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異世界でカフェを開いただけなのに、なぜか英雄扱いされています  作者: 断捨離
第2章 王都進出編

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第41話 朝の王都、死んだ顔が多すぎる


「一日中営業させる気か!?」


 俺のツッコミに。

 限界文官は真顔で頷いた。


「理想です」


「ブラック企業の理想みたいに言うな」


 すると。

 周囲の文官たちも、妙に真剣な顔をしていた。


「朝、黒薬を飲めれば……」


「会議前に落ち着ける……」


「出勤前の精神安定が……」


「コーヒーをライフライン扱いするな」


 だが。

 翌朝。

 俺は結局、試験的に早朝営業をしていた。


「なんでだろうなぁ……」


 朝日が差し込む店内。

 昼とも夜とも違う、静かな空気。

 王都はまだ完全には起きていない。

 ……はずだった。

 カラン。


「お、おはようございます……」


「死んだ顔だ」


 開店直後に入ってきた文官は、既に限界だった。

 隈。

 書類。

 虚無。

 朝なのに終わっている。


「徹夜?」


「二時間寝ました……」


「寝てないのと変わらんな?」


 すると。

 文官は席へ座るなり呟く。


「黒薬を……濃いめで……」


「完全に常連の注文」


 さらに。

 カラン。


「開いてる……!」


 カラン。


「間に合った……!」


 カラン。


「出勤前に一杯だけ……!」


「増えるなぁ!?」


 開店十分で満席だった。

 しかも。

 皆めちゃくちゃ静かである。

 朝だから。

 まだ脳が起きてない。

 すると。

 リリアが、小声で言った。


「昼と全然違いますね」


「静かすぎて逆に怖い」


 店内では。

 文官たちが、ぼーっとコーヒーを飲んでいた。

 誰も騒がない。

 ただ、静かに生き返っていく。

 すると。

 奥の席の魔導師が、ふっと息を吐く。


「……助かる」


「そこまで?」


「朝の魔導師塔、空気が重いんだ」


「またブラック職場」


 すると。

 隣の騎士が真顔で頷いた。


「朝礼が長い」


「異世界にもあるんだ朝礼」


 嫌すぎる。

 その時。

 入口のベルが、静かに鳴る。

 カラン。


「……失礼する」


 入ってきたのは、グランベル侯爵だった。

 しかも今日は、妙に眠そうである。


「あれ、侯爵?」


「……朝会議前だ」


「あっ」


 察した。

 侯爵は静かに席へ座る。


「紅茶を頼む」


「紅茶派はブレないな」


「あと黒薬も」


「飲むんだ」


「……眠い」


 完全に社会人だった。

 すると。

 周囲の文官たちが、妙に親近感ある目で侯爵を見る。


「侯爵も大変なんだな……」


「仲間だ……」


「朝会議つらいですよね……」


「王都、階級超えて疲れている」


 その時。

 限界文官が、震える声で呟いた。


「……これだ」


「ん?」


「これですよ……!」


「何が?」


「朝、“少し落ち着いてから仕事へ行ける場所”……!」


 すると。

 店内の空気が、静かに頷いた。


「……分かる」


「助かる」


「このまま出勤したくない」


「それは頑張れ」


 だが。

 皆、少しだけ顔色が良くなっていた。

 コーヒーを飲んで。

 一息ついて。

 “仕事へ向かう前に、少し人間へ戻る”。

 そんな空気だった。

 その時。

 リリアが、ふっと笑う。


「店主」


「ん?」


「今の方が、皆ちゃんと休めていますね」


「……そうかもな」


 昼の賑やかさも嫌いじゃない。

 でも。

 こういう静かな時間も、悪くなかった。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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