第51話 王様の考え
「やっぱり。礼を言うだけで終わるはずがなかった。」
俺が頭を抱えると。
部屋のあちこちから笑い声が漏れた。
だが。
国王は意外にも真面目な顔をしていた。
「そんなに嫌そうな顔をするな」
「しますよ」
「まだ何も言っておらんではないか」
「王城で喫茶会を開いてみないか、の時点で十分です」
すると。
グランベル侯爵が吹き出した。
文官たちも肩を震わせている。
どうやら同じことを思ったらしい。
だが。
国王は静かに頷いた。
「それもそうだな」
納得しないでほしい。
すると。
リリアが小さく手を挙げた。
「質問してもよろしいでしょうか」
「構わん」
「なぜ喫茶会なのでしょう」
部屋が静かになる。
俺もそれは気になっていた。
すると。
国王は窓の外へ視線を向けた。
「お前たちは、王都へ来てから何を見た?」
「え?」
「何を感じた?」
少し考える。
王都。
賑やかな街。
人が多い。
発展している。
そして――
「皆、忙しそうでした」
気づけばそう答えていた。
国王は頷く。
「そうだ」
静かな声だった。
「王都は豊かだ」
「はい」
「だが、余裕がない」
文官たちが目を伏せる。
侯爵も何も言わない。
どうやら事実らしい。
「貴族は貴族同士でしか話さない」
国王は続ける。
「商人は商人同士だ」
「……」
「文官も騎士も同じだ」
確かに。
本来ならそうなのかもしれない。
すると。
国王は少し笑った。
「だが、お前の店では違う」
「喫茶ミナトですか」
「うむ」
国王は頷いた。
「侯爵が文官と話す」
グランベル侯爵が咳払いする。
「騎士が商人と話す」
レオンが目を逸らした。
「魔導師が貴族へ国薬を薦める」
魔導師長が天井を見た。
「なぜか皆、同じ席で笑っている」
「……」
言われてみると。
確かに変な光景だった。
俺はただ店をやっているだけだったから、あまり意識していなかった。
すると。
国王は少しだけ表情を和らげる。
「余はな」
「はい」
「それを見てみたいのだ」
「見てみたい?」
「王城でな」
部屋が静まり返る。
国王は真面目だった。
「堅苦しい会議ではない」
「……」
「派閥争いでもない」
「……」
「ただ一度、肩書きを置いて話す場を作れないかと思った」
俺は思わず国王を見る。
王女とは少し違う。
侯爵とも違う。
この人は。
国全体を見ているんだなと思った。
すると。
リリアがぽつりと呟く。
「休憩する場所を作りたいんですね」
国王は少し驚いた顔をした。
そして。
小さく笑う。
「そうかもしれんな」
その時。
限界文官が手を挙げた。
「陛下」
「なんだ」
「それ、普通に参加したいです」
「お前は仕事しろ」
部屋に笑いが広がる。
だが。
国王も笑っていた。
そして俺は思う。
――この人、本当に喫茶ミナトが気に入っているんだな。




