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闇ガチャ、異世界を席巻する  作者: 白井木蓮


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第五十六話 天使のスライム

「冒険者やモンスターたちはここへ来たときには既に疲れきってるんじゃないの?」


 普通の質問のようだ。

 ずっと静かだったアイリのことを心配していたが大丈夫みたいだな。


「それは俺も気になってた。どうなんだ?」

「もちろん疲れてると思います」

「そんな状態で戦えるのかなぁって思ってね」

「でもみんなガチャ券のために戦いたいからいいんじゃねぇか?」

「勝ったうえにガチャでいい物を引き当てたら最高の一日になりますしね」

「それに美味いメシと酒で締めれたら言うことなしじゃねぇか!」

「そこはモンスターたちも同じよ!」


 何戦もするわけじゃないしな。

 でも疲れていてはパフォーマンスが発揮できないのも事実か。

 特に冒険者側はモンスター側よりも多くの敵を相手にしないといけないからな。

 昨日モンスター側が優勢だったのもそれが関係してる可能性もある。


「アイリ、なにか考えがあるのか?」

「戦闘前と戦闘後に回復サービスとかどうかなって」

「回復サービス? ポーションやエーテルをあげるのか?」

「それはもったいないよ。モンスターに回復してもらうの」

「モンスターが? 魔法でってことか?」

「うん。魔力をあげたりもできるみたいだし」


 体力や魔力の回復には時間がかかる。

 宿屋に入ってすぐ全回復とはいかないようだ。


 モンスターのことだからレファに聞いたほうがいいだろう。


「ヒールスライムとかどうなんだ?」

「魔力がそこまで多くないから数がいっぱい必要になる」

「絞り取るみたいで可哀想だな。なら他にいいモンスターいないか?」

「エンジェルスライムがピッタリだと思う」

「エンジェル!?」


 天使なのか?

 なんだか凄そうだ……。


「姉様……本気?」

「うん。リリアンヌにあげてもいいよ」

「えっ!? ホント!? ……それなら仕方ないわね」


 リリアンヌが喜んでいる。

 そんなにレアなスライムなのか?

 リリアンヌには作れないのだろうか?

 でも一度とめかけたのはなんでだ?


「エンジェルスライムの生成は色々と問題になることが多いんです」


 マドラーナは俺が疑問に思ってることを感じ取ってくれたようだ。


「生成には多大な魔力を必要とします。しかも失敗する可能性もあります」

「レファでもか?」

「はい。一番の問題は非常に打たれ弱いんです」

「ダメージを受けたらすぐに死ぬってこと?」

「そうです。体力も防御力もスライム並みなんです」


 それは大変だな。

 苦労して生成したのに一瞬で死なれちゃ魔力の無駄遣いだ。

 それなら他のモンスターを生成しようと思うよな。


「回復のエキスパートだけに敵の手に渡ると厄介ですし」

「敵? ……魔物使いか」


 確かに回復のエキスパートがパーティにいたら楽だろうな。

 でもそんなにすぐ死ぬんじゃ仲間にしたところでパーティには入れられないだろう。


「でも今回はなにも心配がいりませんしね」

「あぁ。回復さえできれば問題ないからピッタリじゃないか」


 早くエンジェルを見てみたい。

 どんなスライムなんだろう?


