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異世界でカフェを開いただけなのに、なぜか英雄扱いされています  作者: 断捨離
第2章 王都進出編

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第47話 新たな常連客


 数日後。

 朝の喫茶ミナトは、すっかり王都の日常になっていた。

 文官が来る。

 騎士が来る。

 魔導師が来る。

 そして――

 カラン。


「……おはよう」


「おはようございます」


 国王も来る。


「慣れてきちゃったなぁ…」


 思わず呟くと。

 リリアが静かに頷いた。


「慣れてはいけない気もします」


「そりゃそう」


 王様である。

 本来なら城の奥で執務している人だ。

 なのに。

 今は普通に朝食を食べている。

 すると。

 国王はいつもの席へ向かった。

 窓際のカウンター席。

 店の入口も見える。

 王都の通りも見える。

 最近、毎回そこだった。

 すると。

 リリアが小声で言う。


「やっぱり、あの席ですね」


「だな」


「好きなんでしょうか」


「景色が気に入ったのかな」


 すると。

 国王がこちらを見た。


「落ち着くのだ」


「聞こえてた」


「王城では、静かに外を眺める時間があまりない」


「王様も大変だなぁ」


 すると。

 国王は少し笑った。


「余もそう思う」


 その時。

 カラン。

 限界文官が入ってくる。


「黒薬を――」


 そして固まる。


「陛下、もう来てる……」


 最近の定番だった。

 すると。

 国王が手を振る。


「おはよう」


「お、おはようございます!」


 文官が慌てて頭を下げる。

 だが。

 初日のような緊張感はない。

 慣れとは恐ろしい。

 すると。

 奥の席の魔導師がぼそっと言った。


「最近、陛下がいると安心するな」


「おい」


 騎士も頷く。


「分かる」


「分かるな」


「お前ら」


 王様を何だと思ってるんだ。

 すると。

 国王本人が苦笑した。


「それは安心して良いのか悪いのか」


「良いと思います」


 リリアが即答した。


「そうか」


 納得するな。

 その時。

 グランベル侯爵が入ってくる。


「朝会議前に――」


 そして止まる。


「陛下」


「うむ」


「今日も来られたのですか」


「今日も来た」


 もはや定型文である。

 すると。

 侯爵はため息をつきながら席へ座った。


「最近、城で噂になっておりますぞ」


「何がだ?」


「“陛下が朝だけ機嫌が良い”と」


 店内が静まり返る。


「……」


「……」


 国王が咳払いした。


「気のせいだ」


「そうですか?」


「気のせいだ」


 だが。

 誰も信じていなかった。

 すると。

 限界文官が小声で言う。


「確かに朝会議の空気が柔らかい……」


「前より怒られなくなったな」


「質問しやすくなった」


「聞こえてるぞ」


 国王が苦笑する。

 だが否定はしなかった。

 その時だった。

 カラン。

 入口のベルが鳴る。

 入ってきたのは若い近衛騎士だった。


「陛下!」


「どうした?」


「王城中が探しております!」


「またか」


 またなのか。

 すると。

 近衛騎士は真顔で言った。


「朝の執務室へ行ったらおられなくて……」


「ここにいるからな」


「最近は皆、まず喫茶ミナトを探すようになりました」


 沈黙。

 そして。

 店内が吹き出した。


「捜索手順になってる!」


「最初にここ確認するのか!」


「王様の居場所じゃないだろ!」


 すると。

 近衛騎士は疲れた顔で言った。


「最近は発見率が九割を超えております」


「高すぎるなぁ」


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