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異世界でカフェを開いただけなのに、なぜか英雄扱いされています  作者: 断捨離
第2章 王都進出編

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第37話 フレンチトースト、王都を壊し始める


「まだ説明してないんだけど!?」


 店内がざわつく。


「ふれんちとーすと……?」


「新しい甘味か!?」


「いや、パン料理では?」


「甘いのか!? しょっぱいのか!?」


「情報が錯綜してる!」


 すると。

 王女が、完全に目を輝かせていた。


「食べたいです!」


「早いなぁ」


 しかも。

 周囲の客たちも、めちゃくちゃ反応している。


「追加注文できますか!?」


「整理券必要!?」


「徹夜組並びます!?」


「落ち着け!?」


 新メニュー発表だけでこの騒ぎである。

 すると。

 レオンが、震える声で呟いた。


「……まずい」


「何が?」


「また文化が変わる」


「毎回言うな」


 だが。

 商人は本気だった。


「パン料理の価値観が変わります」


「そこまで?」


「古いパンを使える」


「……あ」


 その瞬間。

 近くで聞いていた商人たちが固まった。


「……!」


「まさか」


「余りパンを?」


 すると。

 グランベル侯爵が、ゆっくり立ち上がる。


「店主殿」


「はい?」


「その料理、詳しく聞かせてもらおう」


「圧が強い」


 俺は苦笑しながら説明する。


「簡単に言うと、硬くなったパンを卵液に浸して焼く」


「硬くなったパンを……?」


「再利用だと?」


「甘味になるのか!?」


 王都民、衝撃を受けていた。

 すると。

 リリアが小さく首を傾げる。


「普通に美味しいですよ?」


「リリア基準は参考にならないんだよなぁ」


 甘味への信頼が強すぎる。

 その時。

 じゅわ、とまたバターが鳴る。

 甘い香りが広がる。

 店内が静まり返った。


「……」


「……」


 全員、匂いに集中している。

 怖い。

 すると。

 王女が、小さな声で呟いた。


「これ絶対美味しいやつです……」


「語彙が食欲寄りなんよ」


 数分後。

 焼き上がったフレンチトーストを皿へ乗せる。

 こんがり焼き色。

 溶けるバター。

 少し蜂蜜。

 湯気。


「おおおお……」


 店内から感嘆の声が漏れた。

 完全に飯テロ空間である。

 すると。

 グランベル侯爵が真剣な顔で聞く。


「……これを、余ったパンで?」


「まあ本来はそういう料理だし」


 沈黙。

 そして。


「革命では?」


「パンで革命起こすな」


 だが。

 商人たちがざわついていた。


「パン廃棄が減る……!」


「保存食事情が変わるぞ……!」


「宿屋でも出せるのでは!?」


 また始まった。

 すると。

 王女が、おそるおそる一口食べる。


「…………」


 止まる。


「また語彙消える流れだ、これ」


 そして。

 王女は、ゆっくり顔を上げた。


「……やさしい」


「おお」


「なんか……眠る前に食べたい味です……」


「感想が完全に癒やし系」


 すると。

 周囲の空気が変わった。


「……確かに」


「落ち着く味だ」


「黒薬と違って穏やか……」


「夜向けでは?」


「また変なカテゴリ増えた」


 その時。

 限界文官が、ぼそっと呟いた。


「……残業後に食べたい」


「切実すぎる」


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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