第五十七話 タヌキみたいなパンダ
はぁ~、こんな時間に出かけるの面倒だな~。
戦闘で疲れてるんだからゆっくりしたいのにさ。
それに私は別にガチャになんて興味ないのに。
というかガチャってなによ。
「いらっしゃいませ!」
「……こんばんは」
ヤバい、みんな強そう。
こんなところに私が来て大丈夫なのかな……。
「初めてですよね? 各施設をご案内いたしましょうか?」
「いえ、結構です。少し歩いてみます」
「そうですか。なにかございましたらいつでもお声がけくださいね!」
「はい、ありがとうございます」
私なんかにそんな丁寧にしてくれなくてもいいのに。
強い人はやっぱり余裕があるんだろうな。
「あれ? あなたも来たの?」
「あっ、来てたんだ! 良かった知り合いがいて!」
まさかこんなところでお隣さんに会うとは。
でも知らない人ばかりで不安だったから少しホッとしたのも事実。
「あなたも爆死しちゃえばいいのよ! ふんっ!」
「へっ?」
なんで怒ってるの?
いつもはもっとフレンドリーだよね?
私、なにかした?
境界線は守ってると思うけど。
それに爆死しちゃえって……。
あっ、もう帰るんだ。
ってもう二十時か。
確か十八時からだっけここ。
だいぶ前からいたのかな。
それよりずいぶんお客さんが多いみたいね。
弱そうなのも結構いるけど。
あの画面はなに?
あれに映ってるのが噂の格闘場ってやつかな?
あれっ?
みんななに食べてるんだろう?
どこに飲食店があるの?
「いらっしゃいませ! お食事ですか?」
「……はい」
「ではこちらのテーブルにどうぞ」
わけもわからないままテーブルに案内される。
……親切に注文の仕方まで教えてくれた。
寿司ってなに?
みんなが食べてるのこれなの?
肉よりもその寿司ってやつばかり食べてない?
美味しいのかな……。
とりあえずおすすめの寿司盛り合わせを頼んでみるか。
お酒もあるんだ、じゃあビールで。
……よく見るとどれも安い。
町の店はどこも高いからあまり食べる気しないもんね。
ここにお金入れればいいんだよね?
……注文完了したみたい。
料理はどこで作ってるんだろう?
こうやって周りを見ると結構広いんだねここ。
最初に入ってきたところの近くにガチャがあったんだ。
ここからじゃ中は見えないみたいね。
あそこだけ人がいっぱい並んでるけど商品がいいのかな?
せっかく来たんだからあとで行ってみるか。
確か銀貨二十枚って言ってたよね。
それだけのお金を出すんだからいい商品じゃなきゃスルーだからね!
「お待たせしました! 寿司盛り合わせとビールになります!」
「あっ、ありがとうございます。早いんですね……」
「そりゃ大将はできる男ですから! ごゆっくりどうぞ~!」
威勢のいいお姉さんだな~。
さて、これは……魚だよね?
初めて食べる。
まずこの赤いのから。
…………美味しい。
魚も美味しいけどこのご飯が美味しい。
うん、他の魚も美味しい。
こんな美味しいものがこの値段で食べられるなんて。
次来たときはお肉も頼んでみよう。
ってまだ次も来るって決まったわけじゃないけどね。
「うぉぉぉ! やっちまえぇぇ!」
「敵はたった一人だぞ!」
この画面に映ってるのがあっちの格闘場の映像なのよね?
観客席もいっぱいみたい。
いつのまにこんな娯楽ができてたのかな。
ちょっと行ってみようか。
「ありがとうございましたー!」
「あっ、いえ、こちらこそ。美味しかったです」
みんな大勢で来てるみたいね。
私も誰か連れてきたほうが良かったのかな。
「あっ! こんばんは」
「あら、こんばんは。来てくれたんですね」
「はい。お誘いいただいてありがとうございます」
「いえいえ。楽しまれてますか?」
「はい! 寿司美味しかったです!」
「ふふっ。今日はお仲間は連れてこなかったんですか?」
「そうなんです……どんなところか想像がつかなかったものですから」
「ならここは見るだけになってしまいますね。良かったらこれどうぞ」
「なんですかこれ? ……単ガチャ券?」
「はい。その券でガチャを一回無料で回せます」
やったぁラッキー!
