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異世界でカフェを開いただけなのに、なぜか英雄扱いされています  作者: 断捨離
第2章 王都進出編

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第28話 王都の貴族、並ぶの下手すぎる


 王都店オープン前日。

『喫茶ミナト 王都店』の前では、朝から大騒ぎになっていた。


「押さないでください!」


「整理券順です!」


「貴族の方も最後尾へお願いしま――」


「私は伯爵だぞ!?」


「知らんがな!」


 怒号が飛び交っている。

 地獄だった。

 俺は店の二階窓からその光景を見下ろし、呆然と呟く。


「……なんでこうなった」


 すると。

 リリアが隣で淡々と言った。


「人気店だからでは?」


「人気店の範囲超えてるんだよなぁ」


 完全にイベント会場である。

 しかも。


「黒薬セットの整理券は!?」


「プリンは何個までだ!?」


「転売は禁止ですーー!!」


「転売まで出てるの!?」


 王都怖い。

 すると。

 マリアが疲れ切った顔で報告に来た。


「店主様」


「はい……」


「現在、“整理券を巡る貴族間トラブル”が三件発生しています」


「カフェだよねここ!?」


「はい」


「なんで!?」


 すると。

 マリアは静かに目を逸らした。


「皆さん、かなり本気ですので……」


 嫌すぎる。

 その時。

 下から怒鳴り声が聞こえた。


「私は朝四時から並んでいるんだぞ!」


「こちらは夜明け前です!」


「貴族が徹夜で並ぶな!!」


 騎士団が必死に止めていた。

 しかも。

 列の前方には、めちゃくちゃ高級そうな服の老人までいる。


「あれ誰?」


 俺が聞くと。

 アリシアがちらりと見て、固まった。


「……大公閣下ですね」


「偉い人!?」


「かなり」


「なんで並んでるの!?」


 すると。

 アリシアは真顔で言った。


「プリン目当てかと」


「そこまで!?」


 王都の貴族、甘味に弱すぎる。

 その時。

 レオンが店内へ飛び込んできた。


「店主殿!」


「今度は何!?」


「“喫茶ミナト整理券”が高値で取引されています!」


「株券かな?」


 もう意味が分からない。

 すると。

 レオンは頭を抱えた。


「まずい……!」


「何が?」


「想定以上にブランド化が早い!」


「そこ感動するポイントなんだ」


 商人、やっぱり商人だった。

 その時。

 窓の外から歓声が上がる。


「店主だ!」


「黒の賢者様ー!」


「プリンをー!」


「最後の圧が強い」


 すると。

 リリアが、ぽつりと言った。


「……動物園みたいですね」


「やめて」


 否定できないから。

 その時だった。

 店の入口が、勢いよく開いた。


「失礼する!」


「うわっ」


 入ってきたのは、豪華な服を着た中年男性だった。

 息を切らしている。


「店主殿はどこだ!?」


「俺ですけど」


「頼む!」


 男は真剣な顔で言った。


「“特別席”を用意してくれ!」


「また来たよ……」


 すると男は、さらに声を潜める。


「実は今日、重要な会議がありましてな」


「はい」


「喫茶ミナトの席を確保した派閥が、有利になるのです」


「なんで!?」


 すると。

 男は当たり前のように言った。


「会議後に“あのプリン”を食べられるかどうかは、士気に関わる」


「プリンで政治するな」


 だが。

 男は本気だった。


「既に、“喫茶ミナト派”に移ろうとしている貴族も――」


「派閥できてる!?」


 王都、思った以上に終わっていた。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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