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異世界でカフェを開いただけなのに、なぜか英雄扱いされています  作者: 断捨離
第2章 王都進出編

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第55話 王城喫茶会、開幕


 そして午後。

 俺は王城の中庭に立っていた。


「……本当にはじまっちゃうなぁ」


 思わず呟く。

 目の前には長机。

 椅子。

 紅茶。

 黒薬。

 プリン。

 サンドイッチ。

 そして大量の人。


「多いですね」


 隣でリリアも少し驚いていた。


「多いな」


 予想以上だった。

 もっとこう。

 小規模な集まりを想像していた。

 だが現実は違う。

 職人。

 商人。

 騎士。

 文官。

 貴族。

 王城の中庭に様々な人間が集まっている。

 すると。

 グランベル侯爵が周囲を見回した。


「これは予想外ですな」


「侯爵もそう思います?」


「思いますとも」


 侯爵は苦笑した。


「こんな顔ぶれが同じ場所にいるのを初めて見ました」


 確かに。

 俺も初めて見た。

 すると。

 近くでは。

 商人と騎士が黒薬について話している。

 少し離れた場所では。

 職人と文官がサンドイッチを食べている。

 なんだろう。

 妙な光景だった。

 その時。

 国王が立ち上がる。

 ざわめきが止まった。


「皆、よく来てくれた」


 中庭が静かになる。

 だが。

 国王はいつものような堅い表情ではなかった。

 朝の喫茶ミナトにいる時と同じ顔だ。


「難しい話をするつもりはない」


 国王は周囲を見回す。


「今日は休みに来たと思ってくれ」


 参加者たちが顔を見合わせる。

 すると。

 国王は少し笑った。


「黒薬でも飲みながらな」


 中庭に笑いが広がった。

 空気が少し柔らかくなる。

 すると。

 国王は椅子へ座った。


「以上だ」


「短いな!?」


 思わずツッコんでしまった。

 だが。

 参加者たちはどこか安心したようだった。

 その時。

 文官たちが黒薬を配り始める。

 リリアはプリンを並べる。

 俺はサンドイッチを運ぶ。

 こうして。

 第一回王城喫茶会が始まった。

 最初の数分はぎこちなかった。

 皆、何を話していいか分からない。

 身分差もある。

 立場も違う。

 だが。

 時間が経つにつれ。

 少しずつ会話が生まれ始めた。


「その剣、どうやって作るんです?」


「ん? ああ、これはな――」


「商人から見て最近の市場は?」


「実は面白い動きがありまして」


 あちこちで話が始まる。

 そして。

 黒薬が減る。

 プリンが減る。

 サンドイッチも減る。

 すると。

 リリアが小さく笑った。


「店主」


「ん?」


「上手くいってますね」


「……そうだな」


 俺もそう思った。

 少なくとも今のところは。

 その時だった。


「陛下!」


 誰かの声が響く。

 見ると。

 一人の老職人が国王へ近づいていた。

 周囲がざわつく。

 普通ならあり得ない。

 だが。

 老職人は少し緊張しながら言った。


「ひとつ聞いてもよろしいですかな」


「構わん」


「では」


 職人は深呼吸する。

 そして。


「なぜ王城の椅子はあんなに座りにくいので?」


 中庭が静まり返った。


「……」


「……」


「……」


 次の瞬間。

 国王が吹き出した。

 そして。

 参加者たちも一斉に笑い出す。

 王城喫茶会。

 どうやら本当に始まったらしい。


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