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異世界でカフェを開いただけなのに、なぜか英雄扱いされています  作者: 断捨離
第2章 王都進出編

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第27話 開店前なのに整理券配布が始まった


「テーマパークじゃないんだぞ!?」


 俺の叫びも虚しく。

 王都店予定地の前には、長蛇の列ができていた。

 しかも。


「最後尾はこちらでーす!」


「走らないでくださーい!」


「整理券お持ちの方は右列へー!」


「なんで運営が完成してるの!?」


 列整理まで始まっていた。

 怖い。

 すると。

 マリアが淡々と言う。


「混乱防止のため、王城側で人員を配置しました」


「国家イベント扱い!?」


「既に近隣で交通問題が発生していますので」


「コーヒー屋だよね?」


 確認したくなった。

 すると。

 レオンが建物の前で感動していた。


「……素晴らしい」


「何が?」


「宣伝費ゼロで、この集客力」


「そこ感動するポイントなんだ」


 だが。

 本当にすごかった。

 王都店は、まだ看板すら正式についていない。

 なのに。

 人、人、人。

 完全に人気店の開店日である。

 すると。

 リリアがぽつりと言った。


「店主」


「ん?」


「……帰ります?」


「帰れる空気じゃないんだよなぁ」


 もう遅い。

 完全に囲まれている。

 その時。

 前方で悲鳴が上がった。


「押さないでください!」


「プリンは逃げません!」


「黒薬は十分な量を――たぶん――」


「“たぶん”って言った!?」


 列がざわつく。

 マリアが頭を抱えた。


「王都騎士団を追加で呼びます」


「ライブ会場かな?」


 すると。

 騎士団長が腕を組みながら頷く。


「良い判断だ」


「慣れてるなこの人」


「店主殿の店ではよくあることだからな」


「この規模は初めてだよ!」


 その時。

 人混みの奥から、疲れ切った顔の男が飛び出してきた。


「ど、どこですか!?」


「え?」


「“喫茶ミナト”は!?」


 目の下の隈がすごい。

 服装は高級そうなのに、完全に社畜の顔だった。

 すると。

 マリアが小さく呟く。


「財務局の方ですね……」


「異世界にも財務局あるんだ」


 男は、ふらふらとこちらへ来る。


「お願いです……」


「はい?」


「黒薬を……」


「完全に薬物中毒者の会話なんよ」


 だが。

 男は真剣だった。


「王都に来ると聞いてから、一週間頑張れたんです……!」


「そんな推しのライブみたいな」


「会議が……会議が終わらなくて……」


「つらそう」


 妙にリアルで同情してしまう。

 すると。

 リリアが小声で言った。


「店主、また優しい顔しています」


「同類を感じるんだよ……」


 結局。

 俺は、まだ開店準備中の店内へ入ることになった。


「えーと……」


 木のテーブル。

 広めの店内。

 王都仕様でかなり大きい。

 だが。


「なんか落ち着かないな」


「人が外で見ていますからね」


 リリアの言う通りだった。

 窓の向こうに、めちゃくちゃ人影がある。

 水族館の人気動物みたいな気分だ。

 すると。

 アリシアが苦笑する。


「店主、完全に王都の有名人ですよ」


「嫌すぎる」


 その時。

 外から歓声が上がった。


「煙だ!」


「黒薬の準備が始まったぞ!」


「おおおお!!」


「ラーメン屋じゃないんだから」


 ただコーヒー淹れるだけなんだけど。

 すると。

 マリアが真顔で言った。


「ちなみに、本日の予約数ですが」


「聞きたくないなぁ」


「現時点で七百二十件です」


「は?」


 沈黙。


「……何件?」


「七百二十件です」


「コンサートかな?」


 すると。

 レオンが静かに拳を握る。


「勝った」


「だから何に!?」


 その時。

 外の列から、大声が聞こえた。


「徹夜組はこちらでー!」


「徹夜組いるの!?」


 王都、思ったよりだいぶおかしかった。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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