第四十八話 地下二階格闘場受付
「おい! 予想してたより広いぞ!」
「本当だな。で、格闘場とやらはどこにあるんだ?」
「ここはいつものガチャと買取屋っぽいね……ということはあっちか」
「いらっしゃいませ。格闘場は奥にあります」
「あっ、すみません、ありがとうございます!」
「モンスターたちが迷子にならないようしっかりお連れくださいね」
「はい! おい、お前ら行くぞ!」
ボスたちは配下モンスターを引き連れて格闘場へ向かう。
ボスによって連れている配下モンスターの数に違いがあるようだ。
「あっ! マドラーナ様だ!」
「あそこが受付で間違いないようだな!」
マドラーナは笑顔でボスたちを迎える。
配下モンスターたちは係員の指示に従って横で整列しているようだ。
「いらっしゃいませ。説明は必要ですか?」
「いえ! 事前に何度もお聞きしましたし、配下にも言って聞かせてあります!」
「ルールはしっかり守らないととんでもないことになりますからね?」
「は、は、はい! も、もちろんです!」
ルールを破ったボスは消滅させられることになる。
「では三体か十体、もしくは両方かをお選びください」
今日の時点での三体の参加料金は銀貨五枚、十体は銀貨十枚だ。
どちらに登録するかでもボスの戦略が問われるところである。
「じゃあ俺は三体で登録お願いします!」
「わかりました。では登録する三体はこちらへ」
ボスの配下モンスター三体は素早く移動する。
「う~ん、ではランクEで登録しましょう」
「はい! お願いします!」
「料金はマッチングしたときにお支払いください」
「はい! みんな負けるなよ!」
ボスも配下モンスターも気合が入っているようだ。
敵となる冒険者のランクが同ランク以下の場合、勝利報酬はスライムパックⅡガチャ券となる。
銀貨十枚相当だ。
さらに勝敗に関係なく参加賞としてスライムパックⅡの単ガチャ券がもらえる。
闇ガチャ屋での単ガチャ実装は初めてのことだ。
敵ランクが一つ上の場合、勝利報酬はスライムパックⅡガチャ券が二枚。
それより上のランクの場合は虹ガチャ券が一枚ずつ加算される。
こちらがEランクで敵がAランクだった場合はスライムパックⅡガチャ券二枚に虹ガチャ券が三枚となる。
全てのガチャ券は当日のみ使用可能だ。
ただし、敵が自分より上のランクの場合、負けた場合でも銀貨五枚が返却される。
仕様上、虹ガチャ券が手に入ることはほぼないと思う。
だがボスたちは冒険者側の仕様を知らない。
「私はこの子たち十体でお願いします!」
「わかりました。ふむ、ランクDですね」
十体登録の場合、報酬は三体登録と比べて二倍になる。
参加賞もスライムパックⅡ単ガチャ券二枚となる。
こちらも敵が自分より上のランクの場合のみ、負けても銀貨十枚が返却される。
「ドキドキします! もし負けたらかなり損しますもんね!」
「そうならないように普段から戦術をしっかり叩きこんでください」
「なかなか言うこと聞いてくれなくて……」
「弱い冒険者相手に経験を積ませることも大事ですよ」
マドラーナが弱気なボスに指導している。
勝っても負けても倒されたモンスターは戻ってこない。
ボスたちも必至だ。
「弱いやつらが指名してくれたラッキーなんだけど」
「それだと銀貨五枚分得することになるな」
「でも三体のうち二体倒されでもしたら赤字じゃねぇか?」
「まぁそこは新しいスライムたちで補うしかないさ」
三体に選ばれたモンスターはおそらくボスたちの中でも優秀な手駒だろう。
だが戦略としてわざとランクが低くなるように弱いモンスターを登録する方法も考えられる。
そうすれば仮に負けても損失は少なくなるし、相手も弱くなるから効率はいいかもしれない。
「噂で聞いたんだけどよ、日によって報酬は違うらしいぜ?」
「ん? 明日はゴブリンパックが報酬になるかもしれないってことか?」
「いや、今日より報酬が悪くなることはないらしい」
「なら今の報酬にゴブリンパックが追加されたりするってこと?」
「それも考えられるが」
「……もしかして新パックか?」
「おそらくな」
格闘場は一つしかない。
それに営業時間は三時間だけだからそんなに多くの試合はできない。
だから日によって報酬を変えることで選手のレベル調整をしようという考えだ。
「なるほど。虹ガチャ券が当日のみ使用可能なのはそういうこともあってか」
「だろうな。よく考えてあるぜ」
「さすがリリアンヌ様だな」
闇ガチャ屋を始めたときから変わらず総責任者はリリアンヌになっている。
「でも敵が選んでくれないことにはなんにもできないんだよなぁ」
「それは確かに煩わしいよな」
「だから選んでもらえるような構成を考えないと」
「メタスラーで釣ってみるか?」
「それはいいな! 逃げまわって勝つ可能性も上がるかもしれない!」
「でも倒された場合の損失は大きいぞ……」
「そこが難しいところなんだよな~」
「きっともっと頭を使えっていう俺たちへのメッセージなんだろうな」
「強くなれってことだよな! リリアンヌ様最高!」
モンスターたちも試行錯誤しているようだ。
「おい、あそこにリリアンヌ様がいるぞ」
「本当だ。周りにいるのは普通のスライムか?」
「いや、あれはかなり鍛えられてるな」
「あなたたち知らないの? あれは魔物使いのスライムよ」
「なんだって!? なぜそんなスライムがリリアンヌ様のところに?」
「さあね。でも試合の審判はその魔物使い本人らしいわよ」
事前にマドラーナが流した噂が拡がっているようだ。
リリアンヌはスライムたちとともに休憩スペースの一角を陣取っている。
「もしかして人質か?」
「審判に対しての脅しかもしれないな」
「なるほど。でもこれで敵に有利な判定はできなくなったってことか」
「あぁ。俺たちのことを考えてくれての行動だろう」
「くぅ~カッコよすぎるぜ! 早く冒険者をボコボコにしてやりたい!」
モンスターたちの士気は最高潮に達してるようだ。




