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異世界でカフェを開いただけなのに、なぜか英雄扱いされています  作者: 断捨離
第2章 王都進出編

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第57話 王妃様、ご来場


 王城の中庭には、穏やかな時間が流れていた。

 職人と文官が話している。

 商人と騎士が黒薬を飲んでいる。

 貴族がプリンを食べている。

 改めて見ると、なかなかすごい光景だった。


「本当にやっているなぁ……」


 俺が呟くと。

 リリアも小さく頷く。


「やっていますね」


「始めたのは俺たちじゃないんだけどな」


「でも店主の店が始まりです」


 否定できなかった。

 その時。

 少し離れた場所で、見覚えのある姿を見つける。


「あれ?」


「どうしました?」


「王女様だ」


 王女だった。

 今日はいつもの豪華なドレスではない。

 少し控えめな服装。

 完全に参加者の一人として来ているらしい。

 しかも。

 普通にプリンを食べていた。


「参加していたんだな」


「主催者の娘ですからね」


「それもそうか」


 すると。

 王女はこちらへ気付き、軽く手を振った。


「店主さん!」


「どうも」


「プリン、美味しいです!」


「知ってる」


「今日で二個目です!」


「食べすぎじゃない?」


 王女は少し考える。


「……三個目でした」


「増えた」


 その時だった。

 中庭の入口付近がざわつく。


「……?」


 人が道を開ける。

 騎士たちが姿勢を正す。

 貴族たちも立ち上がる。

 そして。

 一人の女性が、中庭へ入ってきた。


「あなた。」


 静かな声だった。

 だが。

 妙な迫力があった。

 国王が苦笑する。


「……来たか。」


「来ました。」


 俺は小声でリリアへ聞く。


「誰?」


「たぶん――」


 リリアが答えるより先に。

 周囲から声が上がる。


「王妃様……!」


 王妃だった。


「うわぁ……」


 思わず声が漏れる。

 国王。

 王女。

 そして王妃。

 王族が揃ってしまった。

 すると。

 王妃は国王を見る。


「あなた。」


「なんだ?」


「勝手に王城で面白いことを始めたそうですね。」


「怒っているか?」


「怒っていません。」


「それ怒っている時の言い方では?」


 だが。

 王妃は返事をしなかった。

 代わりに。

 ゆっくりと周囲を見渡す。

 文官が笑っている。

 職人が騎士と話している。

 商人と貴族が同じ机に座っている。

 王女がプリンを食べている。


「……」


 王妃は少し驚いた顔をした。


「どうだ?」


 国王が尋ねる。

 王妃は少しだけ笑った。


「こんな王城は初めて見ました。」


 中庭が静かになる。


「王城なのに、誰も仕事の顔をしていません。」


「そうだな。」


「皆、楽しそうです。」


 国王は頷いた。


「だからやってみたかった。」


 王妃は国王を見る。

 そして。

 少しだけ微笑んだ。


「良いことをしましたね。」


 国王が少し照れくさそうに咳払いをする。


「そ、そうか?」


「はい。」


 すると。

 王妃はゆっくりこちらへ歩いてきた。


「あなたが店主さんですか。」


「は、はい。」


「主人がお世話になっています。」


「主人って王様ですよね?」


「王様ですね。」


 王妃は笑った。


「最近、朝の機嫌が良いんです。」


 少し離れた場所で。

 国王が気まずそうに目を逸らした。


「やっぱりか。」


 文官たちが頷く。

 侯爵まで頷いている。

 満場一致だった。

 すると。

 王妃は俺を見る。


「店主さん。」


「はい。」


「少しお願いがあるのですが。」


 来た。

 俺は直感した。

 絶対に普通のお願いじゃない。

 その時。

 王妃は穏やかに微笑んだ。


「王都で一番仲の悪い二人を、同じテーブルへ座らせてもらえませんか?」


「無茶言わないでください。」


 中庭に笑い声が広がった。

 そして俺は思う。

 ――やっぱり、普通には終わらない。


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