挨拶して良かった。
「ありがとうございます!」
「今度来るときはぜひ格闘場もご利用くださいね」
格闘場も行ってみたいけどこわそうだからやめとこう。
「冒険者の勝ちです!」
「なにやってんだよぉ!」
「モンスター鍛えて出直してこい!」
「さぁモンスターのみなさんは回復されてください」
回復されてください?
……!!
もしかしてエンジェルスライム!?
初めて見た……きれいだな……。
戦闘が終わったみんなの体力を回復してあげてるのね。
観客席のみんなも癒されてるじゃない。
回復されてるわけじゃないのにね。
でもいいなぁ~私もエンジェルスライム欲しいなぁ~。
私の仲間も可愛い子ばかりにしたいなぁ~。
そういやガチャの商品はなにがあるんだろ?
新しいのが出るからって誘われたけどなにかまでは聞いてないからね。
「うわ~虹なしかよぉ~」
「残念ね! 金貯めて出直してきな!」
「銀貨二十枚か~どうしよう」
「でもハズレ商品も結構良くない?」
やっぱり他のガチャに比べてここが一番盛り上がってるな。
てことは新しいガチャはここなんだよね?
商品はどこ見たらわかるの?
あっちの掲示板かな?
「……えっ!?」
わっ、思わず声が出ちゃった!
恥ずかしい……。
でも本当なのこれ?
目玉がドワーフラビット?
あの小さくて可愛くて強い?
そんなの欲しいに決まってるじゃん!
でも出る確率は低いみたいに書いてある。
銀貨二十枚じゃそんな簡単に手に入るわけないか。
他の商品はなに?
「……嘘でしょ!?」
あっ、また……。
ハリーネズミン、モモモモンガ、コウテイハムスター、ガナッシュリクガメ……。
可愛い子ばかりじゃない!
それに強さ的にもドワーフラビットより少し弱い程度だし。
あとはヒールスライムも出るのか。
弱いけど回復できるのは貴重だからいっぱいいてもいいもんね。
銀貨二十枚出せばこのうち十体が仲間になるって少しお得すぎない?
そういえば装備品があれば買い取ってもらえるとか言ってたっけ?
どこだろう?
……あのドアのとこ?
お店みたい。
「いらっしゃいませ」
「あの、装備品を買い取ってもらえるのここでいいんですか?」
「はい、どうぞ。装備品を見せてもらえますか?」
こんなの買い取ってもらえるのかな?
中古ばかりだよ?
しかも私たちにとってはほぼ意味ない物ばかりなのに。
「……全部で銀貨四十枚でいかがでしょうか?」
「銀貨四十枚!?」
「はい。さすがにボロボロなのは値段がつけられませんので」
「いやいや! 高すぎません!?」
「そんなことはないです。この剣なんていい素材ですし」
いいの?
ただの使えない戦利品がこんな高い額で売れて……。
「じゃあそれでお願いします」
「ありがとうございます。……ではこちらをご確認ください」
確かに銀貨四十枚ある……。
これでさっきのガチャが二回引けるのか。
無料券と合わせたら二十一体も仲間が増える。
しかも可愛い子ばかり。
「またいい物が手に入ったらぜひ持ってきてくださいね」
「はい! 身ぐるみ剥いできます! 家にあるのも持ってきます!」
冒険者を殺すなってのはこのためだったのね!
殺さなければまたお金や装備品を持って向こうからやってきてくれるんだもん!
もしかしてドワーフラビットが目玉なのは冒険者のエサだから?
となると囮にしてそこを……。
ふふっ、プランが色々浮かんできちゃう。
まずは二十連よ!




