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異世界でカフェを開いただけなのに、なぜか英雄扱いされています  作者: 断捨離
第2章 王都進出編

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第36話 王都、甘味研究国家になる


「真顔で言うな!!」


 俺のツッコミが響く。

 だが。

 グランベル侯爵は、実に真面目だった。


「紅茶文化の未来がかかっている」


「プリンで?」


「プリンでだ」


 断言された。

 すると。

 周囲の貴族たちも頷いている。


「確かに研究は必要だ」


「組み合わせの可能性は無限……」


「紅茶温度との相性も――」


「本当に学会が始まっている」


 その時。

 限界文官が、死んだ顔で書類を差し出した。


「こちら、“喫茶ミナト関連予算案”です……」


「本当にあるんだ」


 なんかもう怖くなってきた。

 すると。

 セシルが、ちらっと中身を見て固まる。


「……え?」


「どうした?」


「“甘味研究室設立費”って書いてあります」


「なんで!?」


 周囲がざわつく。


「ついに王立機関が……」


「プリン研究が国家事業へ……!」


「違うから!!」


 だが。

 グランベル侯爵は腕を組みながら頷いた。


「当然だろう」


「当然じゃない」


「この“ぷりん”は、貴族社会の空気を変えた」


「そこまで?」


「怒鳴り合いが減った」


「マジだった」


 すると。

 アリシアが、小さく笑う。


「実際、最近の会議はかなり平和ですよ」


「プリン食べながら?」


「はい」


「すごいな、プリン……」


 すると。

 王女が、ぱっと手を挙げた。


「研究室なら、私も参加したいです!」


「王女がプリン研究室に入ろうとするな」


「でも楽しそうです!」


 完全に趣味感覚だった。

 その時。

 魔導師長が、静かにコーヒーを置く。


「……案外、悪くないかもしれん」


「お前まで?」


「甘味研究はともかく」


 彼は真顔だった。


「“休める文化”を研究する価値はある」


「……」


「王都は、働きすぎだ」


 その言葉に。

 文官たちが無言で頷く。

 騎士も頷く。

 魔導師まで頷いている。

 異世界、本当にブラックだった。

 すると。

 リリアがぽつりと言った。


「店主の店、“休んでいい空気”ありますよね」


「そんな意識ないんだけどな」


「でも皆、ここだと力抜いています」


 確かに。

 貴族も。

 騎士も。

 王女ですら。

 この店では、ちょっと気が緩んでいる。

 その時だった。

 厨房から、甘く香ばしい匂いが漂った。


「……ん?」


 皆が一斉に振り向く。

 俺は、フライパンの前に立っていた。

 じゅわ、とバターが鳴る。

 焼き色のついたパン。

 卵液が染み込んだ甘い香り。

 すると。

 王女が、ぴたりと止まる。


「……店主さん」


「ん?」


「それ、何ですか?」


 店内の視線が、全部こちらへ集まった。

 嫌な予感がする。


「……フレンチトースト」


 沈黙。

 そして。


「「「新メニューだぁぁぁ!!」」」


「まだ説明してないんだけど!?」


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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