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BATTLE SLUG -最強決戦兵器メモリア  作者: 昼間 ネル
第一章 地球の鼓動 編

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第11話 砂塵のハイウェイ・スター

「――砂塵に消えたはずの鼓動が、今、鋼鉄の咆哮となって蘇る」

かつて青かった空は、今はただ、乾いた砂のヴェールに覆われている。

旧地球の記憶を失った少年、カイ。

重すぎる宿命を背負い、砂漠を駆ける女性兵士、リング。

そして、荒野の掟を体現する豪快な元上官、アパッチ。

絶望が支配する地下都市で、彼らが出会うのは「再生」か、それとも「終焉」か。

奪取された最新鋭機『バルジーナ』と、伝説の監獄『コキュートス』。

幾重にも絡み合う陰謀の糸を、一皿のピリ辛スパゲッティが解き明かす――(かもしれない)。

これは、失われた絆を取り戻すために戦う、魂の軌跡。

今、最速のバイクが巻き上げる砂嵐と共に、物語の幕が上がる。

荒れ狂う砂塵の向こうから、その『黄色い疾風』は現れた。


逃げ惑う二人の背後、迫りくる賊の群れを蹂躙し、派手なエンジンを響かせて男がバイクを止める。

「よぉ、リング! 無事かよ」

「……アパッチ。貴方には一生勝てそうにないわね」

 

リングが呆れたように息を吐くと、男―アパッチは豪快に笑い飛ばした。


「ハッハハ! そうか? ったく、こんな掃き溜めで何してやがる。見たところ、甘いデートって雰囲気じゃなさそうだが?」


「この子は……記憶喪失で……。」

 

リングの隣で息を切らす少年に、アパッチの視線が突き刺さる。彼の片目は、精密な機械仕掛けのレンズ。それがギュルリと音を立てて焦点を絞り、

少年カイ・タチバナの存在を射抜いた。


「俺は、カイ……カイ・タチバナです!」

「……ほう。ま、立ち話もなんだ。砂嵐が来る前に、俺の城へ招待してやるよ」

 

彼らが向かったのは、サハラ砂漠の片隅。

 

そこには、アパッチが岩盤を掘り抜いて作り上げた地下都市が隠されていた。地上からは精巧なホログラムを使い蜃気楼に見せて隠している。文字通りの隠れ里だ。長い階段を下りた先に広がるのは、砂壁の家々が並び、多くの人々が活発に行き交う異様な光景だった。


「街だ……。地下にこれほどの空間があるなんて」

 驚きを隠せないカイに、リングが少し誇らしげに微笑む。


「ここはアパッチさんが、ここの岩盤の強度を見抜いて独力で築き上げた街なのよ」


「おいおい、急に持ち上げんじゃねえ。あとが怖くてかなわねえぜ!」


 アパッチは照れ隠しに笑いながら、古びた看板が掲げられた店――『BARレッサー』の前で足を止めた。


「ここなら安全だ。腹も減ってるだろ? まずはメシだ、話はそれからにしようぜ」


 バタフライ扉を押し開けると、使い込まれた木目調の床と、鼻をくすぐる安ウイスキーの香りが迎えてくれた。


 三人はカウンター近くの丸テーブルに腰を下ろす。


「アパッチさん、今日もお疲れ様です。ご注文は?」


 寄ってきた店員に、アパッチは迷わず応えた。


「俺はウイスキーをロックで!お前等は適当に頼んめ、俺がいる時はタダだ、遠慮すんなよ!」


 差し出されたメニューを眺めていたカイとリングが、不意に同じ場所を指差した。


「「これ!」」

 

それは、『海賊スパゲッティ』。

「……なんか、これ。直感ですけど、自分の記憶のどこかにあるような気がして」


 不思議そうに呟くカイに、リングが優しく解説する。


「これは元々、旧地球の名物料理なの。骨付き肉とハンバーグが乗った、ピリ辛トマトソースのスタミナ料理。美味しいわよ?」


 やがて運ばれてきた山盛りのスパゲッティ。アパッチは一足先に届いたウイスキーを煽り、「うっぱー!これこれ、五臓六腑に染みるぜぇ……」と、サイボーグ化されていない方の頬を赤く染めた。


 リングがスパゲッティを平らげ、一息ついたところで、空気の色が変わる。


「……それで、アパッチさん。本題なんだけど」

「おう、聞こうか」

「私は今、ある人物から極秘の任務を受けているの」


 リングの口から語られたのは、地球連合が誇る絶対不可侵の監獄『コキュートス』。そこに囚われたレオン将軍の奪還作戦。


 アパッチはウイスキーのグラスを止めた。


「……は?バカな?いくら何でも、無理だ、寝言は寝て言え」


「だから、アパッチさんにお願いがあるの。貴方の装甲艦『マキシマム』の力を貸してもらえないかしら?」


「そういう問題じゃねえ!あの監獄をどうやって見つけ出す?それに今の連合の機体強化が進んでる。並の人機じゃ、赤ん坊扱いされるのがオチだぞ!」


「だから――連合から最新鋭機『バルジーナ』を奪取したわ。そしたら……」

 

その時だった。

 

街全体を震わせるような、鼓膜を劈く警報音が鳴り響いた。


『――プゥゥーーーー!!』

「店員ッ、モニターを出せ!」

 

カウンターから重厚な駆動音とともに、大型モニターがせり出してくる。そこに映し出された影を見て、アパッチが舌打ちをした。


「噂をすれば、連合の影じゃねえか!もうすぐ日が暮れるぞ!おいリング、この小僧を借りていくぞ。お前は俺のバイクで自分の機体を持ってこい。あのバイクは普通の2倍は速い、急げ!」


「分かった!バルジーナを取ってくるから!カイ、頑張って。アパッチさんは私の元上官……世界で一番頼れる人だから!」


「……ああ、肌感でわかる。それじゃ!」

 

砂塵舞う地下都市に、戦いの幕が上がる。二人の運命は、加速する戦火の中に投げ出された――。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

今回のエピソードは、個人的にも大好きな「荒野の酒場での再会」と「美味しそうな飯テロ」を詰め込んでみました。殺伐とした世界観だからこそ、湯気が立つ『海賊スパゲッティ』の存在感が際立ちますよね。

特にアパッチというキャラクターは、書いているうちにどんどん勝手に動き出してくれました。ああいう「ガサツに見えて実は誰よりも仲間想いな親父さん」というのは、書いていて本当に楽しいです。

さて、物語はいよいよ急展開。

連合の追手が迫る中、カイとアパッチがどう共闘するのか。

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