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異世界でカフェを開いただけなのに、なぜか英雄扱いされています  作者: 断捨離
第2章 王都進出編

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第35話 紅茶派、プリンを研究し始める


 グランベル侯爵の“寝返り”事件から翌日。

『喫茶ミナト 王都店』は、朝から妙にざわついていた。


「聞いたか?」


「紅茶派が動いたらしい」


「ついに全面戦争か……!」


「だからなんの!?」


 俺はカウンターで頭を抱えた。

 最近ずっとこれである。

 すると。

 リリアが注文票を整理しながら言う。


「店主」


「ん?」


「今日は紅茶の注文、多いですね」


「……あ」


 確かに。

 昨日までは“黒薬ください”だらけだったのに、今日は紅茶を頼む客も多い。

 すると。

 アリシアが小さく笑った。


「グランベル侯爵、かなり影響力ありますから」


「プリン食べただけで?」


「“紅茶とプリンは共存できる”発言が広まっています」


「名言みたいに扱われている……」


 すると。

 入口が勢いよく開く。


「店主殿!!」


「うわっ」


 飛び込んできたのは、グランベル侯爵本人だった。

 しかも今日は妙に真剣な顔をしている。


「頼みがある!」


「嫌な予感」


「紅茶に合う“ぷりん”を開発してほしい!」


「研究始まった!?」


 店内がざわつく。


「おお……」


「紅茶派、本気だ……!」


「新時代が来るぞ……!」


「スイーツ開発で時代を語るな」


 だが。

 グランベル侯爵は本気だった。


「昨夜、紅茶派で議論したのだ!」


「何を?」


「“最適なぷりんとは何か”を!」


「平和だなぁ……」


 すると。

 侯爵は机へ分厚い紙束を置いた。


「こちらが議事録だ」


「議事録あるの!?」


 しかも分厚い。

 どれだけ真剣に議論したんだ。

 すると。

 レオンが後ろから覗き込み、震え始めた。


「……すごい」


「何が?」


「市場が成熟し始めている……!」


「お前は本当に楽しそうだな」


 だが。

 紙束の内容はもっとひどかった。

『カラメルの苦味と紅茶の渋みについて』

『プリン表面の滑らかさと香りの調和』

『紅茶派としての理想的甘味とは』


「なんで学会みたいになってるの?」


 すると。

 リリアが真顔で言った。


「皆、暇なんですかね」


「王都貴族に怒られるぞ」


 その時。

 王女が、ぱっと顔を上げる。


「私も会議出たいです!」


「参加する気満々だった」


 しかも。

 周囲の貴族たちも盛り上がり始める。


「ミルクティーと合わせるべきでは?」


「いや、濃い黒薬と――」


「プリンを温める案も!」


「料理番組かな?」


 完全にカフェ談義だった。

 すると。

 セシルが遠い目で呟く。


「……以前は外交問題で揉めていた会議室なんですけどね」


「平和になってるなぁ」


 だが。

 その時だった。

 入口から、疲れ切った文官が飛び込んでくる。


「た、大変です!!」


「また!?」


「王城で、“喫茶ミナト予算案”が本当に審議入りしました!!」


「通す気なの!?」


 すると。

 文官は、死んだ目で続けた。


「しかも、“プリン研究費”まで計上されています……」


「なんで!?」


 その瞬間。

 グランベル侯爵が、静かに頷いた。


「必要経費だな」


「真顔で言うな!!」


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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