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異世界でカフェを開いただけなのに、なぜか英雄扱いされています  作者: 断捨離
第1章 街外れのカフェ編

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第18話 王都からの依頼


 宮廷魔導師たちが帰った翌日。


『喫茶ミナト』は、さらに混んでいた。


「なんで!?」


 俺は朝から叫んでいた。


 昨日より明らかに客が多い。


 というか。


 店の外に、見たことない馬車が何台も停まっている。


「王都ナンバーですね」


「車じゃないんだから」


 リリアが普通に言うので、ついツッコんでしまった。


 どうやら王都から来た客らしい。


「噂を聞きつけた貴族でしょうか」


 アリシアが窓の外を見ながら言う。


 すると。


「その通りです」


 聞き慣れない声がした。


 振り向く。


 そこにいたのは、一人の女性だった。


 濃紺のスーツっぽい服装。


 眼鏡。


 長い黒髪。


 秘書感がすごい。


「……どちら様?」


「王城文官局所属、セシルと申します」


 王城。


 また王城。


 最近その単語を聞くだけで胃が痛い。


 するとセシルは、丁寧に頭を下げた。


「本日は、“正式依頼”で参りました」


「嫌な予感しかしない」


 店内がざわつく。


「王城直属……」


「本当に国家案件になってる……」


「賢者様すげぇ……」


「だから違うって!」


 だが。


 セシルは真面目だった。


「現在、王都では“喫茶ミナト”の噂が急速に広まっています」


「らしいですね……」


「特に、“黒薬による精神安定効果”について」


「コーヒーなんだよなぁ」


「そして、“黄金の甘味”による幸福感について」


「プリンです」


 ちゃんと訂正した。


 偉い。


 するとセシルはメモを書き込む。


『黄金の甘味=プリン』


「記録しないで?」


 なんか公式用語みたいになる。


 だが。


 セシルは少し困った顔をした。


「実際、王都の上層部ではかなり重要視されています」


「そんなに?」


「はい」


 彼女は真面目に頷く。


「最近、王都の貴族社会はかなり疲弊しておりまして」


「あー……」


「派閥争い」


「長時間会議」


「慢性的ストレス」


「現代社会かな?」


 異世界も大変である。


 すると。


 セシルは少しだけ表情を緩めた。


「そんな中、“喫茶ミナトへ行った者は穏やかになる”という報告が増えているのです」


「報告って」


「正式に上がっています」


「正式なんだ……」


 もう逃げられない気がしてきた。


 その時。


 騎士団長が深く頷いた。


「実際その通りだ」


「お前も乗るな」


「店主殿のコーヒーは素晴らしい」


「ただのカフェインです」


 しかし。


 セシルは真顔で続ける。


「そこで王城としては――」


 嫌な間。


「王都への正式出店をお願いしたく」


「やっぱり来た」


 店内が盛り上がる。


「おおお!」


「ついに王都店!」


「賢者様が中央へ!」


「だからなんでそうなる!」


 だが。


 セシルは机へ一枚の書類を置いた。


「王城支援付きです」


「支援?」


「土地提供」


「税制優遇」


「護衛手配」


「めちゃくちゃ本気だ」


 国家プロジェクトみたいになってる。


 するとレオンが小さく震えていた。


「勝った……」


「何に?」


「人生に」


 商人の夢らしい。


 その時。


 アリシアがふと聞く。


「ですが、なぜそこまで?」


「簡単です」


 セシルは即答した。


「王都に、“休める場所”が必要だからです」


 その言葉に。


 少しだけ、店内が静かになる。


「王都は、人が多い分だけ疲れています」


「……」


「立場が高いほど、気を抜けない」


「……」


「だからこそ、“喫茶ミナト”のような場所が必要なのです」


 俺は少し考える。


 前世でも、そうだった。


 仕事帰りにカフェへ寄る人。


 疲れて喫茶店へ逃げ込む人。


 ただ静かに過ごしたい人。


 そういう場所は、確かに必要だった。


 すると。


 リリアがぽつりと言った。


「店主って、“休む場所”を作るの上手いですよね」


「そんな意識ないんだけどなぁ」


「でも皆、ここで顔が柔らかくなります」


 その言葉に。


 俺は店内を見回した。


 笑っている客。


 穏やかに話す騎士。


 プリン食べて幸せそうな冒険者。


 ……まあ。


 悪くない景色だ。


 すると。


 セシルが最後にこう言った。


「もちろん、王城としても最大限歓迎いたします」


「……ちなみに断ったら?」


「泣きます」


「個人の感情だった!?」

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