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異世界でカフェを開いただけなのに、なぜか英雄扱いされています  作者: 断捨離
第2章 王都進出編

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第23話 初めての弟子(?)


「……いや、俺そんな大したこと教えられるほどじゃ」


 休憩所のおじさん――ガルドは、慌てて首を振った。


「それでもです!」


「そんな頭下げなくても」


「旅人が落ち着ける場所って、大事なんですよ」


 ガルドは真面目な顔だった。


「ここ、色んな人が来るんです」


「商人、冒険者、騎士、時には家族連れも」


「……」


「でも皆、疲れている」


 長旅。

 荷運び。

 護衛依頼。

 街道は安全ではない。

 だから休憩所は、ただ飯を食うだけの場所じゃない。

 “気を抜ける場所”でもある。


「そこに、“こーひー”があれば」


 ガルドは少し笑った。


「もっと皆、休める気がするんです」


 その言葉に。

 俺は少しだけ考えた。

 ……なんか。

 最初の頃の自分みたいだ。

 この世界へ来て。

 何もできなくて。

 せめて、落ち着ける店を作ろうと思った。

 だから。


「……まあ、簡単な淹れ方くらいなら」


 そう言うと。

 ガルドの顔がぱあっと明るくなる。


「本当ですか!?」


「ただし、“秘薬”とか言い出したら教えないからな」


「ひやく?」


「気にしないでください」


 横でリリアが真顔で頷いていた。


「そこ、大事です」


「お前はまず黒薬呼びをやめよう?」


________________________________________

 

数十分後。

 休憩所の厨房。

 俺は簡易的な道具を並べていた。


「まず豆を挽く」


「ほうほう……」


「で、熱湯を一気に入れない」


「なるほど……!」


 ガルドは完全に職人モードだった。

 真剣である。

 すると。

 周囲に野次馬が集まってきた。


「おお……」


「黒の賢者が技を伝授している……」


「弟子入りか……!」


「違うって!」


 なんで毎回そうなる。

 しかも。

 騎士団長まで腕を組みながら頷いている。


「ついに技術継承が始まったな」


「ラーメン屋の暖簾分けみたいに言うな」


 だが。

 レオンだけは妙に真剣だった。


「……これは大きい」


「何が?」


「“喫茶ミナト式”が広がります」


「式?」


「休める場所の作り方です」


「そんな大層な……」


 しかし。

 レオンは本気だった。


「旅人が休む」


「商人が情報交換する」


「人が集まる」


「……」


「それだけで街道の空気は変わります」


 商人、スケールが大きい。

 すると。

 ガルドが、おそるおそるコーヒーを淹れ終えた。

 黒い液体。

 少し香ばしい匂い。


「……ど、どうでしょう」


「飲んでみ」


「は、はい」


 ガルドは緊張しながら口をつける。

 一口。

 そして。


「……おお」


 顔が緩んだ。


「これだ……」


「初めてにしては悪くない」


「本当ですか!?」


 嬉しそうだった。

 すると。

 周囲の旅人たちがざわつく。


「飲みたい!」


「俺にも!」


「黒薬だ!」


「だからその呼び方!」


 しかし。

 ガルドは少し迷ったあと、俺を見る。


「……出してみても?」


「まあ、せっかくだし」


 すると。

 休憩所は、あっという間に混雑した。


「苦ぇ!」


「でも落ち着くな……」


「旅の疲れが抜ける……」


「染みる……!」


 完全に、いつもの光景だった。

 俺は苦笑する。

 すると。

 リリアが、少し嬉しそうに言った。


「増えましたね」


「何が?」


「“休める場所”」


「……」


 その言葉に。

 俺は店内を見回した。

 笑っている旅人。

 談笑する商人。

 ほっと息を吐く騎士。

 ……確かに。

 少しだけ空気が変わっていた。

 すると。

 ガルドが深々と頭を下げる。


「ありがとうございます、店主さん」


「いや、そんな大したことじゃ」


「いいえ」


 ガルドは静かに笑った。


「なんだか、この休憩所も“良い場所”になれそうです」


 その言葉を聞いて。

 俺は少しだけ、照れくさくなった。


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