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異世界でカフェを開いただけなのに、なぜか英雄扱いされています  作者: 断捨離
第2章 王都進出編

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第49話 初めての王城

 

翌日。

 俺は王城の前に立っていた。


「でっかいなぁ……」


 見上げる。

 高い城壁。

 巨大な門。

 行き交う騎士たち。

 王都で何度も見ていたはずなのに、近くで見ると迫力が違う。

 すると。

 隣のリリアが小さく頷く。


「さすが王城ですね」


「帰りたい」


「まだ着いたばかりです」


 正論だった。

 その時。


「お待ちしておりました」


 マリアが現れる。

 今日は王城勤務らしく、いつも以上にきっちりした服装だった。


「案内いたします」


「よろしくお願いします」


 こうして。

 俺たちは王城の中へ入った。

 廊下は広い。

 天井も高い。

 絵画や装飾品も豪華だ。


「すごいな……」


「店主」


「ん?」


「口が開いていますよ」


「閉じます」


 田舎者みたいになっていた。

 すると。

 通り過ぎる騎士たちが、ちらちらこちらを見る。

 文官たちも見ている。

 中には。


「あれが……」


「喫茶ミナトの……」


「黒薬の……」


 という声も聞こえた。


「なんか有名人みたいだな」


「実際、有名ですよ」


「嬉しくない」


 そのまま歩き続ける。

 すると。

 大きな扉の前でマリアが止まった。


「こちらです」


「ここ?」


「はい」


 重厚な扉だった。

 どう見ても偉い人の部屋である。


「今さらだけど」


「はい?」


「何の用なんだ?」


 マリアが少しだけ考える。


「陛下がお話したいそうです」


「ざっくりしてるな」


 すると。

 マリアは苦笑した。


「私も詳細までは聞いておりません」


「不安になる情報だなぁ」


 その時。

 扉が開く。


「入れ」


 聞き覚えのある声だった。

 国王である。

 部屋へ入る。

 すると。

 そこには国王だけではなかった。

 グランベル侯爵。

 魔導師長。

 そして数名の文官。


「増えてる」


「増えてますね」


 リリアも小声で同意した。

 すると。

 国王が笑う。


「そんなに警戒するな」


「警戒しますよ」


「そうか?」


「そうです」


 王様。

 ちょっと感覚がずれている。

 すると。

 国王は椅子へ座るよう促した。


「まずは座れ」


「失礼します」


 俺とリリアは向かいへ座る。

 すると。

 文官が何やら資料を配り始めた。


「……ん?」


 目を落とす。

 そこには。

『喫茶ミナトの王都への影響について』

 と書かれていた。


「なんだこれ」


 ページをめくる。

『文官の集中力向上』

『貴族間交流の変化』

『王都における休憩文化の定着』

『朝食習慣の改善』


「報告書だ」


「報告書ですね」


 しかも結構分厚い。

 俺は頭を抱えた。


「ただの喫茶店なんだけどなぁ……」


 すると。

 国王が笑いを堪えていた。


「余もそう思う」


「じゃあ何でこんなことになってるんです?」


 その質問に。

 国王は少し真面目な顔になる。


「だから呼んだ」


「……?」


「お前の店が、思った以上に王都を変えている」


 部屋の空気が少しだけ変わった。

 そして。

 国王は続ける。


「だから一度、正式に礼を言っておこうと思ってな」


「……え?」


 予想外だった。

 俺はてっきり、

 何か面倒事が始まるのだと思っていた。

 だが。

 国王は静かに言った。


「ありがとう」


 その一言に。

 部屋にいた全員が頷いた。

 そして俺は思った。

 ――いや、絶対これだけじゃ終わらないだろう。


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