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異世界でカフェを開いただけなのに、なぜか英雄扱いされています  作者: 断捨離
第2章 王都進出編

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第31話 王女、プリンで語彙を失う


「と、とにかく!」


 マリアが慌てて声を上げた。


「王女殿下を列に並ばせるわけには――」


「えっ」


 王女が露骨にしょんぼりした。


「でも、皆さんちゃんと並んでいるのに……」


「いや王女ですから!?」


 すると。

 外の列からも声が飛ぶ。


「殿下なら前入っていいですよー!」


「プリン食べてくださーい!」


「黒薬もおすすめですー!」


「王都民、順応早いな?」


 さっきまで整理券で揉めてたのに。

 すると。

 王女は、少し困ったように周囲を見た。


「……ご迷惑、でしたか?」


 その瞬間。

 列の空気が変わる。


「「「そんなことありません!!」」」


「声でかい」


 だが。

 皆めちゃくちゃ必死だった。

 完全に“推しを悲しませたくないファン”の空気である。

 すると。

 リリアが小声で呟く。


「店主」


「ん?」


「王女様、ちょっと愛されキャラですね」


「なんかそんな感じがする」


 王女は、どこか庶民っぽい。

 威圧感が全然ないのだ。

 その時。

 アリシアが、ふっと微笑む。


「昔から、わりと自由な方なんです」


「王族なのに?」


「だからこそ、側近の皆さんが大変らしいですよ」


 後ろの護衛が、無言で頷いていた。

 苦労人の顔だった。

 すると。

 王女が、おずおずとこちらを見る。


「その……」


「はい?」


「ぷりん、食べてもいいですか?」


「そこはブレないんだ」


 だが。

 ここまで来て食べさせないのも可哀想だった。


「……まあ、せっかくだし」


「本当ですか!?」


 一気に顔が明るくなる。

 分かりやすい。

 すると。

 マリアが頭を抱えた。


「もう駄目です……」


「何が?」


「絶対ハマります……」


「そんな薬みたいに言わなくても」


________________________________________

 数分後。

 王女は、店内の奥席へ案内されていた。

 周囲の貴族たちが、妙にソワソワしている。


「王女殿下が……」


「プリンを……」


「歴史的瞬間では……?」


「カフェなんだけどなぁ」


 俺は厨房でプリンを皿へ乗せる。

 今日はかなりの数を用意していた。

 だが。

 開店一時間で半分消えている。

 怖い。


「はい、プリン」


「わぁ……!」


 王女の目が輝いた。

 完全に楽しみにしていた顔である。

 すると。

 周囲が静まり返る。

 なんで見守っているの?

 王女は、そっとスプーンを入れた。

 ぷるり、と揺れる。


「おお……」


「リアクションが素直」


 そして。

 一口。


「…………」


 止まった。

 店内が静まり返る。

 王女は、ゆっくりもう一口食べる。

 さらにもう一口。


「……殿下?」


 護衛が不安そうに声をかける。

 すると。

 王女は、ぼんやりした顔で呟いた。


「……ふわふわ……」


「語彙が消えた」


 さらに一口。


「……あまい……」


「幼児化してる!?」


 店内がざわつく。


「おお……」


「王女殿下まで……」


「これが黄金の甘味……!」


「なんで神話みたいになってるんだ」


 すると。

 王女は、ゆっくりこちらを向いた。


「店主さん」


「はい?」


「……これ、毎日食べたいです」


「重い感想来たなぁ」


 その瞬間。

 レオンが小さく拳を握る。


「勝った」


「だから何に!?」


 だが。

 次の瞬間。

 王女がさらっと言った。


「王城にも、お店作れませんか?」


「…………は?」


 店内が静まり返る。

 そして。

 セシルが、ゆっくり顔を覆った。


「……始まった」


「何が!?」


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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