第53話 王城喫茶会のお知らせ
王城での打ち合わせから数日後。
『喫茶ミナト 王都店』は、いつも通り賑わっていた。
「黒薬追加で!」
「プリン三つ!」
「サンドイッチ持ち帰りで!」
昼の店内は相変わらず騒がしい。
朝の静かな空気が嘘みたいだった。
「これが日常になってしまったなぁ……」
俺が苦笑すると。
リリアも小さく笑った。
「最初の頃が懐かしいですね」
「まだそんなに経ってないんだけどな」
すると。
カラン。
入口のベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
入ってきたのは、見覚えのある文官だった。
限界文官である。
ただし今日は元気だった。
珍しい。
「店主!」
「どうした?」
「できました!」
「何が?」
文官は胸を張る。
「王城喫茶会の案内状です!」
「本当に作ったんだ」
そういえばそんな話だった。
すると。
文官は一枚の紙を差し出した。
俺は受け取る。
そして読む。
『第一回 王城喫茶会』
「おお」
『身分や立場を問わず、交流と休息を目的とする集まり』
「まともだ」
『黒薬・紅茶・甘味あり』
「そこ重要?」
「重要です」
文官は即答した。
すると。
周囲の客たちが反応する。
「王城喫茶会?」
「何それ」
「面白そう」
「参加できるのか?」
あっという間に人だかりができた。
すると。
限界文官が説明を始める。
「今回は試験開催です」
「ふむふむ」
「人数制限があります」
「なるほど」
「ですが、身分による制限はありません」
店内が静まる。
「……え?」
「本当に?」
「貴族じゃなくても?」
すると。
文官は頷いた。
「陛下の意向です」
ざわっ。
空気が揺れる。
俺も少し驚いた。
国王、結構本気だったらしい。
すると。
常連の鍛冶職人が腕を組む。
「俺みたいなのでもいいのか?」
「構いません」
「騎士と同じ場所で?」
「構いません」
「貴族も来るんだろ?」
「来ます」
「落ち着かねぇな」
店内に笑いが広がった。
だが。
同じことを思った人は多かったらしい。
すると。
リリアが首を傾げる。
「本当に来るんでしょうか」
「ん?」
「皆、興味はあると思うんです」
「そうだな」
「でも少し緊張しそうです」
確かに。
喫茶ミナトなら自然に混ざっているけど。
王城となると話は別だ。
その時。
カラン。
入口のベルが鳴る。
「失礼する」
入ってきたのは国王だった。
「また来た」
「また来たな」
最近このやり取りが増えている。
すると。
国王は案内状を見て頷いた。
「うむ」
「確認ですか?」
「うむ」
国王は少し笑った。
「反応を見にな」
「どうです?」
「想定通りだ」
そして。
店内を見回す。
職人。
商人。
文官。
騎士。
様々な人間がいる。
皆、案内状を見ていた。
興味もある。
だが少し不安そうでもある。
すると。
国王は静かに言った。
「だからこそ、一度やってみる価値がある」
店内が静かになる。
「失敗するかもしれん」
「……」
「上手くいかんかもしれん」
「……」
「だが」
国王は少し笑った。
「喫茶ミナトができた時も、誰も上手くいくとは思っておらんかっただろう?」
それはそうだった。
俺だって思っていなかった。
すると。
限界文官が小さく手を挙げる。
「私は思っていました」
「嘘つけ!!」
店内が爆笑に包まれた。