「ねぇ、そのスライム仲間になってくれるの?」


 アイリの言葉にみんなの視線がクレアばあさんとミアに集中する。

 仲間になってくれないことには地下一階では使えないからな。


「どうだろうね。そういうレアは仲間になりにくいからな……」

「一度会ってみてからじゃないとわかりませんね……」


 二人とも自信なさげだ。

 まぁ仲間にできなくても格闘場内で回復してくれたら問題ない。


「レファ、とりあえず一体作れるか?」

「やってみる」


 レファは作業部屋に移動する。

 リリアンヌもいっしょに行くようだ。

 モンスター生成は企業秘密だから俺たちは見ることができない。

 ……というわけではなく、万が一襲われると危険だからな。

 それに集中してもらわないといいモンスターができないだろうし。

 なにしろ大切な商品だからな。


「他に仲間モンスターで回復魔法が使えるやつはいないのか?」

「いますけどさすがにエンジェルスライムと比べられると……」

「そんなに凄いのか。戦ったことあるのか?」

「いえ、私は噂でしか知りません。おばあちゃんはどう?」

「ワシも知らないねぇ。本当に存在するのかさえまだ半信半疑だよ」


 クレアばあさんでも知らないとなると相当レアなんだな。

 それからしばらく雑談が続いた。


「開店時間が迫ってきたな。あとは二人に任せて準備に入ろう」


 俺がそう言ったとき、ドアが開いて二人が戻ってきた。

 レファに抱えられている見慣れないスライムと共に。


「できたのか!?」

「その子がエンジェルスライム!?」

「美しいですね……」

「真っ白だぜ……」

「本当に存在してたのか……羽が生えておる」

「なんて可愛い子……敵とは思えません」


 スライムのフォルムに羽が生えており、全身が真っ白に光り輝いている。

 エンジェルスライムで間違いないよな?


「うん、成功した」

「姉様は天才よ!」

「レファ様大丈夫ですか? お疲れではございませんか?」

「うん、大丈夫。リリアンヌが途中で魔力くれたから」

「そこらの上級ボス作るより魔力持っていかれてたから少し心配になっただけよ!」


 ツンデレもここまでいくと可愛く思えてくる不思議。


「襲ってきたりしないのか?」

「この子は賢いから大丈夫」

「話せるのか?」

「話せると思うけどまだこわがってるみたい」

「そうか。無理に話さなくてもいいさ」


 臆病なんだな。

 でも普通のスライムと同じと考えたら仕方ない。

 ここにはエンジェルスライムからしたら強い敵がいっぱいいるからな。

 俺だって敵と思われてるはずだ。

 さすがにスライムには勝てると思うし。


「……え? そっち行ってみたいの?」


 レファがエンジェルスライムとなにか話している。

 話せることは間違いないようだ。


 するとエンジェルスライムはフワッと浮き上がった。

 羽をパタパタさせてその場に浮かんでいる。


 そしてゆっくりと近づいて来た。

 俺のところに。


「……俺は敵じゃないからな? 安心してくれ」


 いや、間違いなく俺は敵だ。

 攻撃してくるのか?


「うん。知ってるよ」

「喋った!?」


 俺だけじゃなくみんなも驚いている。

 可愛らしい声だ。


「なぁ、ここに来る客の体力や魔力を回復してもらってもいいか?」

「うん。私はそれくらいしかできないから」

「そうか、ありがとう。その代わりみんなが守ってくれるからな」

「うん。みんな優しそう」


 いつのまにかみんなが俺の周りに集まってきていた。


「可愛すぎるんですけど! ミルクとココアよりも可愛いかも……」

「触ってもいいですか? 飛んでばかりいると疲れますよ?」

「アタイは触るのやめとくよ……力加減間違えそうでこわい」

「アンタ、ワシの仲間にならないかい?」

「おばあちゃんズルい! 私だってこの子のお世話がしたいよ!」

「ちょっと! この子は私の下僕なんだからね!」


 この可愛さはヤバい。

 強さなんてどうでもよくなるくらいにな。

 もしゲームなら何千回戦うことになろうが仲間にしようとするはずだ。

 でもゲームとは違って倒したら終わり。

 超レアだから二度と会えないかもしれない。

 まぁレファなら量産可能かもしれないがな。


 そんなことより大人気だな。

 だが誰も触ってはいないのがしっかりしてるところだな。


「あっ、色変わってる……」


 レファがボソッと言ったのを俺は聞き逃さなかった。

 みんなは興奮して聞こえていないようだ。


 色が変わってるって……白のままだよな?


「あぁっ! 嘘でしょぉぉぉぉぉ~~!」


 突然リリアンヌが悲鳴に近い叫び声をあげた。

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