第六十三話 中級ガチャ実装
「ガチャレーンが増えてるぞ!?」
「ミスリル装備か!」
「やっぱり中級ガチャか! そろそろだと思ってたんだよ!」
「癒しの杖もあるわ! 店でもなかなか売ってないのに!」
「でも十連が金貨一枚って……」
「そうなんだよなぁ。てっきり今までと同じ銀貨十枚と思ってたのに」
「俺たちが手を出せるガチャではないな」
「まだ私たち初級者にはこのガチャは早いってことかもね」
「でもこれなら店で買ったほうが安いんじゃない?」
「ん? おい? ミスリルは銀箱らしいぞ?」
「え? 銀? どういうこと? じゃあ虹箱は? 金箱は?」
ガチャ横の掲示板には新ガチャについての説明が貼られている。
今回は銀箱の商品を大きく取り上げている。
元々は虹箱に入れる予定の商品だったからな。
だがその予定が少し変わってしまっただけだ。
あまり目立つのも良くはないしな。
「……雷嵐の剣だと?」
「氷雪の弓もある……」
「マグマの杖って……」
「……聖女の杖?」
ミスリル級の装備を虹箱に入れるとして、それ以外の商品をどうするか悩んでいた。
鋼を金箱に入れるとなると商品がかぶってしまうからな。
それならいっそ全部新しい商品でいくことにした。
だからマドラーナに頼んで上級ボスからも買取してきてもらったんだ。
上級ボスだけあっていい装備をたくさん持っていた。
さすがにパンダには負けるけどな。
「嘘だろ?」
「全部一点物みたい」
「本物なんだよな?」
「確率は?」
「……おい……これ、金箱らしいぞ」
「えっ!?」
「金箱で確率一%か……」
「銀箱は十%みたい……」
「闇ガチャだな……」
「でも銀箱の商品はどれも金貨一枚以上の価値があるわよ?」
「確かにそうだな」
「そうだよ! 神ガチャだよ!」
そうだ、神ガチャに決まってる。
銀箱だから交換所での交換も利用できるしな。
癒しの杖なんかも交換可能だぞ?
回復魔法が使えない魔道士が泣いて喜ぶだろうな。
残念なのは防具はあまり目玉になるものがなかったこと。
そのせいでガチャレーンは一つだけの追加になってしまった。
防具商品は全て銀箱の商品だ。
「ちょっと待てよ。なら虹箱の商品は?」
「……書いてないね」
「確率だけは書いてるみたい……」
「え…………なにこれ」
「こんなの当たるわけないじゃん」
「それほどの商品ってことか……」
「金箱の商品がこれだととんでもないものが入ってるんだろうな」
虹箱の確率を見ると闇と思われても仕方ない。
簡単に当てられるわけにはいかないからな。
なにしろ『聖剣』が入ってるんだから。
神様に誓ってイカサマはしてないからな。
ただ確率がとんでもなく低いってだけだ。
ガチャを一万連してようやく当たるくらいのな。
「どちらにしてもまだ俺たちにはこのガチャは無理だな」
「あぁ。金を貯めて回してみたいがこわすぎる……」
「そうよね。全部銅箱だったらと考えると震えがとまらないわ」
「でももし金箱当てたら一気に上級者になれるんじゃないか?」
「そうだけど……破産の未来しか見えない……」
このガチャのターゲットは中級者~上級者。
これは初級者が手を出しちゃダメなガチャだ。
仮に初級者が強い武器を手に入れても持て余すだけだろう。
……ってみんなが言ってた。
俺には戦いのことはわからないからな。
だが金貨一枚が高いということはわかる。
このガチャは高級ガチャといっても過言ではない。
「あっ! あの人たち中級者じゃない?」
「それっぽいな。酒場での広告を見て来たんだろう」
「俺たちはいつものガチャに戻るか」
「そうだな。格闘場にも変更があったみたいだから確認しておこう」
初級者たちはいつもと同じ行動に戻ったようだ。
「これが噂のガチャか!」
「俺正直この店に来てみたかったんだ!」
「お前もか!? 実は俺もなんだ」
「そうだよな! なんだかあいつらいつも楽しそうにしてたからな!」
「あぁ! 寿司ってやつも食べてみたかったしな!」
「そうなんだよ! さすがに俺たちがここに来るのはな……」
「威張ってると思われたくなかったしなぁ~」
「格闘場ってやつも面白そうだなとは思ってたんだ」
「だよなぁ! でも初級者の邪魔をするのは悪いと思ってたしなぁ」
いくつかのパーティが集まって話をしている。
中級者以上が来る理由がなかったとは言え、遠慮してくれてたのか。
後輩想いのいい冒険者たちじゃないか。
寿司ならいつでも食べに来てくれていいんだけどな。
地下二階のモンスターですら飲食のためだけに利用してるくらいなんだぞ。
まぁあいつらは格闘場で騒ぎたいってのもあるようだが。
「それよりこのガチャだが……」
「あぁ……ヤバい商品ばかりだ。どこが中級ガチャなんだよ」
「どうやってこんな商品を手に入れてきたんだ?」
「……おそらく上級者のなかでも上位クラスだろうな」
「だよな……」
「それもこの装備を自分で使う必要はないくらいのな」
「……そんなパーティがいるのか?」
「パーティとは限らない」
「まさか個人で集めてると?」
「単純に冒険者から金で買い集めた物かもしれないがな」
「……それをこの価格で商品にしちゃうのか?」
「安いよな。どちらにしても経営者はヤバい人物だろう」
いや、ただの寿司屋の大将だけど……。
でもさすが中級者だ。
武器の強さよりもどうやって集めたかが気になるんだからな。
それにこの金貨一枚のガチャを安いと思ってくれてる。
「入り口のドラゴン見たか?」
「あぁ。強いな」
「まだあんなに小さいのにな」
「礼儀正しいのは魔物使いの力なんだろう」
「……クレアさんか」
「伝説の魔物使いがいるなんてそれだけでもここのヤバさがわかる」
クレアばあさんは本当に有名なんだな。
既にここにいることは知れ渡ってるのか。
「それよりあれ、殲滅のジャスミンだよな……」
「あっちには戦鬼のドーラがいるぜ……」
「噂ではスライム使いのミアもいるみたい……」
「パーティ解散したと思ったら凄いことを企んでたんだな……」
……ん?
この三人も有名なのか?
二つ名まで付けられてるって……。
心なしかジャスミンが恥ずかしそうにしている。




