒャッハーとか言ってるところを想像して、思わず吹き出しかける。
「わしが殺されたのは結果として頼光の方が強かったというだけじゃ。殺り方はやはり卑怯じゃとは思うが、恨むようなものではないぞ。まあ、奴らも見た目幼子ようなわしを切ることを実感躊躇っていたようじゃったがの。二層に戻る前に、この幼女偏愛者共め!と罵ってやった時の顔は今でも忘れられんわ」
ゲス顔を披露しながら楽しそうに語る酒呑童子。
こいつにロリコン扱いされた彼らはどんな気持ちだったんだろうか。
「そういうわけで、最後に仕返しをしてやったわしは、今となっては一ミリも恨みなどないのじゃ」
「そういうものか」
「そういうもんじゃ。それよりもじゃ、小僧」
「なんだ?」
「そろそろわしの方から質問してよいか?日本の話を聞きたいのじゃ」
「ああ、そうか。了解」
オレは酒呑童子からの質問に細かく答えていった。




