第13話 レオン奪還作戦 始動
物語の舞台は、錆びついたネオンが不規則に明滅するBAR「レッサー」。
そこで交わされるのは、世界の運命を賭けたあまりに無謀で、あまりに個人的な「奪還」の約束だ。
元グリーンモンスターのリング、若きカイ、そして豪快なエンジニア・アパッチ。
寄せ集めの三人が乗り込むのは、旅芸人の船にしか見えない奇妙な怪物――超重力エンジン搭載艦「オクトパス」。
目的地は、熱雲に包まれた故郷・金星。
狙うは連合の眼、そして失われた英雄の奪還。
「墨吐き」くらいしか能のないタコ船で、彼らは銀河の荒波を突破できるのか!?
カイとメモリア、そしてレオン……運命の糸が複雑に絡み合うなか、反撃の狼煙が今、上がる!
錆びついたネオンが不規則に明滅する「隠れ街」。その片隅に佇む「BARレッサー」の奥、円卓を囲む三人の影があった。
「いいか、一度しか言わねえ。耳の穴かっぽじってよく聞け!」
アパッチが、背後のホワイトボードをバンバンと叩く。そこには殴り書きされた三つの項目が踊っていた。
① 装甲艦マキシマム
② 秘密基地コキュートス
③ 依頼主の正体
「何度も言うがな、リング。お前が言ってる任務は、ハッキリ言って自殺志願者の領分だ。正気の沙汰じゃねえ、覚えとけ!」
「……無理を承知で、お願いしたい」
リングの声は低く、だが鋼のような意志を孕んでいた。アパッチはそんな彼をじろりと睨みつけ、やがて――豪快に笑い飛ばした。
「カカッ! だが、お前が俺を信じたんだ。そのおめでたい頭に免じて、俺も一肌脱いでやることにしたぜ。名付けて『レオン将軍奪還作戦』だ!」
アパッチがホワイトボードの『①』を指差す。
「まずこれだ。装甲艦マキシマム。旧時代のオンボロだが、俺が心底惚れ込んでる愛馬だ。今は金星の俺の秘密基地でオーバーホールの真っ最中だが、現役の戦艦にだって引けは取らねえ。まずはこいつを回収しに金星へ向かう」
「金星……アパッチさんの故郷ですね」
「ああ。だが今は関係ねえ! 問題は次だ。②連合の秘密基地『コキュートス』。文字通り地獄の底だ。地上探したら100年以上かっかちまう。そこでだ……連合の衛星をひとつ、"借りるパクすることにした」
カイが思わず身を乗り出した。
「衛星を奪うって……そんなの、いっぱいあるのでは?どれを狙う?」
「狙うのは観測機動衛星『セブン・スターズ』。無敵の空中要塞エンペラーを護る七つの星、そのうちの一つをハッキングしてジャックする。そうすれば、宇宙からコキュートスの居場所を一発で特定できるって寸法だ」
「……なるほど。で、そのハッキングは誰が?」
リングの問いに、アパッチは不敵な笑みを浮かべた。
「月に、趣味でハッキングをやってる筋金入りのオタクがいてな。金星でマキシマムを拾った後、月へ飛んでそいつは、元々俺の仲間でもある!」
アパッチはそこで一度言葉を切り、鋭い視線をリングに向けた。
「それよりよ、リング。こんな大それた作戦の『依頼主』は、結局どこのどいつなんだ?」
「……地球連合の、真矢博士だ」
(……真矢博士……?)
カイの胸に、ざらりとした予感が走る。
一方のアパッチは、その名を聞いた瞬間に派手に震え上がった。
「あの……あの変り者で天才の、マッド・サイエンティストか!? なんでまた、お前みたいな堅物に依頼を……」
「博士には恩がある。共和国を脱走する際、地球に手引きをしてくれたのが彼女だった。それ以来、用心棒として仕事を引き受けている」
「ハッハッハ! あの博士に気に入られるたぁ、大した者だ! 面白くなってきたぜ、このヤマは危険な予感がしやがる!」
アパッチがカウンターのモニターを起動させた。映し出されたのは、お祭のような、およそ戦いには不向きなフォルムの船――「オクトパス」だった。
「まずはこいつで金星へ飛ぶぞ!」
「……ええっと、アパッチさん。これで行けるの? 旅一座かテキ屋にしか見えないんだけど?」
不安げなカイの言葉に、アパッチが胸を叩く。
「安心しろ! 見た目はタコみたいな感じだが、中身は最新の超重力エンジンだ。パワーだけは保証するぜ。格納庫には人機を三機まで積めるし、ワープも可能。金星まで二日もありゃ十分だ!」
アパッチは、あえて脅すようにテンションを落とし笑った。
「その分、武装は皆無だ。
墨吐き位は出来るが…な?
もし道中で宇宙怪獣にでも出くわしたら、
お前らが外に出て迎撃しろ、いいな!」
「……恩に着る、アパッチさん」
「気にするな、グリーンモンスターのリング。堂々としてろ。さあ野郎ども、まずは金星へ! 出航だッ!!」
こうして、失われた英雄を奪還するための、長く険しい旅が幕を開けた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
新章突入します。よろしくお願いします。
今回のエピソードでは、物語の根幹となる「レオン奪還作戦」の全貌がようやく姿を現しました。金星に眠る旧時代の戦艦マキシマム、そして連合の無敵要塞エンペラーを支える「セブン・スターズ」のハッキング。風呂敷を広げるたびに、彼らの前途多難さが浮き彫りになっていきます。
個人的にお気に入りなのは、アパッチが誇る「ホワイトスワロー」のギャップです。見た目はゆるい観光船なのに、中身は超重力エンジンという設定には、どこか「不器用な男のこだわり」を詰め込んでみました。




