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異世界でカフェを開いただけなのに、なぜか英雄扱いされています  作者: 断捨離
第2章 王都進出編

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第60話 英雄扱いはお断りします


「やっぱり英雄ですね。」


「だから違うって。」


 俺の反論に。


 中庭に笑い声が広がる。


 だが。


 国王は珍しく真面目な顔をしていた。


「いや。」


「ん?」


「余は本気で言っている。」


 中庭が静かになる。


 国王は立ち上がった。


「ミナト。」


「はい。」


「お前が王都へ来る前、この国は悪い国ではなかった。」


「……」


「だが、少しだけ息苦しかった。」


 文官たちが目を伏せる。


 騎士たちも黙っている。


「皆、自分の立場の中だけで生きていた。」


 国王は周囲を見回した。


「貴族は貴族。」


「商人は商人。」


「騎士は騎士。」


「文官は文官。」


「それが当たり前だった。」


 そして。


 国王は少し笑う。


「だが、お前の店は違った。」


 職人がいる。


 商人がいる。


 騎士がいる。


 文官がいる。


 貴族もいる。


 王女はプリンを食べている。


 王妃は微笑んでいる。


 王様は黒薬を飲んでいる。


 ……改めて見ると、すごい光景だった。


「お前は人を集めた。」


「いや、俺は何も――」


「集めたのだ。」


 国王は優しく言った。


「お前は席を作った。」


「……」


「人が座れる場所を作った。」


 その言葉に。


 俺は何も言えなかった。


 すると。


 王妃が小さく頷く。


「それは簡単なことではありません。」


 侯爵も頷く。


「私もそう思いますな。」


 限界文官なんて泣きそうだった。


「朝の黒薬には命を救われました……」


「大げさなんだよなぁ。」


 すると。


 国王が笑った。


「そこでだ。」


「来た。」


 嫌な予感がする。


「ミナト。」


「はい。」


「褒賞を与えよう。」


「ほら来た。」


 文官が紙を広げる。


『王国功労章』


『名誉貴族位』


『王城御用達認定』


「多いな!?」


 思わず叫んだ。


「いやいやいや。」


「何が不満だ?」


「全部です。」


 即答だった。


 中庭が静まり返る。


「全部?」


「全部です。」


 俺は指を折る。


「貴族は面倒そう。」


「うむ。」


「王城御用達は責任重そう。」


「うむ。」


「功労章はなんか怖い。」


「理由が雑だな。」


 国王が笑う。


 だが。


 俺は本気だった。


「俺はただの喫茶店の店主です。」


 静かになる。


「コーヒー出して。」


「プリン出して。」


「たまにサンドイッチ作って。」


「それで十分です。」


 すると。


 王妃が微笑んだ。


「だから人が集まるのでしょうね。」


「……?」


「肩書きを欲しがらない人だからです。」


 俺はよく分からなかった。


 でも。


 国王は納得したように頷く。


「そういうことか。」


「何がです?」


「だから余も通っている。」


「王様が言うと重いんですよ。」


 中庭に笑いが広がった。


 すると。


 国王は黒薬を飲み干す。


「分かった。」


「お。」


「褒賞はやめよう。」


「助かります。」


「その代わり。」


「代わり?」


 国王は笑った。


「これからも店は続けてくれ。」


 俺は少し考える。


 そして。


「それなら。」


 頷いた。


「たぶん大丈夫です。」


 国王も笑った。


 王妃も笑った。


 王女は四つ目のプリンを食べていた。


 たぶん食べすぎである。


 こうして。


 王城喫茶会は終わった。


 そして。


 俺の異世界喫茶店生活は、たぶん明日も続く。


 ……まあ。


 王様が朝から来るのは、どうかと思うけど。


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